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50話 信用回復

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「おい、何のつもりだ?」


 俺は黒鉄を構えながらそう言う。

 脅しとかそう言う事には無縁な生活を送っていていたし、そこまでの威圧感は出てないはずだが、血まみれの男が刀を構えていると言うだけでもなかなかの迫力がある様で、俺に剣を突き立てた男は顔を強ばらせた。 


「こいつです! こいつが死体を荒らしているやつです!」

「おい、お前何言ってるんだよ!」


 俺に剣を突き立てた男の後ろでさっきのゾンビ男がそう言っていた。

 そうか、今ゾンビは全員俺が倒してしまった。

 だから状況だけ見たらこのゾンビ男が言ってる事が正しいように思えるだろう。


 こいつ、やはりかなりの策士だ。


「分かりました。事情は後で説明します。まずは…………。」


 スっと後ろに下がり、剣をかわした。


「あっ、待て!」


 俺は黒鉄を構え、ゾンビ男…………の後ろへ攻撃した。


「ギャッ。」


 ゴブリンが断末魔の声をあげた。


「なにっ!? ここまで来ていたのか…………。」

「今は人間同士で争っている場合じゃないってことです。事情は後で説明するのでまずはこいつらを倒しましょう。」

「…………分かった。」


 そう言って周りにいたゴブリン共を片付け始めた。

 ここは裏口でこっちの方角にはダンジョンが無いため、モンスターがあまり来ないので、人員がほとんど配置されていなかったようだ。

 そのせいでかなりのモンスターがここまで来てしまっていた。

 このモンスターどもが居たおかげであの剣を突き立てた男の注目をそっちにやることが出来た。

 ここでモンスターを倒せば少しは印象がいいだろう。


 幸いな事に、入口にいる数と比べると雲泥の差があり、俺だけでも全部倒せるレベルの数しかいなかった。


「はっ!」


 少し大袈裟に動いてゴブリンを倒す。

 しっかりと戦っている所を見せておきたいからな。


 そうやってゴブリンを倒して居る時にもあのゾンビ男は俺の事を刺そうとしてくる。

 はぁ、こいつは馬鹿なのか?

 俺が死んだら十中八九お前も死ぬんだぞ?

 あの人が俺無しでここの奴らを全員倒せるとは思えないし、俺が居なくなったらこいつはゴブリンに囲まれて死ぬだろう。


「はぁ。」


 俺はため息をつきながらこいつの顔面を蹴る。

 面倒くさいことに、こいつを殺してしまうとあのおっさんからの印象は最悪になり、それがこのホテル街の人々に広まってしまえば、後々困ったことになる。

 だから今は蹴るくらいにしておいてやる。


「ぐわっ!」


 やべっ! あのおっさんやられてるじゃん!


 俺がゾンビ男の対処をしているうちにおっさんはゴブリンに切られてしまってした。


 俺は今目の前にいるゴブリンの首をサクッと落とし、おっさんの方へ向かう。


「大丈夫ですか!?」

「くっ、もう無理だ! 何とかして逃げて他の奴らに…………コナーに知らせてくれ!」


 おっさんは口から血を吐きながらそう言った。


 俺は間髪入れずにおっさんに回復をかける。


【快治】


「えっ、これは…………。」

「後ろに下がっていてください。あとはやります。ゾンビ男、お前も下がってろ。」


 おっさんに後ろに行ってもらい、動かずに完全に俺に切られる位置にいたゾンビ男を後ろに投げ飛ばし、俺は構えをとる。

 そして、黒鉄に力を…………いや、回復を使っている時の感覚に似ているからこの力は魔力なのだろう。

 俺は黒鉄に魔力を込めた。


「…………。」


 何か決め台詞を言いたいところだが、あいにく俺にはそんなセンスはない。


「…………おらぁっ!」


 俺はとにかく力一杯ゴブリンを切った。


 ドゴォン


 轟音が響き渡る。


 この前ダンジョンで使った時よりも更に規模が大きくなった斬撃により、ゴブリンは殆ど居なくなった。


「すげぇ…………。」


 おっさんはまるでスポーツ選手を見る子供のような目で俺を見た。

 その表情と対照的に、ゾンビ男は苦虫を噛み潰したような表情でこちらを見ている。

 このおっさんに俺に悪意のある行動をさせることは無理だと悟ったのだろう。


「少年。ありがとう。というかさっきの技はなんだい!? とんでもない威力じゃないか!! って、さっきは済まない。いきなり剣を突き立てたりしてしまって。きっと何か事情があって死体を切っていたのだろう?」

「いや…………それは…………。」


 俺は少しコミュ障を発動させながらも、あのゾンビ男が元凶だと言うことを伝えようとする。

 しかし、その言葉は遮られてしまった。


「大丈夫か!? 何があった!?」


 そこに来たのは佐々木…………さんだっけか。とにかくあの地獄絵図を見せてくれた人だった。

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