《完結》恋した天使は一途でございます。

ぜらちん黒糖

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第二章

⑧夜会への招待状

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王立図書館で働くバルガンスは28歳になっていた。

最初は本の整理がメインだったが今では古文書の解明、解読がメインの仕事になりつつあった。

仕事も楽しく家に帰れば愛するヒナシスが傍にいる。

幸せな人生を送っていた。

ある日一通の手紙がバルガンス宛に送られてきた。

差出人はフローラ・ドーン……

ヒナシスが問いかける。

「誰?フローラ・ドーンって」

フローラに心当たりはあったが、人間界には知り合いなど誰もいないはずなのだがとバルガンスは訝しみながら手紙の封を切る。

「さあ、誰だろう?わからないな」

手紙を恐る恐る読んでみる。




バルガンス・ゴッド様

この手紙が到着して10日後、我が屋敷で夜会が開催されます。

いかがでしょう。バルガンス御夫妻も夜会に参加をしてみませんか?

もし参加をされるご意思がある場合は同封しました打ち上げ花火を今日中に打ち上げてください。

会えることを楽しみにしております。


フローラ・ドーン公爵令嬢




「なんだこれ」

バルガンスが興味もなく、手紙をヒナシスに見せた。

しかし、暇を持て余していたヒナシスはこの手紙に興味を持つ。

ヒナシスが封筒をよく調べると細長い筒の花火が入っていた。

ヒナシスが手に取り、

「こんな小さな花火を打ち上げても誰にも見えないんじゃない?」

そういってバルガンスに見せた。

その花火を見てギョッとするバルガンス。

(その花火は……天界の花火じゃないか!)

「ヒナシス」

「ん?」バルガンスの真剣な顔を見て動揺するヒナシス。

「どうしたの?」

「そのまま……ゆっくりと……その花火を僕に渡してくれ」

「大袈裟ね、もう、はい」

ヒナシスから受け取ると花火をそっとテーブルに置いた。

その様子を見て笑いながらバルガンスに尋ねる。

「バルは行くの?夜会」

「いや……行かない」

「どうして?」

「どうしても」

「そう……」

夕食も終わりバルガンスはソファに座ってお茶を飲んでいた。

あの手紙は無視しようと思っていた。もし本当にさっきの花火が天界のもので、差出人があのフローラ様なら余計に行かないほうが身のためであると……そう考えて……ふと回りを見渡すと……ヒナシスがいない。

「あれ?ヒナ?」

胸騒ぎがした。窓から外を見るとヒナシスが庭でしゃがんでいた。

「まさか!」

テーブルの上の手紙と花火を見てみる。

手紙はあるが……花火がなかった。

「不味い!」

慌てて庭へ出たが遅かった。

一瞬ヒナシスの顔が明るくなったかと思うと、「ヒュン!」と鋭い音がして夜空に大きな花火が打ち上がった。

「すごーい」

思わず尻もちをついて夜空を見上げているヒナシス。

夜空にパチパチと広がる流れ星のような花火が、大きな線香花火のように見えてどこか淋しく感じられた。

「まるでいまの僕の気持ちを表しているようだな……」

ヒナシスが笑顔でバルガンスを見た。

「ごめーん、でもいやなら断ればいいでしょ?」

「いや、行くよ」

「ほんと?」

「ああ」

バルガンスは心の中で呟いた。

(花火を打ち上げて行くと返事したからにはいかなくちゃ……)

(今更フローラ様にお断りはできません。だってフローラ様は女神様なんだから……)

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