軟禁されてた呪いの子は冷酷伯爵に笑う(完)

えだ

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第2章 

33話


 バージル様の屋敷に戻った私はマリアやユリアに抱きついて、バージル様にも改めてお礼を言った。
 心から安心できる人たちに囲まれて、幸せでしかなかった。でも保護されていたあの時とは違って、今の私にはやるべきことがある。

「‥バージル様、明日からの話なんだけど‥」

「あぁ。俺もその話をしようと思ってた」

 バージル様と久々に夕食を食べながら、私たちはこれからの話をした。

 ーーバージル様の屋敷のすぐ近くに、普段はあまり使われていない集会用の建物があるらしく、そこを私の日中の拠点とすることになった。
 ーー警護も兼ねて、バージル様の屋敷で生活をして、日中もバージル様の兵士たちが私を守ってくれるみたい。
 ーーマリアとユリアは、私のお世話係として1日中私と行動してくれるんだって。
 ーー週に3回、ここよりも王都寄りのメーベルという大きな街を拠点にして、国中心部の人たちの呪いも解けるようにすること。(日帰り)
 ーー状況が落ち着き次第、徐々にいろんな地域に赴いて呪いを解いて回るようにするということ。

 ダニエルさんと違って、バージル様は私の思いを汲み取って、同じ方向を向いてくれる。‥嬉しいな。

「バージル様、それでね、私、お金のことよくわかってないんだけどさ‥」

「金銭についてはマリアとユリアにも協力してもらえばいい。マリアとユリアなら一から色々教えてくれるだろうし、あいつらは信頼できる。帳簿もつけてもらえ」

「‥私が管理していいってこと‥‥??」

「?あぁ、当然だろ」

 私はどきどきと胸が飛び跳ねた気がした。なんでこんなに高揚してるんだろう。

「‥‥あ、でも、この屋敷に住まわせて貰えるし、私の身も守ってもらえるし、ご飯も食べさせてもらえるでしょ?私はバージル様にいくら払えばいいのかな」

 生きていく為に必要なお金の相場も分からない私は、こうして直接聞くしかない。バージル様は何度か瞬きをしてから口を開いた。

「要らない」

「えっ」

「‥‥正確に言えば、おまえがセレスト領を拠点にすることでセレスト領に多くの人が流れ込むことになる。人が集まれば集まるほど、セレスト領には金が落ちるんだ。宿や飲食店だけじゃなく、セレスト領には観光地や特産品もある。明日以降の状況によっては、むしろ俺がおまえに謝礼を渡すことになる」

 最近まで地下にいた私にはよく分からないけど、バージル様たちに色々なものを貰っておきながら、更に謝礼だなんて受け取れる筈がない。

「い、要らない‥」

「ふっ、真似するな」

 真似をしたかったわけじゃないけど、私の本心だった。
バージル様からお金を受け取るわけにはいかないと、全力で思ったの。

「‥‥今後、地方にね、遠征しに行くってなった時、お金かかるでしょ。そういうお金も私自分で出すからね」

 私がセレスト領にいることでセレスト領が潤うっていうのは本当の話かもしれないけど、バージル様はすごく優しい人だから、無知な私を無条件に甘やかしてくれるかもしれない。
 ただお世話になるだけじゃなくて、ちゃんと自立したい。なんで急にこんな風に思い始めたのかわからないけど、バージル様に一人前として認めてもらいたい。

「‥まぁそういう話は追々だ」

「うん」

 夕飯を食べ終えた私は、早速マリアとユリアにお金のことを教わった。

 お金の単位はマネといって、パンをひとつ買うお金が100マネ。人々の平均的なお給料は15万マネだけど、職につけてない人も多くいるんだって。

 そして、今までの祝福の子が呪いを解く度に受け取っていた謝礼は5万~10万マネだったみたい。ダニエルさんがどのくらい受け取っていたかはわからないけど、過去の祝福の子も正直貰いすぎだと思う。

「‥‥どうしてそんなにお金を取るんだろう」

「‥‥‥に同じことができる人がいないからだと思います。そのうえ、一度呪われてしまった人間は呪いが解けるまで、ずっと呪いについて悩まされることになります。いくら払ってもいいから呪いを解きたいと思う人が多いのでしょう」

 ‥私が地下にいた間、エラは能力が低い祝福の子だと認識されていた。きっと呪いを解いて欲しくて何回も何回も礼拝堂を訪れていた人がいたと思う。実際にはエラには呪いを解く力なんてなかったのに‥。

 ダニエルさんは、一体いくら騙し取っていたんだろう。

 お金持ちの人だって無限にお金があるわけじゃないし、ましてやお金を払えない人だっているはず。

「ドロシー様‥大丈夫ですか?ハリセンボンのようなお顔をされていますが‥」

「‥‥‥‥大丈夫。ねぇ、人によって払えるお金が違うでしょ?どうしたらいいのかな。私は別にお金を稼ぎたいわけじゃないんだけど」

「そうですね‥。例えば、いくら払うかをご本人に決めていただくのはどうでしょう。‥‥あ、いや、これはあまりにもドロシー様の力を安売りすることになってしまいますね、やめましょう」

「そうしよう!!」

「「えっ」」

「すっごい素敵な案だよ!!」

 マリアとユリアは少し戸惑っていたけど、私にとっては素晴らしすぎる案でしかなかった。だってこれなら貧しい人たちだって気兼ねなく呪いを解いてもらおうと思ってくれるよね。
 全員からお金を貰わないっていう手もあるけど、今後遠征をする時にやっぱりお金は必要になると思うから‥

「‥呪いは人々の悩みの種ですが、加護を授ける時にはさすがに一定額のお金を徴収してもいいのでは‥?能力者が増えすぎても治安が悪くなる可能性もありますし」

 マリアの言葉にユリアが激しく頷いていた。

「‥そういう問題もあるんだね。じゃあ加護のお金については明日の朝バージル様にも聞いてみようかな」

 私がそう言うと、マリアとユリアは頷いてくれた。
私は明日からのお仕事が楽しみで、部屋の明かりが消えた後もしばらく寝付くことができなかった。

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