この世界に2人ぼっち

えだ

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第9話 蒼視点

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 のぞむという親友がいる。
俺と梨花リカは望のことをノンと呼んでいた。

 ノンは俺の高校の同級生。当時から天才プログラマーと呼ばれていたくらい、世界が認める天才だった。



 ーーここ数年の間にいくつもの先進国が共同で開発したというMORPG”VRW”。ひと昔前の世界では考えられないであろう、人間を仮装空間へ実際に転送させてしまうゲームだ。科学研究所とゲーム開発会社が力を合わせて開発したVRWは世間を大変騒つかせたが、勿論一般家庭に普及されるような代物ではない。
 月へのハネムーンを実現させてしまえるようなセレブや、世界の長者番付に名前が乗るような有名社長なんかが『次は私がプレイをする』とテレビで公言するほど希少価値が高いものだった。
 転送装置は科学研究所にしかない為、手軽でもない。ただ人々は想像を超えた創造の世界に、月に行くことよりもロマンを抱いたのだ。

 しかしその身をそのまま転送させてしまえるということは、ゲームの中で命を落とす可能性も大いにあり得るということだった。日本でも今後VRWのようなゲームが普及される未来がいつか来るだろうと、保険適用にさせるべきではないかと国会で議論されるような事態になっていた。
 時代背景や環境設定などを好きに選べるVRWは、日常や世間を忘れて、人混みの喧騒がない世界を楽しむことができる。ちなみにVRWの基礎ルールとして命の危険がないよう、3時間で現実世界へ戻ってくることになっている。世の選ばれた億万長者たちは、その3時間の為に莫大な資金を払うのだ。



 ノンは、そのVRWへのハッキングを成功させた。
ノンの自宅に設置された簡易転送装置から、VRWの世界へと旅立てることになったのだ。

 ただーーー‥‥


「わー!見て見て!
宇宙人だって!いたら面白いね!
わー、荒廃した世界だって!!いいねー!!サバイバルっぽい!
食べ物はさー、腐らないようなのだけあればいいよね」

 全文英文のパネルを操作する梨花。阿呆な癖に英語だけは何故か得意なんだこいつは。

「ちょ、梨花?
あのね、危険でしかないからね?勝手に操作しないでね?」

 ノンがあわあわと尋常じゃないくらい焦っている。
天真爛漫すぎる彼女がいると大変だろうな。結果的に2人を引き合わせたのは俺なんだろうけど、この組み合わせはなかなかにアンバランスだと思う。天才プログラマー(兼、天才ハッカー)と能天気な阿呆。まぁお幸せにって感じ。

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