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第14話 ロン、デートする
しおりを挟む叔父さんに言われたことで、これでは政略結婚と変わらないのだと気付けた俺は早速行動に移すことにした。
なんと、休日にジェシーと会う約束をしたのだ。
ちなみにただのお茶会とかではない。俺とジェシー2人だけのお出掛けである。(付き人はいるけど)
「‥‥スーザン‥。本当にこのジャケットおかしくないか」
センスの良い父が選んでくれたスーツは、いつもの制服と比べてカッチリしていてなんだか小っ恥ずかしい。
公爵家の令息という立場上着飾ることは多いけど、今日はジェシーと会う為だけに見繕った一張羅。派手すぎもせず年相応だけど華がある。上品な紺色の生地に控え目な銀の糸の刺繍が施された、そんな一着。
「とても似合っておりますよ。ジェシー様もお喜びになるかと」
「べ、別にジェシーに喜んで欲しくて着るわけじゃないし」
「あらそうですか」
悪くはない仕上がりだと分かっていても、無駄にそわそわしてしまう。ジェシーはどんなドレスを着てくるんだろう。あぁ、恥ずかしくなってきた。やっぱりデートなんて誘うんじゃなかった‥‥
「ロン、お待たせ‥!」
「っ!!!!」
突然後方から響いたジェシーの甘い声。反射的に振り返った俺は目を見開いて固まった。
白に近い、淡い桃色の清楚なドレス。袖や胸元には控えめなフリルが付いていて、普段は下ろされている髪型は今日は可愛らしく編み込まれていて特別感があった。
ーーーーーーー天使!!!!!!!!
すっごく控えめに言っても天使‥‥‥っ!!!ジェシーの周りがキラキラ輝いてるんだけど。目を細めて微笑むのとか反則でしょ可愛すぎるんですけど。
「ロン‥?おーい‥」
「ジェシー様、ロン様は今幸せを噛み締めてらっしゃるところです」
「そ、そうなの??」
スーザンと目が合う。いつもと変わらずクールな表情をしているけど、スーザン‥おまえ絶対心の中でくすくす笑ってるだろ!!!
「別に幸せを噛み締めてるわけじゃないから!」
ム、と口が尖ってしまう。確かに幸せだけど、ジェシーの前でそんなことを話したらまるで俺がジェシー大好き人間みたいじゃんか。まぁ、そうなんだけど。
「分かってるよ、大丈夫」
ジェシーが目を細めてそんなことを言った。
分かってるって‥何をわかってるんだよ。俺が本当は幸せを噛み締めてるってこと?それとも、俺がジェシー大好き人間だってこと?
それとも、“幸せを噛み締めてるわけじゃないって分かってるよ”って‥?
眉間に皺が寄る。そんな誤解はされたくない。だって俺‥
「お、俺、別に幸せなの今だけじゃないから。登下校の馬車の中だって幸せだし、廊下で見かける時だって幸せだから!」
「‥‥‥え?」
ジェシーがぽかんとしてる。もう!どうしてうまく伝わらないんだよ!俺のばか!口下手!!
「っ、いまも死ぬほど幸せだけど、ジェシーが側にいる時は俺いっつも幸せなの!!!!」
久々に大声を出した気がする。ここはジェシーの屋敷の玄関の前。使用人たちが頬を赤くしてぽかんとしてる。奥の植え込みから叔父さんが顔を出して泣いてる。
ーーーやばい、なんか、カッとなって勢いに任せちゃった気がする。俺とんでもないこと言った?
待て待て待て、スーザン。肩が震えてるぞ!
「‥‥‥‥ロン‥あ、ありがとう?」
頬を赤くしたジェシー。その台詞を聞いて俺は一気に冷静になった。俺が捲し立てるようにして話した台詞は、ジェシーを褒めるものでもなんでもなく、ただの宣言のようなもの。ジェシーの目がクルクルと回っている気がするから、恐らく相当困らせた。
反応に困って欲しくて言ったわけじゃない。
ただ、誤解されるのが嫌だっただけ‥‥!
というか、そもそも俺はこのデートでジェシーにしっかりと俺が“男性”であることを認識してもらいたかった。以前よりもそれは十分伝わってるとは思うけど、どうしたって俺は歳下。
歳下だってことを忘れさせるような、余裕を見せたデートがしたい。そう思ってたのに‥!これじゃあ余裕ないのバレバレだ。挽回しないと‥‥!!!!!
「‥‥‥‥‥そのドレスも、髪も‥悪くないんじゃない」
ど、どうだ!!!俺なりに精一杯褒めたぞ!!!
チラッとジェシーを見上げると、ジェシーの眉は心なしか下がっていた。
ーーーえ?!なんで?!褒めたのに?!
「‥‥‥あんまり、よくなかったかな‥。えへっ、似合わないことしちゃったね」
ーーー伝わってない!!!俺の言葉、伝わってない!!
「ちがう!可愛い!!」
「え‥?」
「可愛いんだよもうはっきり言わせないで!!!」
だめだ、狂う。調子が狂う。
もう今日解散したいくらいメンタルがやられてる。
「‥‥ありがとう、嬉しい‥!
ロンも今日大人っぽくてかっこいいよ。いつもかっこいいけどね」
ーーーうああああああああ!
応援ありがとうございます!
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