《完結》恋した天使は一途でございます。

ぜらちん黒糖

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第一章

④初めての嫉妬、そして……

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バルガンスとヒナシスはヒナシスの希望通りに大学部に入学、そして就職へと進んだ。

二人は王立図書館に就職することが出来た。王立図書館は欠員が出た時しか募集をしないのでいつも競争が激しくなる。今回は欠員が2名だけだったが見事バルガンスとヒナシスが合格した。

新人のヒナシスとバルガンスの仕事は、まずは簡単なものだった。

ヒナシスは閲覧請求の受付を任されていた。バルガンスは本棚の整理である。

ある日、先輩のアクリバスがバルガンスに声をかけてきた。

「バルガンス、ちょっといいか?」

「はい。何でしょうか?」

「バルガンスはヒナシスと付き合っているのか?」

なぜそんな事を聞くのかと少しびっくりしたが、はっきりと答えた。

「僕はそのつもりですけど?」

「おかしいなあ。ヒナシスに付き合っている人はいるの?って聞いたら、いませんって言っていたぞ?」

「そんなはずは……」

バルガンスは言葉をつまらせた。

ヒナに好きな男のタイプを聞いて『バルガンスに決まっているじゃない』と言われたのは高等部へ入学して間もない頃だったし、その後、今まで一度もそんな話はしていなかった。

アクリバスが「付き合っていると思っているのは勝手な思い込みかもしれんぞ」と言ってさらに言葉を続ける。

「今度、確かめた方がいいかも知れない。いらぬおせっかいだとは思ったがヒナシスを狙っている男はかなりの数でいるから。それだけだ。じゃあな」

アクリバス先輩はバルガンスの肩をポンと軽く叩いて立ち去っていった。

ヒナが男性職員の間で恋愛の標的になっているのは知ってはいたが……もう油断出来ない状況になっていたと言うことか……

右手を胸のところにあて、服を掴むようにそっと握って名前を口にするバルガンス。

「ヒナシス……」


王立図書館の門のところでヒナシスが出て来るのを待っているバルガンス。

「あ、ヒナ……」

ヒナシスが見えたので、声をかけようとしたができなかった。

ヒナシスが先輩のビッグスと一緒に出てきたからだ。

思わず隠れてしまったバルガンスは、どうしようか迷ったが二人の後をつけることにした。

二人は楽しそうに話しながら歩いていた。

「なんだか、いい雰囲気だな」

少しバルガンスの胸がざわつく。

二人は王立図書館を出ると繁華街の方へ歩いていく。

大衆酒場の店の前で立ち止まる二人。店に入って行くときのビッグスの顔を見るとニヤついていた。

あのニヤついた顔を見て、いつの間にかバルガンスは唇を噛んでいた。

バルガンスは結局二人の後をつけるのはそこまでにして家に帰った。

あの後、二人がどうなったのか気にはなるが、いずれ機会があればビッグスに聞いてみようと思った。

翌日、仕事の合間に休憩室でコーヒーを飲んでいたバルガンス。そこへ、ビッグス先輩もコーヒーを飲みに現れた。バルガンスに気がつき、コーヒーを入れたあと、コーヒーカップを手にして隣の席に座る。

「やあ、バルガンス、仕事は捗ってるか?本棚の整理も大変だろう?古文書も置いてあるし」

「ええ、まあ……」

「なになに?なんだか冴えない顔してるね」

先輩のせいだと言いたいのをぐっと我慢して、昨日の事をさり気なく聞いてみた。

「あ、そう言えば昨日、先輩、ヒナシスさんと一緒に歩いてましたけど、食事にでも行かれたのですか?」

「あ、見てたのか、お前。ふふ、でも俺たちに声をかけなかったんだな、ありがとう」

「え」動揺するバルガンス。

「俺、もうすぐ結婚を申し込むつもりなんだ」

思わず椅子ごとのけぞるバルガンス。その様子を見て慌てて訂正するビッグス先輩。

「あ、違うぞ。ヒナシスじゃない。俺の相手は……ルイスだ」

(あー、ヒナシスの隣の席の……)

「ヒナシスにご飯を奢ってルイスの情報を色々教えてもらおうと思ったんだ」

「そうだったんですか」とホッとするバルガンス。

「でも食事を奢り損になった」

「え?どうして……」

「ヒナシス、なーんにも教えてくれなかった」

「……」

「そんなに好きなら本人に直接聞いてくださいだってさ」

「あはは」(ヒナシスらしい)

先輩は立ち上がって、「さてと、仕事に戻るか、お前も早く戻れよ、館長に見つかるとどやされるぞ」

そう言って休憩室から出ていった。

バルガンスも立ち上がってそのまま休憩室を出た。

バルガンスはもう一つ気になることがあった。あのビッグスのニヤついた顔を見た時の自分の感情は何だったのか。

胸がざわつき締め付けられるような感覚……これは、嫉妬か?

