9 / 13
第二章
⑨神様と女神
しおりを挟む
天界
神様の目の前に突如女神フローラが現れた。
「うわあ!」
神様がびっくりして尻もちをつく。
「なによ、大袈裟な」
「誰でもびっくりするわ!」
「ねえ、それよりも、もう知っているんでしょ?私が天使ちゃんを夜会に招いたこと?」
神様はこの無礼な女神があまり好きではなかったが……好きだった。
神様が女神にソファへ座るように手を指し示す。
ソファに座った神様と女神。
「ああ、知っておるよ……だが女神よ、なぜ幸せに暮らしているあの子に余計なことをするんだ?」
「ま!余計なことですって?」
女神はテーブルの上をじろりと見て、
「お茶も出ないの?」
「チッ」と舌打ちをして指をパチンと鳴らすと目の前に湯呑みちゃんが現れ、湯気の立つ温かなお茶が置かれていた。
「うわー、ほんとにお茶が出てきた、凄~い」
その言葉に少し気を良くした神様。
「ふふふ」と自慢気に微笑む。
「だけど……どうせならコーヒーの方が良かったかな~」
「グッ……」と堪えて女神に尋ねる。
「バルガンスは今ようやく好きな人と結ばれ幸せに暮らしておるのだ、なぜそっとしておいてやらんのだ?」
「私も……あなたと同様、あの子が可愛いのです。ですが……あの子の連れ添いはなんとなく気に入りません」
神様が少し慌てる。
「おいおい、フローラちゃん、彼女に焼き餅を焼いているんじゃないだろうな?」
「はあ?私が人間の小娘に焼き餅ですって?はあ?」
少し動揺している女神を可愛らしいと思いながら神様が呟く。
「そういえばあの子は女神にまとわりついて離れなかった時があったな」
女神は思い出すように話す。
「ええ、それは可愛らしい天使でした」
女神が微笑む。神様はその笑顔にドキリと胸が高鳴る。
女神が口を開く。
「あの子はもう私にベタ惚れで……女神様、女神様って後をついてきて……『私は女神様と結婚したいです』なんてよくプロポーズされましたわ、オホホホ……」
神様が口を挟む。
「それは100年前の話であろう?」
「うるさい」
「そんな話はどうでもよい。目的を言え、フローラ」
女神はお茶を飲んで一言。
「あら、美味しい…このお茶」
お茶を褒められ一瞬嬉しそうにする神様だったが、女神の一言でまた表情が険しくなる。
「美味しいけど……コーヒーのほうがよかったかな~」
神様が「パチン!」と指を鳴らすと女神の手には湯のみ茶碗ではなくコヒーカップがあった。
「あら、凄い」
コーヒーを一口飲んでホッとする女神。
「ありがとう、コーヒーに変えてくれて」
微笑む女神にニヤつくのを我慢する神様。
「それでフローラ、目的は何なんだ?」
コーヒーカップをテーブルに置いて女神がゆっくりと話し出す。
「試練を与えてみようかなと思って夜会に招待しました」
「し……試練だって?おい女神よ、バルガンスは愛する人と結ばれるまでにどれほど心を乱したことか……まだバルガンスを悩ませるつもりなのか?」
女神が微笑む。
「私が試練を与えるのは……ヒナシスの方です」
「え?」
「彼女は、天使ちゃんの愛を当たり前のように思っております。天使ちゃんが自分を大切するのが当たり前、優しくするのが当たり前、そして自分を愛するのが当たり前になっています」
神様が女神フローラを見つめる。構わず女神は話し続ける。
「彼女は本当に天使ちゃんを愛しているのかしら?ただ便利だから一緒にいるだけなんじゃないのかしら?」
女神は立ち上がり神様を見下ろし、
「今度の夜会で彼女の愛が本物か確かめさせてもらいますわ」
そういうと女神の姿が消えた。
「スーハースーハー」
女神の残り香を嗅ぐ神様。
はっとして匂いを嗅ぐのを止める神様。
バルガンスがヒナシスの残り香を嗅いでいるのを眺めながら、
「気持ち悪いことするなよ~バルガンス~」
と思っていた事を思い出した神様だった。
神様の目の前に突如女神フローラが現れた。
「うわあ!」
神様がびっくりして尻もちをつく。
「なによ、大袈裟な」
「誰でもびっくりするわ!」
「ねえ、それよりも、もう知っているんでしょ?私が天使ちゃんを夜会に招いたこと?」
神様はこの無礼な女神があまり好きではなかったが……好きだった。
神様が女神にソファへ座るように手を指し示す。
ソファに座った神様と女神。
「ああ、知っておるよ……だが女神よ、なぜ幸せに暮らしているあの子に余計なことをするんだ?」
「ま!余計なことですって?」
女神はテーブルの上をじろりと見て、
「お茶も出ないの?」
「チッ」と舌打ちをして指をパチンと鳴らすと目の前に湯呑みちゃんが現れ、湯気の立つ温かなお茶が置かれていた。
「うわー、ほんとにお茶が出てきた、凄~い」
その言葉に少し気を良くした神様。
「ふふふ」と自慢気に微笑む。
「だけど……どうせならコーヒーの方が良かったかな~」
「グッ……」と堪えて女神に尋ねる。
「バルガンスは今ようやく好きな人と結ばれ幸せに暮らしておるのだ、なぜそっとしておいてやらんのだ?」
