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第一章
⑤クレバ先輩
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クレバはヒナシスを恨んでいた。中等部を卒業した後の就職先を、ヒナシスに紹介してやったのに勝手に店に断りを入れて、クレバの面目を潰した上、クレバが店から受け取っていた紹介料金貨10枚+迷惑料金貨10枚を支払わされていたのだ。
店にはすぐに金貨10枚は返したのだが迷惑料の金貨10枚を支払うのを拒否したら事務所に連れて行かれてボコボコにされたのだ。
それなのに結局許してもらえず、3年間ただ同然にその店でこき使われてやっとヒナシスのドタキャン問題は終わった。
しかしクレバは意外に几帳面で、店の管理から帳簿の管理まで、細かいことが得意だったので、上の者から重宝されているうちに店長にまで上り詰めてしまった。
そんなある日、クレバはヒナシスと出会ってしまう。
店のことを考えながら、今日のシフトにメアリーは入っていたっけ?などと思案を巡らせていたら、一人の女性とすれ違う。
思わず振り返ってその女を見てみた。
顔ははっきりとは見なかったが後ろ姿は文句ない。
「なかなかいい女だ」
じっと見ているとその女が横を向いた。
クレバは呆然となった。
歩道の真ん中で立ち止まりじっとその女を見つめた。
「あの……顔は……ヒナシス?」
「ヒナシス・グディンネ!」
「あの野郎!見つけたぞ!」
クレバはそのままヒナシスの跡をつけた。
バルガンスとヒナシスは25歳で結婚した。ヒナシスは 寿退職をして専業主婦となった。
仕事から帰ったバルガンスにヒナシスが言った。
「ねえ、バル」
「なに?」
ヒナシスの表情が暗かったのですぐに聞いた。
「どうかしたの?」
困ったような、不安そうな、何とも複雑な表情になって、
「私、誰かに狙われているかもしれない……」
「本当に?気のせいとかじゃなくて?」
「うん」
ヒナシスが軽くバルガンスにしがみついた。
「いつも誰かに見られている気がするの」
バルガンスは言った。
「分かった。僕も気をつけておくからヒナも気をつけてね?」
「うん」
「なんなら引っ越してもいいんだよ?」
「えー、面倒臭い」
「あ、そう」
苦笑いしながら、そんなヒナシスも可愛いと思うバルガンスだった。
夜、トイレに起きて部屋に戻る前にキッチンで水を飲むバルガンス。
ヒナシスを守るためなら、悪魔にでもなるという気持ちがバルガンスにはある。
バルガンスの雰囲気が変わった。
キッチンの室内がヒンヤリとして空気が重く冷たくなる。
〘 どこのどいつだ? 〙
〘 僕のヒナに手を出そうとしている奴は? 〙
〘 ヒナに指一本でも触れたら 〙
〘 許さないからな 〙
バルガンスが物思いにふける。
そういえば人間界に来てからまだ一度もクロちゃんの姿を見ていないことに気づく。
四六時中ヒナの傍にいて守るわけにもいかないし……傍にいられない時だけでもクロちゃんに守ってもらいたいのだが……駄目なのかな?
まあ、駄目で元々、頼んでみるか……
(僕のいない間、ヒナを守ってくれないか?……クロちゃん?)
シーンとするキッチン。
うーん、駄目か……
クロちゃんも魔物であるから、何か対価が必要なのかもしれんな……
クロちゃんの欲しがる物は……確か人間の男性の……体臭を吸い込むことだった……か?
うーん、誰をクロちゃんの生贄に差し出すか……
バルガンスが決心をしてもう一度クロちゃんに呼びかける。
(クロちゃん、ヒナを守ってくれたら……ニコラス主任の体臭を一日だけ吸って良いぞ?)
静まり返るキッチン……
駄目か……そう思った時どこからともなく声が聞こえた。
「承知しました」
店にはすぐに金貨10枚は返したのだが迷惑料の金貨10枚を支払うのを拒否したら事務所に連れて行かれてボコボコにされたのだ。
それなのに結局許してもらえず、3年間ただ同然にその店でこき使われてやっとヒナシスのドタキャン問題は終わった。
しかしクレバは意外に几帳面で、店の管理から帳簿の管理まで、細かいことが得意だったので、上の者から重宝されているうちに店長にまで上り詰めてしまった。
そんなある日、クレバはヒナシスと出会ってしまう。
店のことを考えながら、今日のシフトにメアリーは入っていたっけ?などと思案を巡らせていたら、一人の女性とすれ違う。
思わず振り返ってその女を見てみた。
顔ははっきりとは見なかったが後ろ姿は文句ない。
「なかなかいい女だ」
じっと見ているとその女が横を向いた。
クレバは呆然となった。
歩道の真ん中で立ち止まりじっとその女を見つめた。
「あの……顔は……ヒナシス?」
「ヒナシス・グディンネ!」
「あの野郎!見つけたぞ!」
クレバはそのままヒナシスの跡をつけた。
バルガンスとヒナシスは25歳で結婚した。ヒナシスは 寿退職をして専業主婦となった。
仕事から帰ったバルガンスにヒナシスが言った。
「ねえ、バル」
「なに?」
ヒナシスの表情が暗かったのですぐに聞いた。
「どうかしたの?」
困ったような、不安そうな、何とも複雑な表情になって、
「私、誰かに狙われているかもしれない……」
「本当に?気のせいとかじゃなくて?」
「うん」
ヒナシスが軽くバルガンスにしがみついた。
「いつも誰かに見られている気がするの」
バルガンスは言った。
「分かった。僕も気をつけておくからヒナも気をつけてね?」
「うん」
「なんなら引っ越してもいいんだよ?」
「えー、面倒臭い」
「あ、そう」
苦笑いしながら、そんなヒナシスも可愛いと思うバルガンスだった。
夜、トイレに起きて部屋に戻る前にキッチンで水を飲むバルガンス。
ヒナシスを守るためなら、悪魔にでもなるという気持ちがバルガンスにはある。
バルガンスの雰囲気が変わった。
キッチンの室内がヒンヤリとして空気が重く冷たくなる。
〘 どこのどいつだ? 〙
〘 僕のヒナに手を出そうとしている奴は? 〙
〘 ヒナに指一本でも触れたら 〙
〘 許さないからな 〙
バルガンスが物思いにふける。
そういえば人間界に来てからまだ一度もクロちゃんの姿を見ていないことに気づく。
四六時中ヒナの傍にいて守るわけにもいかないし……傍にいられない時だけでもクロちゃんに守ってもらいたいのだが……駄目なのかな?
まあ、駄目で元々、頼んでみるか……
(僕のいない間、ヒナを守ってくれないか?……クロちゃん?)
シーンとするキッチン。
うーん、駄目か……
クロちゃんも魔物であるから、何か対価が必要なのかもしれんな……
クロちゃんの欲しがる物は……確か人間の男性の……体臭を吸い込むことだった……か?
うーん、誰をクロちゃんの生贄に差し出すか……
バルガンスが決心をしてもう一度クロちゃんに呼びかける。
(クロちゃん、ヒナを守ってくれたら……ニコラス主任の体臭を一日だけ吸って良いぞ?)
静まり返るキッチン……
駄目か……そう思った時どこからともなく声が聞こえた。
「承知しました」
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