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仲良し*ジュリア視点
しおりを挟む私の前に座っているのはマティアス殿下。最近すっかり仲良しで、今もこうしてお茶をしてるの。
最近アリーは叫んだり、レックス様を追い出したり、顔を真っ赤にして身悶えていたり。
なんだかとっても乱れてる。レックス様はアリーのことすごく好きみたいだし、アリーも恥ずかしがりすぎておかしくなってるから、2人を見てるとほんわかするの。
でもアリーがそうやって真っ赤になったり叫んだり、可愛い顔をするのはレックス様にだけなんだよね。‥‥ずるいなぁ、レックス様‥。
「ど、どうしたジュリア嬢!頬が、頬が膨らんでいるぞ!!」
「‥‥‥」
「そ、そうか。何か嫌なことがあったんだな。はっ、俺とのお茶が嫌だったか?!」
「‥‥殿下とのお茶は好きです」
「うっ、」
マティアス殿下が不意打ちを喰らったように胸を押さえてる。今日も相変わらずとても綺麗なお顔だなぁ。お人形さんみたい。
「アリーがレックス様にだけ、可愛い顔をするんです。それを思い出してたら‥」
「はぁぁ。愛らしい‥」
「‥?」
「いや、なんでもない!!」
殿下は雑念を払うかのように首をブンブンと横に振っていた。私は不思議に思って殿下を見つめるけど、殿下は私の顔を見るたびにまた首を振った。
「ふふ」
「わ、笑わないでくれ。真剣なんだ!!」
「ふふふっ、ふふ」
口元を押さえて笑い声が漏れないようにしたいのに、どうしても声が漏れてしまう。
「‥‥はぁ、まったく君には叶わないよ」
「‥‥殿下はどうしてこんなによくしてくれるんですか?」
ありのままの私を、嬉しそうに受け入れてくれるの。この国の王子様なのに。すっごく高貴なお方なのに。
「‥それは‥‥それは、俺が君と仲良くなりたいからだ」
「もう仲良しですね、私たち」
「!本当か!!ジュリア嬢もそう思ってくれてたんだな!!」
「はい」
私がそう言うと、殿下はにっこりと笑ってくれた。キュン、と胸が鳴った気がして、思わず首を傾げる。
「ど、どうした?何か疑問があるのか?」
「‥‥いま、殿下の笑顔を見たら胸がキュンとして‥」
「!!!」
「‥昔、本で見たことがあるんです。そんなことあるのかなぁと思ってましたけど、本当にキュンとするんですね」
殿下の頬が赤い。頬や唇が緩んでしまったみたい。だけど目力は相変わらず強くて、私は思わずたじたじしてしまった。
「‥‥ジュリア嬢、頼むからそういうことは‥他の男性には言わないでくれよ‥。もし同じように感じることがあっても、言ったらだめだ」
「‥‥?他の男性にはキュンとしたことはありませんよ?」
「~~~っ」
殿下は横を向いて、ふーっと息を吐いていた。思ったことをそのまま伝えているんだけど、何かだめだったかな??
「あの、こういうのって、言わない方がいいんですか?」
私が首を傾げると、殿下は少しだけ考える素振りを見せていた。こめかみのあたりを人差し指でぽりぽり掻いてる。
「‥‥いや、言ってもらえると嬉しい。‥けど、その。ちょっと身がもたないかもしれない」
少し冷静さを取り戻した殿下はカップに唇をつけていた。唇まで女の子みたいに綺麗だなぁ‥。ほんのり赤味を帯びた、果実のような唇。
しばしの沈黙があった。ゆっくりとした空気感が心地良い。
「‥‥‥ジュリア嬢」
「‥はい」
「‥‥君はレックスと婚約を解消したばかりだけど、その‥。俺は君と結婚したい」
「‥‥‥」
殿下の手のひらが私の前でぶらぶらと動いてる。一瞬意識がどこかに飛んでたみたい。
「恥ずかしげもなく言うが、俺はこの18年間‥運命というものをずっと信じてきて‥ジュリア嬢を見た途端にピンときたんだ!」
え‥‥‥
「殿下って‥年上の方だったんですか‥?!」
「食いつくのがそこなんだな」
「はっ。ごめんなさい‥」
「いや、いいんだ。君に年下だと見られていたことは一旦置いておこう。‥どうか俺の手を取ってくれないか」
思いもしなかった展開に、私は何度も瞬きをした。
ドキドキするけど、それ以上に沢山の心配事がある。
「‥‥わ、私‥不器用だしノロマだし、頭の回転も遅いし‥私に殿下の妻が務まるとは思えません‥」
「俺は第3王子だから、もう少しで公爵の爵位を授かることになってる。王都の近くの領土をもらって、そこの領主になる。レックスとアレクサンドラ嬢が無事に婚約すれば、ジュリア嬢とアレクサンドラ嬢はのちのち公爵夫人というお揃いの肩書きになるんだ」
「お、お揃い‥‥」
「そうだよ。それに互いの領土もそう遠くないから、結婚後もしょっちゅう会える」
「‥‥とても魅力的ですけど‥」
「使用人もたくさんいるし、ジュリア嬢をフォローしてくれる人も沢山いる。ジュリア嬢は俺の側で微笑んでくれてればそれでいい。元々レックスと婚約を結んでた時と条件は同じなんだよ」
なんでだろう。レックス様との婚約の時は政略結婚だから、と割り切れていたのに‥。すごくドキドキしてるの。不安もすごく感じてる。
「‥‥」
「ジュリア嬢は俺と共に生きるのは嫌?」
「嫌じゃないです‥‥」
「じゃあどうしてそんな顔をしてるの?」
「‥‥今より沢山の時間を殿下と過ごすことになったら‥‥私のダメなところ、幻滅されちゃうんじゃないかって、不安なんです‥」
殿下は眉を下げて小さく笑った。
「俺のことをみくびらないで欲しいな」
殿下の真っ直ぐな目を見て、私の胸はまた小さく音を立てた。
そっと手を伸ばして、殿下の温かい手のひらに重ねてみる。
「‥‥‥殿下と共に歩みたいです」
「‥ありがとう」
私たちは手を重ね合ったまま、しばらく微笑み合った。
殿下になら、心を預けても大丈夫だと思えたの。
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