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63話
しおりを挟むレッドメイン家も、敢えて離宮に強行突破して私を連れ出そうとするなんて、そんな修羅な道を歩まなくたっていいのに‥。
レッドメイン家の人々は、恐らく予め皇帝陛下であるお父様に私を公の場に出すように訴えたはず。それが却下されたから強行的な手段を選んだのだと思う。
レッドメイン家が護衛たちのことを思いっきり殺す気で来ているから全力で対抗しようとしているけど、何とか穏便に済む方法はないのかしら。
「‥‥私が要求を飲んだらどうなると思う??」
一緒にお留守番中のテッドに尋ねてみると、テッドは途端に顔色を悪くした。
「‥‥恐らくレッドメイン家の狙いは皇女様のこれまでの行いを国民に訴えること。‥皇女様の処遇を長らく有耶無耶にしていた皇室に国民たちは批判的な感情をお持ちですので‥」
やっぱりそうよね。
何の罰も与えられずに離宮に隔離されていただけ‥。そしてその離宮でも散々お酒に溺れて、男遊びをしていたんだもの。
ーーー私が離宮に篭ったまま世間に訴えるよりも、私を直接矢面に立たせた方が国民達を刺激できるってことよね。
「‥‥でも‥仮にも皇女である私を無理矢理拉致して拘束しようとするって‥、皇室と対立することにならないのかしら」
「レッドメイン家としては、その皇室の皇后を救う為ですから、レッドメイン家の言い分としては恐らく“皇后は帝国民の意見を真摯に受け止め行動をした。塔に幽閉されることは不当な扱いである”といった感じなのでしょう」
私たちの話を聞いていたノエルは、目を細めながら怠そうに言葉を落とした。
「めんどくさ~。盛大な親子喧嘩的な?俺の国でもあったよ、貴族とか皇族とかの争い。‥‥でも根本的にさ、皇帝が皇女様を表に出さないようにしてるんでしょ?ていうことは皇帝は皇女様の味方なわけじゃん?皇帝だって塔に幽閉させることを反対しなかったからこうなってるんだし」
確かに、お父様がお義母様の味方だったらこんな事態には成っていないかもしれない。
ーーレッドメイン家は私を悪と断定して強行手段を選んでいるけど、それはあくまでも皇后を救う為。
‥皇室とぶつかってでも皇后を救いたいのね。レッドメイン家としては私さえ確保して国民感情を揺さぶってしまえば、お父様が動き出そうが勝機があると思っている。
じゃあ今回の戦いで、屯所の騎士団の戦力のおかげで私たちが勝ったとしたら‥?
「‥‥ねぇ、今回私たちが勝っても‥。レッドメイン家の人たちが、“皇后の為に立ち上がった大勢の騎士達が皇女によって殺された”なんて吹聴されるわよね、きっと」
私がそう言うと、テッドとノエルは暗い顔をしながら口を噤んだ。
今の私はどれだけ悪評があったとしても、森の奥の離宮に閉じこもっているだけだった。
でも、今回のレッドメイン家の動きによって世間に“最近の私の行動”が知らされることになる。
それが防衛戦だったとしても、世間はそうは捉えない。
“やはり悪女だ、人殺しだ、皇后をも陥れようとした”‥‥世間の人々はきっとそう捉えるでしょう。
「‥‥どうすれば戦えるかばっかり考えてたけど‥これは勝っても勝ちじゃないわね」
「‥‥‥じゃあさ、王宮に助けを求めるのはどう?」
「え?」
「きっとバートン卿ももうすぐ帰って来るでしょ。そしたら騎士団たちに護衛してもらいながら王宮に駆け込むの。レッドメイン家の動きを察知したから逃げてきたとかなんとか言ってさ。レッドメイン家と戦ったのが皇女様じゃなくて王宮なら、皇女様の悪評には繋がらないんじゃない?」
ノエルがそう言うと、テッドはコクリと頷いた。
「それはいい考えかもしれません。‥結果としてどう転ぶかは分かりませんが、離宮で応戦するよりはマシな筈です」
‥確かに、私が敗れてレッドメイン家に連行されることも、私が勝つことで評判を更に落とすこともなくなる。
「で、でも、王宮は受け入れてくれるかしら‥」
「きっと大丈夫ですよ。皇太子様もいらっしゃることですし」
「ここにいるより絶対いいよ!そうと決まれば離宮の人たちみんなに声を掛けなきゃ。ここに残ってたらレッドメイン家の騎士たちに殺されちゃうかもしれないし!!」
「そ、そうね‥!!」
こうして私たちは急遽王宮に向けて逃亡することになった。離宮には元々馬車は2台しかないけど、私とメイド達以外は馬に乗れるから問題なかった。
事情を聞いた従者たちは酷く驚いていたけど、いそいそと荷物をまとめて従ってくれた。ベルタはレッドメイン家と繋がってる可能性があるからノエルが常に監視することになったけど、ベルタもものすごく驚いた様子だったからあくまでも彼女は皇后とだけ繋がっていたのかもしれない。
レオンもその話を聞くなり、まるで本気で私を心配しているように眉を顰めて真剣な顔をしていた。
そんなレオンの顔を見るたびに何故か心臓が痛くなるから、深層心理でよほど彼を警戒しているのかもしれない。
騎士団を連れて帰ってきたバートン卿に早速事情を伝えると、バートン卿も私たちの提案に乗ってくれた。
こうして私は思わぬ形で王宮へと繰り出すことになったのだった。
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