俺のお嬢様はおとめげーむ?の『悪役令嬢』らしいです

杏音-an-

文字の大きさ
23 / 41
第二章 学園生活始動

22 ヒロインとエンカウント ④

しおりを挟む


「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃないですか!」

 フローレス嬢は顔を赤く染めながら、恥ずかしそうに訴え掛けた。

「そ、そうよね。ごめんなさい。でも、まさかの展開ね」

「はい……つまり、ルウ様の事が好きでこの学園に入学した、という訳ですか?」

「はい。そうですが?」

 フローレス嬢は食い気味に即答した。

「でもルウ様って……攻略対象外のモブよね?ヒロインのお助けキャラ的な」

「モ、モブじゃありません!!ルウ様はれっきとしたサブキャラ……いいえ、もうメインキャラです!!あの、細くて綺麗な瞳!スラッとした鼻筋!あの甘い唇!!そして何よりあの周りを包み込む優しげな雰囲気!!私は前世の時からずっとルウ様一筋なんです!!!」

「細くて綺麗な瞳……むしろ線よ、ね……というか、あ、あまい?……あ、いいえ。そうよね、うん……」

 レイラ様はフローレス嬢の独特な早口と余りの勢いに圧倒されていた。いや、レイラ様もたまにこんな感じですけどね?

「それなのに……それなのに!ファンブックでもチョロっとしか出てこないし!公式グッズだって攻略キャラしか発売されないし!!あり得なくないですかああぁぁぁ!?」

「そ、そうデスヨネ。うん、ちょっと落ち着きましょう?折角の可愛い顔が台無しよ?」

 レイラ様がそう言って宥めると、フローレス嬢は深呼吸を繰り返しながら、少しずつ落ち着きを取り戻していった。

「す、すみません……またしても取り乱してしみって」

「だ、大丈夫よ。良かったわ、落ち着いたみたいで」

 レイラ様はそう答えたが、明らかにやつれた表情を浮かべている。あのレイラ様がこんな風になるだなんて、彼女はなかなかに強烈な人物のようだ。

「でも……星の夜祭あの時は運命だと思ったんです。まさか、ルウ様に助けて頂けるなんて。チャンスだと思ったんです、ルウ様と仲良くなれるチャンスだと。なのでこの2年頑張ってみたのですが、ルウ様意外と手強くてなかなか攻りゃk……進展しなくて。だから、この学園に一緒に入学しようと思ったんです。なので、皇太子ルートを攻略する気はサラサラ無いので、ご協力はできないです。ごめんなさい」

 まさか星の夜祭あの日が、殿下との運命の日イベントではなく、ルウ様との運命の日イベントになってしまうとは……殿下もお気の毒に……
 俺がそんな事を思っていると、レイラ様は首を横に振って口を開いた。

「いいのよ!気にしないで!こちらの勝手な都合だったんだもの。そういうことなら仕方ないわ。むしろこうやって同じ前世の記憶を持ってる人に出会えて、こうやって話もできて実は嬉しかったの。だから、その……これからは友達として仲良くしてくれたら嬉しいわ」

「グロブナー様……」

「あ、そのよそよそしい話し方もしなくていいわ。名前もレイラって呼んで」

「えっ……いいえ!そんな!私はただの平民ですし、公爵令嬢のグロブナー様を呼び捨てになんて!!」

「いいの、友達になりたいんだから。私がそうしてほしいの。それとも、やっぱり悪役令嬢と友達だなんて嫌かしら」

 レイラ様はそう言ってしゅんとした表情を浮かべながら、肩を落としてみせた。すると、フローレス嬢は慌てた様子で口を開いた。

「そ、そんな事ありません!!えっと……その、じゃあ、レ、レイラ」

 フローレス嬢がおずおずとした様子でそう言うとレイラはニコッと満面の笑みを浮かべた。

「ふふ、その調子よ。まさかヒロインと友達になれるなんて夢みたいだわ。よろしくね、アリス」

 レイラ様が満面の笑みでそう言うと、フローレス嬢は何故か「昇天」と言いながら後ろへと倒れた。

「ちょ、ちょっと!?」

「アリガトウゴザイマス。ゴチソウサマデス」

 フローレス嬢はよく分からない事を喋りながら自分の両手を胸の前で合わせている。

「……あ。すみません、また私ったら。実は前世ではヒロインよりもレイラ推しだったのです。顔がめちゃくちゃ好みだったんです。美人過ぎ、可愛過ぎ、エロ過ぎ。性格はまあ、確かに悪かったんだろうけど、きっとそれは殿下への深い愛故の歪みだったのです、きっと、はい」

「なんだか、私が言ったらいけない気もするけど、貴方なかなかのオタクぶりね。あと敬語に戻ってるわ」

「ハッ!!つい!癖で」

「ふふ、アハハハ。ふっ……なんだか、ゲームのヒロインと印象違い過ぎて可笑しいわね!」

「ヒィ、ごめんなさい。中身はただの枯れたアラサー……いや、今世の年齢も合わせるとけっこうなオバサンなので……ヒロインとはかけ離れているかも」

「うん、そうかも。あ、ていうか、前世では私JKだったからむしろ、私の方が敬語つかわないといけないかも」

「じぇっ!?……いーやいやいやいやいや!タメ口で!私もタメ口にするから!!」

「ふふ、分かったわ」

 レイラ様はそう言って笑い掛けると、フローレス嬢も少し照れ臭そうに笑顔を浮かべた。

 俺はそんな光景を見てふぅと安堵のため息を漏らした。
 どうやら彼女には、レイラ様に危害を加えるような企みはないようだな。ひとまず安心といったところか。それにレイラ様に学園での友達が出来たようで、俺も少し嬉しく感じた。

「さっ、とりあえず解決したことですし、もうこんな時間です。そろそろ帰りましょう」

 俺がパンッと手を叩いてそう言うと、レイラ様は「そうね」と答えた。

「あ、荷物!私の席は……あ、あっちだ!」

 フローレス嬢はそう言って自分の席へと走っていった。

「良かったですね。お友達ができたようで。とりあえず、ぼっち回避ですよ」

「ぼっ!?……まあ、そ、そうね?ゲームでのレイラは友達じゃなくて『悪役令嬢の取り巻き』しかいなかったし。実は少し不安だったわ」

「へぇ、そうだったのですね。まぁ、殿下との婚約破棄作戦は、また振り出しに戻りましたけど」

 俺がそう言うとレイラ様は、はぁぁぁぁと深いため息を漏らした。

「そう……そうなのよね。まぁ、仕方ないわ。また違う作戦を立てましょ」

「かしこまりました。お嬢様」

 俺がそう答えると荷物を持ったフローレス嬢がこちらへと小走りに向かってきた。

「あ!お待たせしました!帰りましょ~!」

「あ、コラ、また敬語」

「あ、ご、ごめん。なんだかまだ慣れないみたい」

「まぁ、徐々にね」

「うん!」

 フローレス嬢は嬉しそうな表情を浮かべて答えた。


 これからなんだか騒がしくなりそうだ。
 俺はそんな事を思いながら、前を進む2人の後ろについて歩いていった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~

sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。 ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。 そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...