10 / 26
第10話
しおりを挟む草や水、火に風‥様々な精霊たちを呼び、私の血や髪の毛と引き換えにウルフ領に魔族をがんがん送り込んでもらえることになった。(ちなみに出発は明日なので明日から魔族を呼びに行ってと伝えている)
私の血や髪の毛を差し出すとノアに知られれば勿論めんどくさいことになるので契約はノアが入浴中に行うことにした。血は人差し指に針を刺すのみ。これにはさすがに気が付かないだろう。
魔力を多く持つ人間の髪と血は精霊たちにとって堪らないご馳走らしい。
次の日、泣きながらやっぱり辞めよう?と私の裾を掴む父の手を払い、私とノアはお試し旅に出発した。
パーティを組める酒場は隣の領地にしかないうえ、ウルフ領でのみ活動するという条件を飲んでくれる人もいないだろうから、結局私たちは2人でのみ活動することになった。
まぁ2人でも、この地で戦うには造作もないだろう。精霊たちに頼んだって連れてくるのはせいぜい雑魚魔族だろうからな。
屋敷を離れて暫くすると、早速魔族たちが出現し始めた。
久々の実践かぁー、と少し気分が高揚したのだが。
「‥‥どういうつもりだノア」
私はノアが作り出した魔障壁のキューブの中に閉じ込められている。
「危ないからそこに入ってて」
「はあ?」
何をほざいているんだ、と魔障壁を壊そうとするが‥
「俺いま戦いの途中だけど、アデルがそれを破るなら戦いを放棄してまたキューブ作るよ」
「‥おい」
「敵に背中を見せてでも、アデルをキューブに入れることに専念する」
なんだこいつ。一丁前に脅しているつもりか。
ノアも歳を重ねるごとに“怒る”だけだった交渉術が進化してきてるな。
「‥私が来た意味は?」
「俺のモチベーション」
「はぁ‥」
お前は特別だと言い聞かせ、可愛がりすぎたか?
親離れできないのもどうかと思うぞ。もう思春期なんだから‥
「とりあえず、こいつら弱いから余裕!そこで見ててよ」
「‥‥‥はぁ」
結局この日、私はノアの戦いを観戦して終わった。
いくら近いとはいえ屋敷に戻っては“旅”の要素もないので、町宿に泊まることにする。
戦利品ともいえる魔族の体の部位は、もう袋に入り切らない量だ。明日朝一で関所に行って換金するか。
次の日も、その次の日も。嫌がらせに精霊たちに血を多く与えて魔族の量を増やしても‥私はキューブの中でただ観戦しているだけだった。
「こいつらめっちゃ弱いけど思ったより数いるな」
華麗な剣捌きで魔族を片っ端からギッタンギッタンにしているノア。
恐らく隣の領地の魔族たちまでこっちに来てるんじゃないか?
関所で換金しすぎてだいぶ札束が増えてきたぞ。
「‥‥私は暇なんだが」
「アデルが敵と戦うなんて、俺が許すと思ったわけ?」
結局こいつは異様に過保護なままなわけか‥
「‥‥私は信用されていないんだな」
「は?」
「その言葉の通りの意味だ‥‥」
敢えて力なく言ってみる。時にはこうした駆け引きをしてみるのも悪くないだろう。だって私は、暇なのだ!
「信用してるに決まってるだろ。アデルは強いよ。
弱くないってもう分かってる。博識だし魔力もあるし」
魔族の断末魔をものともせずにノアは敵の首を跳ね続ける。
今日だけで何百体目だ‥?ギャギャーとかギェェェー、という声をぼーっと聞き続ける私の身にもなってくれないかな。
「それならここから出せ。私だって戦いたい」
「だから、それは無理って言ってるだろ!」
「理由を述べよ。私が納得する理由を」
「し、ん、ぱ、い、だ、か、ら!!」
こいつ‥!ふざけやがって!!
私は保護者として旅に参加してるのではなく、仲間として参加しているのに!これでは2週間キューブの中で寝腐って終わるじゃないか!!
私は背後の魔障壁にそっと指先を通り抜けさせた。
ずっとここで精霊が待っていたのだ。血をよこせ、と。
ーー今までより少しは骨のあるやつを連れてきなさい。
指先から直接血を吸わせると、精霊は満足して飛び跳ねていった。
見てなさい、ノア。雑魚魔族ではなく少しは強いのがきたら、お前も私の力が必要になる筈だ。
ガシャガシャガシャ!
「こうきたかー‥」
時刻は夜遅く。ノアに群がるのは相当な数のアンデッド達。要はただの骸骨だ。こいつら弱いんだよなー。
「なんだこいつら!ガシャガシャ崩れるけど死なないぞ!!」
そいつらは頭蓋骨を砕くまで動きを止めないんだぞ。
はっはっは、どうやら出番がまわってきそうだなぁ。
「ほれ、早く私に助けを求めたらどうだ?」
私がそういうとノアは明らかにむっと口を窄めた。
まだ14歳の少年だ。挑発には簡単に乗るんだよなぁ。
「なら、骨まで焼き尽くしてやる!」
「‥は?」
私は思わず口を開けてその光景を呆然と見つめた。
これぞ地獄の業火。灼熱の炎は野原一面を焼け焦がし、真夜中の暗闇を激しく照らした。
アンデッド達は当然の如く動きを止め、その身が灰になるのをただじっと待っていた。
ここはウルフ領の中でも人里離れた地にある野原。大ごとになることはないだろうが、その炎はいつまで経っても私の脳裏から離れてくれなかった。
安全な魔障壁の中、私が見たのはノアの底抜けの魔力‥。
ノアは一体何者だ‥?勇者一族の血を引いてるとしても、限度があるだろ‥。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる