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序章
しおりを挟むーーーギフトーーー
ギフトとは、年に一回の【ギフトデイ】に亡くなった親から届く思念のようなもの。
ギフトは親が生きている間に魔力を使って作成されるものである為、不慮の事故などで亡くなってしまった場合はギフトを作成できていないこともある。
その為、誰もがギフトの恩恵を受けるわけではない。
ギフトデイの日に眠りにつくと父や母が夢に出て、『生まれた日の天気』や『どんな人生を歩んで欲しいか』などを伝えてくれるのだ。
あくまでも、夢の中でのみ流れるもの。その為、皆亡き親の言葉を忘れないように朝目覚めたらメモを取る。親の一言を忘れないように、と。
‥まぁ、これはあくまでも俺以外のみんなの話。
『これは日本でいうビデオレターみたいなものなのよ』と一昨年のギフトデイで亡き母は言った。
母の名前はリイサ。俺が3歳の頃に亡くなったらしい。
俺はいま13歳。ハピタ町という小さな町の小さな孤児院にいる孤児だ。
「ねぇリージュ!今年のギフトはなんだった?」
目を輝かせているのは俺と同じ孤児である『レグラ』という女の子。歳は2つ下だけど非常にしっかり者。
「あー‥」
俺は何て言うべきか迷って、小さく苦笑いをする。
「あぁ!リージュ!もしかして今年もメモを取ってないんでしょ?!ギフトはさ、夢なんだから!!メモしないとすぐに忘れちゃうよ!!せっかく貰えたギフトなのに!!」
レグラは頬を膨らませて怒っている。俺は取り繕うようにして声をあげた。
「メ、メモいらなかったんだよ!」
「えぇ?!なんで?」
「だ、だって、『美味しいもの食べたい』って、それしか言ってなかったから!!」
レグラは暫く固まって、それから去年までの俺のギフトを思い出したようだった。何秒かしてからプッと吹き出して笑い出し、お腹を抱えて目尻に浮かんだ涙を拭っていた。よっぽど面白かったらしい。
「ほんっと、リージュのお母さんは面白い人だったんだね。今までもそんなギフトばっかりだったもんね」
「そ、そうなんだよ。うん」
そう言いながら、母を脳裏に浮かべては『ごめん』と謝る。
こう誤魔化すしかない。実は母のギフトは他の人たちの『一言』で終わるようなものと違って、眠りについた時から朝起きるまでビッシリと送られてくるものであり、そのうえ俺にしか見えないステータス画面から毎年のギフトはいつでも見返せるのだと、言えるわけがない。
しかも‥
「また上がってる‥‥」
「え?」
レグラの言葉に「なんでもない」と首を振った。
言えるわけがない。毎年のギフトデイに、魔力の上限が信じられない程に上がるのだと。
つまり母のギフトは、この世界に対する膨大な知識の他、常軌を逸した魔力なのだ。
今年は更に困ったことに、とんでもないカミングアウトがあった。
母は幼い俺を育てるシングルマザーだったのだが、ある日この世界に『聖女』として召喚された『異世界人』だったらしい。
母と共に召喚されてしまった俺もまた『異世界人』。だからステータス画面が見えたり、画面操作をして【いままでのギフト】という画面から今までの母からのギフトを全て読み返すことができるのだ。
とはいえ、俺は小さな町の孤児。
こんな膨大な知識と魔力は持て余してしまうわけで。とりあえずはこのまま平穏な毎日が続くことを願っているのだ。
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