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208話 復讐
しおりを挟む「普通想いの力って言うのは微弱で一人一人の力じゃ何も起こらない。特にこっちの世界だとそれは顕著でね、ちょっとやそっとの夢力じゃ何も起こらない。けど、君も知ってるんじゃないかな? 応援のお陰で力が湧きました、みんなの応援のお陰で勝てましたって言うスポーツ選手。あれも全て夢力による物なんだ。」
「そうなのか…………!?」
さっきはモルフィスの一般常識が崩れ去ったが、今度は俺の一般常識が崩れ去った。
確かに応援があればそういう事が起きると言うことは聞いたことがあった。
しかし、それは精神的なものとばかり思っていたが、本当にそんな摩訶不思議な事が起こっていたなんて思いもしなかった。
今この魔法や超常現象が有り触れた世界だから今程度の衝撃ですんだし、受け入れることも出来たが、その前なら確実に今以上の衝撃を受けるか、まず信じる事すら出来ていなかっただろう。
だが、それが何なのか分からない。
俺は不審がりながらも、これが時間稼ぎなのかと思いすぐさま階段を登ろうとする。
「まぁ、待ちなよ。」
そう言った瞬間階段の先が何かで塞がれる。
「君達はなんで僕がそんな事話してるか分からないって顔をしてるけど…………今僕がやろうとしてることに大いに関係してるんだよ。」
「…………どういう事だ。」
「君は僕たち現人神がなんで全員国を持っていたか、知っているかい?」
確かにそのことはずっと疑問だった。
別に国を持たなくとも生きていけそうなのに誰もそんな事はしなかった。
7人いて1人もだ。
確かに偶然と言えば偶然なのだろうが、少々不自然さはある。
「あは、君のその顔は分かってないみたいだね、うん。答えはね、想いの力を効率良く集めるため、つまり自分の強化の為さ。」
「…………だから崇めさせていたって訳か。」
確かに祈りの内容は現人神への応援というか、更なる発展をとかそういった様なものだった。
それを国民全体にやらせる事によって力を得ていたという訳か…………。
「この世界は本当に人が溢れるほどいる。かなりの数が死んだとしても余る程の人の数だからね、ちょっと手荒な真似はさせてもらったけど、みんな今は従順に寝る間も惜しんで祈ってくれてるよ。」
寝る間も惜しんで…………。
俺は日本にいた時に居た救世主を崇めているカルト集団を思い出した。
あの集団は明らかにおかしくなっていた。
多分こいつらによって洗脳か何かをさせられてああなってしまったのだろう。
「お陰で物凄い量の魔力が集まったよ…………けど、まだ足りない。」
俺はこいつが話している間に俺は階段を塞いでいたものを破壊した。
そうして上にでると、衝撃的な光景が広がっていた。
そこは驚く程広大な機械の部屋になっていて、真ん中にあの液体を大きくしたようなものが置いてある。
そこに教会のみんなの体が浮かんでいた。
その下のところで金髪男が今の教会のみんなの体。
そして、ゆうちゃんの身体を持っていた。
「お前、何する気だ!?」
「あは、何って、君の大切な人を生贄にして、この装置を完成させて、君を倒す為の最終兵器を作るのさ!」
「っ!?」
おれの大切な人を生贄にするだと!?
確かに、あの人達は今の教会のみんなの体だ。
その体になるためにはダンジョンを踏破する程度の力は持っていなくてはいけない。
それに、ゆうちゃんには俺の力を分け与えているため、普通の人間よりも遥かに強いはずだ。
だからこそ、それを生贄にすれば強い力を獲得出来るはずだ。
だが、そんな事はさせない。
俺は刀を使って金髪男に飛びかかろうとする。
が、金髪男は全ての力を使って俺を足止めしようとしているのか、体が動かない。
「あはははは、いい気味だよ、僕の大切な人を君は殺したんだ、同じ目を合わせなきゃね。」
「ぐぅっ、やめろ!」
俺は体にかかる重さを振り切って金髪男に近ずいて金髪男を切り裂く。
金髪男は体から血を流しながらも、何か機械を操作している。
「本当は…………もっと早くに終わらせてしまえば良かったんだけど…………君にもっと苦しんで欲しいからね。」
俺は更に金髪男を切り裂く。
身体中はもうボロボロで動きも悪くなってきている。
それでも金髪男は動く。
「あは、いい顔、その顔を見れただけでも満足だよ。」
金髪男は苦痛に顔を歪めながらも満面の笑みを浮かべる。
そして、磔にされたゆうちゃんと教会のみんなをサイコキネシスを使って動かす。
「だめだ、そんな事はだめだ! やめろ! もうみんなと会えなくなってしまう!」
「…………これは、君の罪が成した結果だよ、存分に償いなよ。」
金髪男はそう言って地面に倒れ伏す。
俺はその金髪男に何度も何度も刀を落とす。
金髪男の体には穴が空いているが、それでもサイコキネシスの力は残っていた。
まずい、このままではみんなが…………!
俺も念動力を使い対抗するが、俺程度の力では邪魔をする事さえ出来なかった。
「あは、復讐、かん、りょ…………。」
金髪男はそう言うと指先をピンッと動かした。
その瞬間、磔にされていたみんなが部屋の真ん中に流れている液体の中に入る。
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