今日も姉の物を奪ってやりますわ!(完)

えだ

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お節介だと思うけど*ジュリア視点

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 社交パーティー当日、既に着飾った状態のアリーが部屋に来た。今日も惚れ惚れしてしまうくらいアリーは可愛くて綺麗。本当に本当に、自慢の妹‥。
 クラリッサ嬢がアリーの人形を売ってくれたら飛び跳ねて買うのに‥。あ、でもアリーがクラリッサ嬢の話は右から左に流してって言ってたなぁ‥。

「お姉様!!髪を結うのも化粧も、全てアンナに任せてくださいませ!」

 アリーが部屋の入り口で声高にそう言うので、侍女たちがみんなアリーとアンナを視界に入れた。アンナはこっちの部屋にいる時、いつもみんなの補助しかしてなかったんだけど、本当は上手だったのかな?
 ここ最近のアリーは髪型も化粧も更に可愛いから、もしかしたらアンナにやってもらってたのかも‥

「わ、わかった!よろしくね、アンナ」

 にっこりと微笑むと、アンナの笑顔が嬉しそうに弾けた。アリーはフンッと鼻を鳴らして部屋から出ていった。

「アンナ、あのね、未確認生命物体調査ファイルZっていう小説があるのだけど‥」

「は、はい‥」

「それに出てくる未確認生物の髪型が可愛くてね‥」

 興奮する私と反対に、アンナが困った表情になっていく。どうしたんだろう‥?いつもなら「素敵だと思います!」って賛同してくれるのに‥。
 首を傾げる私の前に突然現れたのはライラ。ライラは動きが素早くて面白いの。

「ジュリア様、いけません、いけませんよ!
今日は社交パーティーです!未確認生物になりたいのなら今度お部屋で仮装パーティーしましょう!!今日はダメですよ~!」

 私に両手の手のひらを向けてジリジリと迫ってくるライラ。そしてそんなライラを見て安堵しているアンナ。

「仮装パーティー、楽しそう‥!」

「ええ!!楽しいですとも!ですから、今日はダメですよ~!全てアンナに任せましょう!ね?ね??」

「え、ええ、わかったわ!」

 こうして私はすべてアンナにお願いすることにした。

 ライラは他の侍女たちになんだか避けられている気もするけど、自分の意見をしっかり伝えていて、さすがアリーの侍女だなぁといつも感心するの。


 社交パーティーが始まって、今はアリーとレックス様の3人でいる。
アリーはこの場から離れたかったみたい。いつもはアリーが離れちゃうと不安で不安で堪らなくなっちゃうんだけど、今日は大丈夫‥。だって、レックス様にお話したいことがあるの。

「ア、アリー?その、もし、他の方とお話したかったら、その‥」

 私がそこまで言うと、アリーは目をこれでもかと大きくして驚いた。わぁ、目玉落ちちゃうよ~!

「い、いいんですの?!」

「え、ええ。ちょっとレックス様に、お話があって‥」

「まぁ!ではごゆっくり!私は暫し商談へ行って参りますわ!」

 商談‥?クラリッサ嬢みたいなお仕事始めたのかな?

 私がチラリとレックス様を見上げると、レックス様も私を見ていた。

「お話って?珍しいですね、こうして2人になるの」

「ええ、2人じゃないとなかなか、話せないことで‥」

 私、アリーの為なら力が出るの。緊張するけどお話できるよ。

「大事な話なら、場を改めますか?」

 たくさんの人、たくさんの声、鳴り響く音楽。だけどこの状況だからこそ、小声で話せば他の人には聞こえないと思う。

「大丈夫です、ここでお話します」

「わかりました」

「あ、あの。婚約に関することですが、レックス様はどうお考えですか」

 レックス様は喋り下手な私の小さな声を聞き逃さないよう、集中してくれているような気がした。

「どうお考え‥?ノーランド侯爵家と繋がりが深まることはうちにとってもいいことだし、ノーランド侯爵家にとっても良い縁談だと思ってますよ」

「は、はい。そうですよね」

「‥?あ、もしかして‥ジュリアさん、好きな人でもできましたか?」

「!!あ、いえ、違います!ただ、アリーに幸せに、なってほしくて」

「‥‥ん?アレクサンドラ嬢?」

「え、ええ!」

「ごめん、つまりどういうこと?」

 レックス様の頭の周りにクエスチョンマークが沢山浮かんでいるように見えた。多分すごく困らせること言っちゃうけど、いいかな。

「ア、アリーはたぶん、いつの日かレックス様を好きになるような、そんな気が、します」

 レックス様が固まってしまった。もちろん引いてるとか、そういう顔じゃなく、あまりにも衝撃的だったから‥。

「ま、まだ分からないけど、私もずっとアリーを、見てきたので」

「待って‥‥え、えーーっと。‥あくまでも可能性ですよね」

「はい。たぶん、私と婚約してる限りは、そんな気にはならないと思うんです。その、心にストッパーがあるだろうし‥でも、それがなければ‥」

 レックス様は額に手を当てていた。たぶん頭がぐるぐるしてるんだと思う。

「だからジュリアさんは、ジュリアさんとじゃなくてアレクサンドラ嬢と婚約してほしいと思ってるってこと‥?」

「は、はい‥」

「でもアレクサンドラ嬢が俺を好きにならなかったら?色々引っ掻き回して騒ぎにした上で、突然縛り付けることになる」

「‥‥」

「可能性があったとしても心のストッパーやらがあるなら心配いらないでしょ。彼女魅力的だし他に可能性のある人直ぐに見つかると思うよ。まぁ縁談の相手がその可能性を持ってるかは別として」

 レックス様も、心のストッパーがある人だと思う。
もし私がレックス様の立場だったら喜んでアリーと結婚するもの。

 やっぱりダメか‥。このまま婚約しているのが正解なのかな‥‥。アリーが一番幸せになる道を探したいんだけど‥‥。

 アリーの姿を探して、そして息が詰まった。

「え、ジュリアさん?」

「ア、アリーが、誰かと外に‥!」

「歓談しにいくのは普通のことでしょう」

「よ、様子を!み、見に行くだけです!」

 私はアリーの姿を追った。やる事なす事全てお節介かもしれない。だけどアリーが心配で仕方ないの。

 ねぇ、アリー!そのご年配の‥スキンヘッドの殿方は誰なの‥!

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