「ふふふ、この僕が人間に嫉妬をしたのか……」

昼休み、ヒナシスが近くにいるときに先輩のシュリーに声をかけられた。

「ねえ、バルガンス。今日、仕事が終わったら、一緒に食事に行かない?」

バルガンスは全神経をヒナシスに向けて返事をした。

「いいですよ」

「ありがとう。じゃあ、仕事が終わったら一緒に帰りましょ」

「はい」

バルガンスはヒナシスを見たが普通に隣の女性職員ルイスと話しをしていた。

今のシュリーとの会話は聞こえていたはずなのに……ヒナシスは振り返りもしなかった。

終業時間が近づいてきてバルガンスが帰り支度を始めようとしたとき、目の前にヒナシスが立っていた。

「ねえ、バル」

「何?」

「シュリー先輩と食事に行くの?」

「ああ」

「ふーん」

「彼女の事どう思っているの?」

「えー?」

「ねえ」

ヒナシスがヤキモチを焼いてくれていると感じたバルガンスだったが、でも食事の約束を今更断ることもできない。

「そうだ、ヒナも一緒に行かないか?」

「え?」

「行こうよ、ヒナ」

「うん……でもさすがにそれはお邪魔虫でしょ、私?」

「そんなことないよ。一緒に行こうよ」

「うーん、わかった。でもシュリー先輩が嫌そうにしたらやめるからね?」

そういってヒナシスが自分の荷物を取りに戻っている間に、バルガンスは天使の力を、仕方なく使うことにした。

バルガンスは主任のニコラスに思念を送る。

今日中に閲覧室の本棚の整理をするように……シュリーといっしょにやりなさいと。

しばらくしてシュリー先輩がやってきた。

「ごめーん、バルガンス。私、残業しないといけなくなって。ごめんね、食事行けなくなっちゃった」

「いえ、気にしないで下さい」

ヒナシスが近寄ってくる。

「どうかしたの?」

「彼女、急な残業だってさ」

「じゃあ、食事、どうする?」

「行こうよ。僕、ヒナと行きたい」

「バル」

「ね?行こう」

「うん」

その日、バルガンスはヒナシスと食事をして自宅まで送り届けた。

「バル、上がって行く?」

「いいの?」

「もちろん」

「じゃあ少しだけね」

バルガンスが部屋に上がるのは、引っ越しの手伝いをしたとき以来だった。

ソファで寛いでいるとヒナシスが普段着に着替えてソファに座る。

「ねえヒナ……ヒナは結婚はしないの?」

と、ヒナシスの気持ちを確かめずにはいられないバルガンスが質問した。

「え?」

「あの、ヒナは好きな人はいるの?」

「いるよ」

追求するバルガンス。

「それは誰?」

「バルはいるの?」

「え?」

逆質問にバルガンスは少し焦る。

「ねえ、バルはいるの?」

重ねて質問するヒナシスに、この展開はチャンスだと思ったバルガンスは、はっきりと答える。

「いるよ」

「ふーん、誰?」

「昨日、ビッグス先輩と食事に行ったでしょ?」

「え?それが何?」

「ヒナ、僕、駄目なんだ」

「なにが?」

「ヒナが他の男と一緒にいるだけで胸が苦しくなるんだ」

「……」

「もう、この際だから言わせてもらうよ」

ヒナシスは黙ったままバルガンスの顔を見つめる。バルガンスは目を逸らさずにヒナシスを見て、

「僕はヒナが好きだ!愛してる!結婚したいと思っている」

一気に告白するとバルガンスはヒナシスに向き直り、

「必ず幸せにすると誓う。だから僕と……結婚してほしい」

ヒナシスは顔を赤らめ返事をした。

「バル、ありがとう」

「ヒナ……僕の気持ちを受け入れてくれるんだね?」

「もちろん。だって私の好きな人はバルだもの」

そして二人は一夜を共にし、結ばれた。



    
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