最も死に近い悪女になりました(完)

えだ

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35話

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 楽になりたいと駄々を捏ねて泣き喚き、今はやっと放心状態。ようやく冷静に考えられるようになった。

 それもこれも、3人が親身になって意見を出し合ってくれているから。

 魔女が“魔女狩り”がきっかけで皇族を恨み、私を使って皇族に復讐‥というのが今のところ一番しっくりくる。

 もしもまだ私が魔女のならば、何故一旦私を解放したのか。

 それについては、様々な人たちから命を狙われていたからではないかという意見が出た。
 でも正直‥、魔女の力を持ってすればいくら命を狙われようが魔女には痛くも痒くもないはず。

「‥‥魔女の命を‥狙おうとしたのが個人ではなかったのでは?」

 テッドが眼鏡をクイっとあげながら呟いた。
個人的に魔女の命を狙えば魔女が太刀打ちできるけど‥

「‥‥皇帝や、皇室が私の処刑を命じようとしてた‥ってこと?」

 お父様は魔女が私の体に入っていたことを恐らく気付いていた。バートン卿に私を見張らせていたけど、月日が経っても魔女は私の体から出ようとしなかったから、お父様は私の命を諦めて処刑を行おうとした‥。‥その情報を魔女が掴んでいたとしたら、確かに私の体から出ていきたくなるわよね。

「‥‥考えられる可能性として、ですね」

「確かにあり得るわね。でも恐らく‥私の行動の変わりようがお父様の耳に入ったことで、魔女が出て行ったと判断して私を公的に処刑する話は流れた‥のかな」

 私の言葉にみんなが頷いた。
皇帝であるお父様は一度私を殺そうと腹を決めた。だから魔女も私の体に迂闊に戻って来れないのかもしれない。

 もしも魔女が今後私の体に戻ってきたとして‥。考えられる一番最悪のパターンは、私の体で皇族たちを殺して‥私自身が魔女狩りという形で断罪されること。

 私が今自棄になってこの命を終わらせたら‥私の代わりにその役目をさせられるのはお父様や義弟かもしれない。

 どう考えたって辛いけど、お父様や義弟が私のような絶望を味わうことは避けたい。

「テッド。私が魔女に体を奪われたら‥その時はテッドが確実に私を斬ってね。約束よ」

「‥‥‥はい」


 ポジティブな約束ではないけれど、でも私にとっては必要な約束。
 さっきまでは投げやりになって考えるのを放棄してしまっていたけど、それまでに魔女をどうにかする方法を探らないと。


「‥‥大変。やることが沢山あるわ。泣いてる場合じゃないわね。えーっと、まずはキャットマスクとしてピアノ演奏をして、暗殺者を炙り出せるようにして‥それから魔女を懲らしめられる方法を見つけて‥‥‥‥‥お父様と、義弟ロジェにも会いたい。‥‥ふふ、忙しい」

 気を緩めたら心がすぐに壊れてしまいそう。
だけどこんなにボロボロの私だって守りたいものくらいある。魔女は私を通して皇族に復讐しようとしてるのかもしれない。それなら私はお父様と義弟を守れるように頑張るしかない。

「皇女様‥俺も頑張るから」

 ノエルは力強くそう呟き、

「私は絶対に魔女を許しません」

 バートン卿は決意を燃やした。

「‥私たちは貴女の理解者であり、支えになりますから」

 テッドはそう言って、自身の胸元に手を置いた。


 ーーこの3人がいる。まだ、大丈夫。がんばれる。


 ***


 次の日、拍手喝采に包まれながら難なくピアノ演奏を終えることができた。暗殺者も毎度毎度私の命を狙うわけにもいかないみたい。そりゃあそうか‥。

 公爵の従者の方と次の公演日について約束を交わした後、私たちは馬車に揺られて離宮へと戻った。


「‥‥では行って参ります。テッド、ノエル、よろしく頼む」

 マントを羽織ったバートン卿を3人で見送った。バートン卿はひとりで馬に乗り、“賢者様”に会いに行くのだという。賢者様なんて伝承の中でしか聞いたことのない存在だったけど、まだこの時代にも存在しているみたい。
 遠く離れた土地にいるらしいから暫くは帰って来れないと思うけど、賢者様ならば魔女と戦う術を持っているかもしれないという希望を抱いてのことだった。

 ちなみに今まではバートン卿も賢者様の存在を信じていなかった。でも、ダルトワ王国出身のノエルがなんと賢者様と顔見知りだったらしくて、賢者様の存在を信じるに至ったみたい。

 なんでもこの時期には帝国の一番高い山の山頂にいるんだとか。ノエルは馬に乗るのがそこまで得意じゃないから、代わりにバートン卿が出向くことになった。
 ノエルの家宝と書簡を持って、バートン卿は旅に出る。

「‥‥なんか、すごいね‥。みんなが集まってくれたからこそ、動き出せたことだね」

 私がそう言うと、テッドとノエルは頷いた。

「バートン卿、満月の夜までに帰って来れるかなぁ~」

 そこだけが心配だ、とノエルが言う。“満月の夜”という言葉に反応したのはテッドだった。

「‥‥‥‥満月の、夜‥ですか?」

 ついこの間の満月の夜に、テッドに部屋にいてもらったあの日のことを思い出す‥。

「あー‥っと、その‥」

 これからもテッドは私のすぐ近くにいる筈だから、バートン卿が魔女のせいで吸血鬼になっちゃうこと‥説明しないと‥‥。

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