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40話
しおりを挟む敢えてリセット魔法を使わされていたのも、レオンの正体が猫なのかもしれないというのも、すべて私の憶測。
憶測だけど‥‥全てがしっくりきてしまうの。
何のためにリセット魔法を使わされていたのか分からないから、これからは出来る限り魔法を使いたくないけど‥身近にいるレオンにそれを察せられるのは良くないのかもしれない。
仮にレオンを猫だと考えると、この間猫として登場した時は繰り返された1日とはちがう行動ができていた。つまり、レオンは私と同じ視点を持っているのかもしれない。私がリセットをかけて記憶を持ったまま朝を迎えている時に、レオンもまた同様に朝を迎えている可能性がある‥ということ。
それならば私がリセット魔法を使うかどうかがレオンに筒抜けということになる。
私にリセット魔法を使って欲しいのならば、なかなかリセット魔法を使わなくなった私にやきもきして、敢えて魔法を使わなくてはならない状況を作ってくるかもしれない。
‥‥レオンが猫かは断定できないけど、もしそうならば‥なんて恐ろしくて厄介な存在なんだろう。
ーーーそもそも‥もしかしたらレオンはリセット魔法を授かったばかりの頃の私が、リセット魔法を積極的に使うように計算して行動していたのかもしれない。‥‥はぁ、もう‥私ったら、完全に手のひらの上で転がされていたのかもしれないわね。
屋敷に戻ってから私はテッドとノエルを呼び出した。本当はバートン卿がいる時にすべてを打ち明けたかったけど、バートン卿は暫く帰って来れないから仕方がない。
リセット魔法のことを打ち明けよう。そして、猫の存在も打ち明けないと。
魔女が体から出ていく時にリセット魔法を授けられたこと、今まで命の危険があるたびにリセット魔法を使ってきたこと、はじめてのピアノの公演の際の“予知夢”も実はリセット魔法のおかげで知ることができたこと‥。順を追ってゆっくりと説明していった。
2人は驚いていたけれど、ノエルは少ししてから「納得‥」と呟いた。
「‥俺、牢にいた時‥すっごくぐちゃぐちゃだったの。内面が。もう自分でも制御できないくらいに感情が絡まり合ってて、何をしてもずっと空腹、って感じだった。‥‥皇女様とお話できた時、不思議とすーっと心が軽くなって救われたんだよね。‥‥沢山ある言動の選択肢の中で、どうして俺の心が助かる選択をしてくれたのか不思議だった。俺、本当、平気で何人も殺せるんじゃないかってくらい心が荒んでたから‥」
ノエルの宝石のような水色の瞳が揺れている。私を真っ直ぐ見つめていたその視線は、戸惑うように自身の足元に向けられた。
「ノエル‥」
「‥‥俺のせいでリセット魔法、使ったんだよね‥?だからきっと、俺の心を救えた。‥ちがう??」
自分のことは自分が一番分かっているんだと思う。ここは誤魔化さないで向き合いたいと思った。
「‥‥うん。ノエルがどういう心境なのか、どうすればノエルに届くか‥、リセット魔法を使って考えたよ」
私がそう言うと、ノエルは眉を下げてポツリと「そっか」と呟いた。
「皇女様、ごめんね‥。俺のせいで危険な目に合わせて‥。でも俺、もう心が救われてるから。もう暴れたりしないからね」
「大丈夫よ、ノエル。私、貴方にすごく救われてるもの。信頼してるわ」
リセット後のノエルのことを、私は心から信頼してる。いつでも全力で守ろうとしてくれてるのが伝わってくる。
ノエルは安堵したのかホッと息を吐いて口元を緩ませた。その表情はどこか柔らかくて、見ているこっちもホッとする。
「‥‥‥どうして今そのリセット魔法について、我々に話そうと思ったのですか?」
テッドが首を傾げながら口を開いた。テッドはやっぱり頭の回転が早くて賢い人だと思う。
「‥‥‥実は」
私は壊れたように泣いたあの日に、魔女と猫が現れたことを話した。みんなは恐らく猫に殺されてしまったこと、猫に首を絞められて必死に抵抗したこと、魔女が猫を止めたことで助かったこと。‥‥そのことがあったから、魔女が私を解放していないのだと悟って苦しくなったんだと伝えた。
「‥猫‥‥‥?え、俺たちみんなやられたの‥?嘘でしょ」
ノエルは自身の剣の腕に自信を持ってる。でもそれと同時にバートン卿やテッドの力も認めていたらしく、全滅したかもしれないというこの話はよっぽど衝撃的だったみたい。
「‥分からないの。私は部屋にひとりでいて‥、ノエルが扉の向こうから逃げてって叫んだの。だから他の人が本当にやられてしまったのかはわからない‥」
「‥‥まぁ、少なくとも俺がやられたのは確定ってわけね」
「そうなるわね‥」
ノエルは口を尖らせて不機嫌な顔をしている。悔しさや不甲斐なさを感じているんだろうけど、その記憶がないというところがもどかしくて仕方がないのでしょうね‥。
「ーーーー猫とは一体何者ですか?猫も魔女と同様、魔法使いなのですか?」
テッドの切長の瞳は鋭かった。未知の敵の存在というのは、2人の神経を酷く尖らせるようだった。
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