《完結》初夜に異世界へ飛ばされた二人は、囚人と牢番になっていた。

ぜらちん黒糖

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⑨ロミンの歪んだ微笑み

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ロミンがクリスに声をかける。
「あなた、今のは見なかったことにしてあげるわ」

そして優しく寂しそうな声でダイズとクリスに話しかける。
「私とアンジェリカの二人にしてくれませんか?お二人共席を外して下さい」

「しかしロミン様」ダイズが異議を唱えようとしたがロミンが口を挟む。

「お願いダイズ」じっと見つめるロミンから目を逸らし耳を赤らめるダイズが諦めた。

「わかりました。では私とクリスは通路の扉を閉めてそこでお待ちしております。おい、クリス、いくぞ」
「……」
クリスはこの期に及んでもまだ鍵穴に鍵を差し込んだままだった。叱責するダイズ。
「クリス!鍵を抜き取れ!」
「……」
「クリス!」
頑なに言うことを聞かないクリスに業を煮やしダイズがクリスの手を払い除け鍵を抜き取った。
「行くぞ、クリス」
クリスはアンジェリカの前で深々とお辞儀をしてダイズと共に出ていった。

二人が立ち去り、通路の先で扉の閉まる音がした。

「これでやっと二人で話せるわね、アンジェリカ」ロミンが微笑む。

アンジェリカはロミンを睨みつけて言い放った。

「私はあなたに毒なんて飲ませていないわ」

しかし、ロミンの返事は驚きの言葉で、アンジェリカは絶句する。

「知っているわよ、そんなこと」
「……」

震える声でやっと絞り出すアンジェリカ。
「な、なんですって……じゃあ早く出してよ私を!」

「駄目よ、それは」

「どうして……」

「どうして?あなたが夫を誘惑したからよ」

「王太子様を?私はしていないわ。一度も誘惑なんてしたことがない」

「そう、あなたはね」

ロミンが口角を歪めて呟く。
「あなたが夫の前をうろつくだけでイラつくのよ。夫の目にあなたが入ると、彼の視線がアンジェリカ、あなたを追うのよ」

唖然とするアンジェリカ。
「え?それは私は悪くないんじゃないの?私は何もしていないじゃないの」

「ふん。さっさと結婚してくれればいいのに、いつまでも独身で男たちに色気を振りまいて、目ざわりなのよあなたは」

「……まさか、嫉妬で、私にこんなことを?」

「そうよ。高等部の頃からずっとあなたには嫌な思いをさせられてきたわ」

「でもあなたは王太子様と結婚できたじゃない」

「ははん、そんなもの。私が公爵令嬢だったから結婚できただけよ。政略結婚よ」

「でも私は毒殺なんてしてない。それとこれとは話が違うでしょ?ねぇ、助けてよロミン」

ロミンがすまなさそうな顔をした。
「ごめんなさい。もう遅いの」

「どこが?全然遅くないわ」

ロミンが口を両手で押さえて笑いを堪えるように言った。

「だって本当の犯人はもう死んでいるから……どうあがいても遅いのよ」

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