俺のお嬢様はおとめげーむ?の『悪役令嬢』らしいです

杏音-an-

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第二章 学園生活始動

20 ヒロインとエンカウント ②

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『ヒロイン』
「あ!お隣さん、ですよね。これからよろしくお願いします」


『ノア・マーカス』
「…………」


『ヒロイン』
「えっと……私、アリス・フローレスって言います。同じクラスだし、もし良かったら仲良くして下さいね」


『ノア・マーカス』
「……あぁ」


『ヒロイン』
(なんだか、大人しい人だなぁ)




 ……確かレイラ様から聞いていた、『ひろいん』と俺の出会いってこんな感じだったかな?名前は恐らく初期設定?の名前で名乗ってくるだろうとレイラ様がおっしゃっていた、けれど……

 俺はチラっと隣に座っている『ひろいん』の方に視線を移した。すると、困惑した表情を浮かべていて、とてもじゃないが『おとめげーむ』のように自ら俺に話し掛けてきそうにはない。うーん、どうしたもんか。とりあえずこの式典が終わったら改めて話し掛けてみるか。

「学園長ありがとうございました。では皆さん、各自教室へと向かいます。まずは1組から~~」

 と、そろそろ入学式が終わるな。
 俺達のクラスは3組だから、教室に向かうまでに少し時間があるか。

「……あの」

「あ、は、はい!」

「私グロブナー公爵家の従者をしています、ノア・マーカスと申します。実は少し話がありまして、突然で申し訳ありませんが、この後少しだけお時間頂けませんか?」

「えっ……と、そのぉ……」

『ひろいん』は明らかに目を泳がせながら動揺をし始めた。まずい、なんだかまた逃げられそうだ。

「あ、決して貴方に危害を加える訳では……」

「っ……ご、ごめんなさい!!お、お花を摘みに行ってきますううううううう!!!」

『ひろいん』はそう叫びながら走り出した。

「あっ!ちょっと、貴方!そんなに急いで何処に行くのですか!?淑女たる者が大声で走ってはしたない……ちょっと、聞いてますか!?」

 そう言って近くにいた先生が『ひろいん』を諌めようとしたが、彼女はそんな制止を振り切って叫びながら猛ダッシュで会場を出ていった。

「あれ、アリス嬢……?」

 俺が呆気に取られていると、前の席に座っていたルウ様が呟いた。

「ルウ様」

「あ、ノア君じゃないか。建国記念のパーティー以来だね。入学おめでとう」

「ありがとうございます。ルウ様もご入学おめでとうございます。ところでルウ様……彼女の事、ご存知なのですか」

「あぁ、そうそう!建国記念のパーティーの時に紹介したい人がいるって話していただろう?それが彼女なんだ」

「っ!……そうだったのですね。失礼ですが、彼女とはどういったご関係で……?」

「ん?あぁ、実はね……」

 それからルウ様は『ひろいん』の事について話し始めた。

「……なるほど。そういう事でしたか。ありがとうございます、ルウ様」

「そんな、お礼を言われるような事はしていないよ。まあ、彼女も君と同じく魔力を持つ特待生だから、これから仲良くしてくれると僕も嬉しいよ」

 ルウ様にそう言われ、俺は少しだけ微笑んで「勿論です」と答えた。




 **************



「はぁ~~~~~ぁ」

 アリス・フローレスは廊下をトボトボと歩きながら大きなため息をついた。

(結局、先生に捕まってお説教&反省文書かされてたら、こんな時間になっちゃった。鞄も置いてっちゃったし。先生も教室の席に置いておくじゃなくて、持ってきてくれたらいいのに……)

 彼女はそんな事を考えながら、教室の扉に手を掛け、勢い良く扉を開いた。

「まあ、でもこの時間ならみんな帰ってるだろうし、あんしn」

「あら、おかえりなさい。アリス・フローレス様?」

「……え」

 扉を開けると、目の前にはニッコリと微笑んだレイラ・エミリ・グロブナー公爵令嬢が脚を組んで座っていた。咄嗟に彼女はまた逃げようと後ろを振り返った。

「どうされましたか?そんなに急いで」

 しかし振り返った先にはレイラ様の従者である俺が回り込み、ニッコリと微笑んでいた。

「えっ、えぇ……ノアがまだ初期段階なのに笑ってるぅ……」

 え、俺ってそんなに笑わないキャラだったんですか?

「私、貴方に話があるの。少しいいかしら?」

 レイラ様はそう言って、少しずつフローレス嬢に近寄った。フローレス嬢も観念したのか、そのままその場に留まっている。と思ったのもつかの間、突然彼女は頭をパッと床に付けて華麗な土下座をしてみせた。

「ゆ、許して下さいいいいいいいい!!」

「「……え?」」

 俺とレイラ様は思わず目を点にさせた。

「私!皇太子殿下様も、貴方の従者様にも興味はありません!!本当に!誓って!なんなら、命懸けれます!無害!そう!人畜無害!!」

 フローレス嬢は土下座したまま、早口で一気に言葉を発した。呆気に取られていた俺達だったが、ハッと我に返ったレイラ様が慌ててフローレス嬢に声を掛けた。

「ちょ、ちょっと待って!違うのよ!確かにこの状況だと勘違いするのも分かるけど違うの!とりあえず、顔を上げてちょうだい?」

「……へ?」

 レイラ様にそう言われて、恐る恐るフローレス嬢は顔を上げた。顔をあげると、その表情はもう半泣き状態となっていた。

「えっと、目を付けられて……いじめられるのでは……?」

「いじめない!いじめない!」

 レイラ様はそう言いながら右手を勢い良く左右に振った。

「……こんなに怯えるなんて『げーむのお嬢様』ってどんだけ彼女の事イビってたんですか」

「え、えっと……日々罵詈雑言を浴びせたり靴に画ビョウ詰めたり後ろから突き飛ばしたり人気の無いところに呼び出して泥水ぶっかけたりノアの魔法で色々うんたらかんたら……」

「うわぁ……」

「しないわよ!?私はしないわよ!?って、もぅ!そうじゃなくて、こほんっ……失礼、フローレス様。安心してちょうだい。順を追って説明していきますわ」


 そうしてレイラ様は自身も転生者であること、そしてこれまでの経緯について話し始めた。




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