《完結》恋した天使は一途でございます。

ぜらちん黒糖

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第一章

⑦お仕置き

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 クレバは目が覚めると背もたれ椅子に縛りつけられていた。

「ここは……どこだ?」

血相を変えて怒鳴るクレバ。

「おい誰だ!こんなふざけた真似をする奴は!出てこい!」

 クレバの目の前の床に、ぽっかりと穴が開いた。
 
何やら黒い塊が盛り上がってきて……続いて頭が、顔が……あ、 コイツは、ヒナシスと一緒にいた男だ。

まずい!

これはまずい!とクレバの本能が言っていた。

完全に地上に出たバルガンスは、クレバを見つめたまま尋ねた。

「クレバさん、お久しぶり」

「なあ、おい、い、いや君」

「僕、言いましたよね?」

「……」

「ふふふ、あれ?忘れたのかな?」

「何のことを言ってる?」

バルガンスの表情が一変した。空気が冷たくなり、ピリピリと皮膚を刺激した。

「俺は言ったよな?」

「……」

「お前が前回ヒナシスを連れ去ろうとした時に、俺は言ったよな?」

この雰囲気はヤクザやチンピラのようなヤバさじゃない。

これは人間の領域を超えている。

クレバは恐怖で声も出せなかった。

「俺はこう言ったんだ」

「ヒナシスには俺がついている。今度やったらその頭を握り潰してやるぞ……そう言ったんだがな」

バルガンスの体が段々と大きくなり鱗状の模様が浮き出て、顔は悪魔へと変身していった。

吐く息は白く手の指から鋭い爪が伸びていた。

人差し指の鋭い爪でクレバの頬を軽く引っ掻いた。

引っ掻いたところから血がにじみ出て、顎に伝わってクレバのズボンの上に落ちていった。

「お前はヒナシスをどうするつもりだったんだ?」

「お前は自分の服を脱ごうとしていた」

「お、俺は……ヒナシスを」

「待て」

「え?」

「もういい。お前は殺すことにした。だから言わなくてもいい」

「頼む……殺さないでくれ。頼む」

絶望の表情でバルガンスに必死で訴えるクレバ。

「頼むから!お願いだから……」

「お前は今までそうやって、懇願した人間を許したことがあるのか?」

「そ……れは……その」

「いいだろう。これで最後だ。もう一度やったら次はお前を殺す」

「あ、ありがとうございます」

クレバは泣いていた。

「だが、担保はもらうぞ」

「担保?」

「ああ、お前が約束を破らないように」

バルガンスは右手をクレバの胸に突き刺した。

「「「ぐっわ!」」」

あまりの激痛で声を出すクレバ。

バルガンスは右手をゆっくりと引き抜いた。

右手にはクレバの心臓が握られていた。自分の心臓がバルガンスの右手にあるのを見て、

「ああああ!殺さないって言ったじゃないですかーーーー!」

涙をポロポロと流すクレバにバルガンスは言った。

「お前、死んでないだろう?」

「へ?」

「お前が約束を破ったら、お前の心臓を握りつぶすぞ」

そして少し軽く力を入れてクレバの心臓を握るバルガンス。

「「「はうっ!」」」

必死に訴えるクレバ。

「絶対に!約束は守りますから!助けてください……」

意識を失うクレバ。


コンコン コンコン コンコン

クレバはドアをノックする音で目を覚ます。

急いでドアを開けるクレバに、ノックをしていた従業員がほっとした顔で、

「まもなくサービスタイムが終わります。宿泊に変更されますか?」

「……いや、もう帰る」

「それではお会計の方をお願いします」

「わかった」

クレバは支払いを済ますと馬車を呼んでもらって帰っていった。

翌日、クレバは店を経営している組事務所に顔を出し、店を辞めたいと申し出ると、袋叩きにあってそのまま外に放り出される。

組長は、ぐったりと地面にうずくまるクレバに言った。

「今までご苦労さん。元気でな」

そういうと事務所に戻っていった。

しばらくして、クレバは立ち上がり、よろよろと歩いて姿を消した。


クレバはその後、なぜか警備隊の入隊試験を受け始め、5回目の入隊試験で合格した。

ある日、隊長の家に他の隊員たちと一緒に招かれて伺ったときに、隊長の娘さんに懐かれ、それがきっかけで付き合い始め、恋をして娘さんと結婚。入り婿となる。

その後、女の子三人の父親になった。

 
クレバのお仕置きがあった翌日、主任のニコラスから加齢臭が消えた。

女性職員が嬉しそうにしていたが、ニコラスから加齢臭が消え去ったのはその日だけだった……
    
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