《完結》初夜に異世界へ飛ばされた二人は、囚人と牢番になっていた。

ぜらちん黒糖

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④ロミン王太子妃の影

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牢番の詰め所で休憩をしていたギブソン。そこへ同僚が休憩しに来た。

「ギブソン、アンジェリカ様はどうだい?調子は」
「ん?別に変わりはないな」
「そうか」
「ところで、クリス。アンジェリカの判決はいつになるんだろうな。遅いと思わないか?」

クリスが笑みを浮かべて返事をした。
「これは噂なんだが、判決を引き延ばしているのはロミン様の指図らしい」

ギブソンが意外そうに答える。
「ロミン様はアンジェリカに殺されかけたから早く処罰をしてほしいと思っていたんだがな。違ったんだな」

「ギブソン。お前は本当に表面しか見ない奴だな」

「おいおい、これにも裏があるっていうのか?鏡みたいに」

「我が国の場合、判決が出た日が処刑執行日になる。アンジェリカ様の処刑は既成事実だろ?本人もそう思っているはずだ」
「……」

「処刑されると分かっていて一日一日を過ごしていかなければいけないんだ。これは精神的にきついぞ?」

「おい、それじゃあ、ロミン様がアンジェリカに意地悪をしているみたいじゃないか」

クリスはその言葉に驚いたように返事をした。
「お前なぁ、ロミン様を天使だと思っているのか?あのお方も普通の人間なんだ」

「だから?」
「じわりじわりとアンジェリカ様を追い込んで、復讐をしているんだよ」

「まさか…」
「まぁ信じるか信じないかはお前の勝手だけどな」

そういうとクリスは席を立ち休憩室を出ていった。

残されたギブソンは神妙になる。
「本当に、あのアンジェリカがロミン様を毒殺しようとしたんだろうか……」

ギブソンも立ち上がって厨房へ向かった。アンジェリカの晩ごはんを届けるために。



エリザベスが健康のために柔軟体操をしていると、鉄格子の外から声がかかる。

「おい、晩ごはんだ」

アンジェリカが柔軟体操をやめて振り向いた。

「あ、晩ごはん。待ってたのよ」

アンジェリカがトレーを見るとパンと水の他にりんごと牛乳が乗っていた。

「……これって最期の晩餐なの?」

「え?なんでそう思うんだ?」

「だって、りんごと牛乳があるじゃない。明日処刑だから贅沢になってるんじゃないの?」

慌てて否定するギブソン。
「栄養不足になるとお前が言っていたから……足してやったんだよ」

アンジェリカは嬉しそうに微笑んだ。「ありがとう、ギブソン」

「あ、ああ」

アンジェリカの笑顔にギブソンの頭の片隅にある、何かが動き始めた。



    
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