今日も姉の物を奪ってやりますわ!(完)

えだ

文字の大きさ
33 / 51

時限爆弾ですわね

しおりを挟む

 パーティーが終わり、私は部屋に戻りました。
いやー、はい、疲れましたわ。皆様に感謝を述べて送り出したらもうこんな時間。私は日中不本意ながら寝ていたので、私以外の方々のほうが疲れているに決まってますけども。

 ちなみに送り出した際、レックス様は柔らかく微笑んで「またね」と言っていました。もちろん睨みつけて差し上げましたわ。「覚悟しておいて下さいませ」と言ったら首を傾げておりましたが。

 それにしても‥パーティーが終わるギリギリまでマティアス殿下とレックス様がお父様と何やら真剣にお話していたんですの。あれ、何を話していたのかしら‥?

「うっ、うっ、本当に、お目覚めになられて良かったです、ううっ」

 アンナが号泣です。まさかアンナが私のために泣いてくれるようになるとは思っていませんでしたわ。
 目覚めなければ責任を負わされるから、といった理由ではないのがわかります。多分心から、心配してくれていたんでしょう。

「本当心配かけたわね」

「うぅうぅうぅ」

「擦ったら腫れるわ!ほら、このハンカチ使って!」

 そんな私たちに構うことなく、スーザンはせっせと私のドレスを脱がせています。本当こんなときにもクールなんだから‥。でもスーザンの顔にも疲れが見えていて、相当心配してくれたんだろうなぁと思いました。


 日付が変わってまた朝が来ました。
昨日の大騒ぎが嘘のようでしたが、今日は今日で信じられないことが起きました。

「わざわざお見舞いだなんてありがとうございます、ペリング伯爵」

「いえ、当然のことです。昨日はどうしても仕事を抜け出せず、顔を出せずに申し訳ありません」

「そんな、謝らないでください!それに私は本当に眠っていただけなので体に異常は起きていませんし」

 まさかグレン・ペリング伯爵がわざわざ心配してきてくださるなんて~!きゃー。やっぱりイケメンだわ。マティアス殿下もレックス様もイケメンだけど‥何ていうのかしら?ペリング伯爵は見ていると落ち着くのよ。まぁお兄様と同じで5歳年上なせいかもしれないけれど。

 私とペリング伯爵はお茶をしながら会話を交わしていました。最近のことやお兄様のことなどをお話した後、ペリング伯爵が口に出したのはあの話題でした。

「そういえば、また誰かが悪戯に流した噂を耳にしました」

「あ‥」

 すいません。噂を流したのは私です。

「絶えず様々なゴシップが流れているので、きっとすぐに別な話題に掻き消されて落ち着くと思います。あまり思い詰めないでくださいね」

 大人だわー‥。爪の垢煎じてレックス様に飲ませたいわ‥。

「‥‥ありがとうございます」

 ペリング伯爵は小さくクスッと微笑んで下さいました。
博学なイメージもあるし、建設的な意見を下さるペリング伯爵‥。ついでにちょっと聞いてみようかしら‥?

「ペリング伯爵、質問してもよろしいですか?」

「はい、なんでしょう」

「‥その、惚れ薬を見たことがありますか‥?」

 私が尋ねると、ペリング伯爵は目を見開いていました。
あまりにも唐突だったかしらーー?

「‥‥あー、見たことはないけど話に聞いたことなら‥」

 きゃー!早くも有力な手掛かりですわ!!

「く、詳しく教えてくださいますか?!」

「‥‥はい。えーっ、と。‥‥男女感の‥その、欲求を強める薬としても売られていたりするそうですね。‥媚薬、というべきでしょうか」

「媚薬」

「ええ。恐らく興奮を高めることによって、媚薬の効果だけではなく恋愛感情を引き起こさせることもできるのかと。まぁ一時の錯覚というべきですかね」

 ‥‥なんてことですの。これは悪戯に使っていい薬なんかじゃないわ!それに、一時の錯覚って‥。私はあの社交パーティーの時からずっとレックス様のことを考えてしまうのよ‥?知らぬ間に何度も何度も飲まされていたのかしら?‥いや、そんな筈ないわ。いくらなんでも不自然すぎるもの。

 それなら‥

「‥一時ではなく、効果が長く続く種類のものもあったりするのでしょうか‥‥?」

「‥え、えーっと‥そこまでは、すみません。分からないです。(アレクサンドラ嬢、凄く興味津々だな‥。惚れ薬を使いたい相手がいるのか‥?)」

「そ、そうですよね。奇妙な質問をしてしまいすみません」

 くぅぅ。初めてクラリッサ嬢の力を借りたい気持ちになったわ!
クラリッサ嬢ならきっと何か情報を掴んでそうだもの‥でももう彼女は二度とここへは来れないでしょうし‥今度ベッキー夫人(B)にでも尋ねてみようかしら。

「いえ。何かわかったことがあればお伝えしますね。(惚れ薬なんて何が起こるかわからない危険なもの、侯爵家のご令嬢が欲するなんて危ないよなぁ‥。ギル彼女の兄に伝えるにしても、実の兄にこんなこと知られたくないだろうし‥。ギルはそもそも知ってても関与しなさそうだ。他に彼女の身近で、器用に立ち回れる人ーーー、あ、レックスがいるじゃないか。レックスにサラッと伝えておけば、危なくないように見張ってくれるかもしれないな。アレクサンドラ嬢の義理の兄になるわけだし。よし、そうしよう)」


 私は知らなかった。この時のペリング伯爵との会話が、とんでもない時限爆弾と化したことを‥
しおりを挟む
感想 163

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

【完結】ちょっと待ってくれー!!彼女は俺の婚約者だ

山葵
恋愛
「まったくお前はいつも小言ばかり…男の俺を立てる事を知らないのか?俺がミスしそうなら黙ってフォローするのが婚約者のお前の務めだろう!?伯爵令嬢ごときが次期公爵の俺に嫁げるんだぞ!?ああーもう良い、お前との婚約は解消だ!」 「婚約破棄という事で宜しいですか?承りました」 学園の食堂で俺は婚約者シャロン・リバンナに婚約を解消すると言った。 シャロンは、困り俺に許しを請うだろうと思っての発言だった。 まさか了承するなんて…!!

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さくら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

処理中です...