「私も……あなたと同様、あの子が可愛いのです。ですが……あの子の連れ添いはなんとなく気に入りません」
神様が少し慌てる。
「おいおい、フローラちゃん、彼女に焼き餅を焼いているんじゃないだろうな?」
「はあ?私が人間の小娘に焼き餅ですって?はあ?」
少し動揺している女神を可愛らしいと思いながら神様が呟く。
「そういえばあの子は女神にまとわりついて離れなかった時があったな」
女神は思い出すように話す。
「ええ、それは可愛らしい天使でした」
女神が微笑む。神様はその笑顔にドキリと胸が高鳴る。
女神が口を開く。
「あの子はもう私にベタ惚れで……女神様、女神様って後をついてきて……『私は女神様と結婚したいです』なんてよくプロポーズされましたわ、オホホホ……」
神様が口を挟む。
「それは100年前の話であろう?」
「うるさい」
「そんな話はどうでもよい。目的を言え、フローラ」
女神はお茶を飲んで一言。
「あら、美味しい…このお茶」
お茶を褒められ一瞬嬉しそうにする神様だったが、女神の一言でまた表情が険しくなる。
「美味しいけど……コーヒーのほうがよかったかな~」
神様が「パチン!」と指を鳴らすと女神の手には湯のみ茶碗ではなくコヒーカップがあった。
「あら、凄い」
コーヒーを一口飲んでホッとする女神。
「ありがとう、コーヒーに変えてくれて」
微笑む女神にニヤつくのを我慢する神様。
「それでフローラ、目的は何なんだ?」
コーヒーカップをテーブルに置いて女神がゆっくりと話し出す。
「試練を与えてみようかなと思って夜会に招待しました」
「し……試練だって?おい女神よ、バルガンスは愛する人と結ばれるまでにどれほど心を乱したことか……まだバルガンスを悩ませるつもりなのか?」
女神が微笑む。
「私が試練を与えるのは……ヒナシスの方です」
「え?」
「彼女は、天使ちゃんの愛を当たり前のように思っております。天使ちゃんが自分を大切するのが当たり前、優しくするのが当たり前、そして自分を愛するのが当たり前になっています」
神様が女神フローラを見つめる。構わず女神は話し続ける。
「彼女は本当に天使ちゃんを愛しているのかしら?ただ便利だから一緒にいるだけなんじゃないのかしら?」
女神は立ち上がり神様を見下ろし、
「今度の夜会で彼女の愛が本物か確かめさせてもらいますわ」
そういうと女神の姿が消えた。
「スーハースーハー」
女神の残り香を嗅ぐ神様。
はっとして匂いを嗅ぐのを止める神様。
バルガンスがヒナシスの残り香を嗅いでいるのを眺めながら、
「気持ち悪いことするなよ~バルガンス~」
と思っていた事を思い出した神様だった。
10
あなたにおすすめの小説
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
触れると魔力が暴走する王太子殿下が、なぜか私だけは大丈夫みたいです
ちよこ
恋愛
異性に触れれば、相手の魔力が暴走する。
そんな宿命を背負った王太子シルヴェスターと、
ただひとり、触れても何も起きない天然令嬢リュシア。
誰にも触れられなかった王子の手が、
初めて触れたやさしさに出会ったとき、
ふたりの物語が始まる。
これは、孤独な王子と、おっとり令嬢の、
触れることから始まる恋と癒やしの物語
これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜
涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください
「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」
呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。
その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。
希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。
アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。
自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。
そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。
アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が……
切ない→ハッピーエンドです
※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています
後日談追加しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる