《完結》恋した天使は一途でございます。

ぜらちん黒糖

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第二章

⑩出発

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10日後、バルガンスの小さな家の前に立派な馬車が1台止まる。

部屋で待ち構えていたバルガンスとヒナシス。ドアのノックの音とともにドアを開ける。

玄関には背の低い男が立っていた。詰め襟のジャケットにズボン、靴と全ての色が純白だった。そして一番の驚きは仮面をつけていた事だった。仮面は顔全体を覆っていた。

「フローラ・ドーン公爵令嬢の迎えの者でございます。バルガンス・ゴッド様並びにヒナシス様でございますでしょうか?」

「ええ、そうです」

御者は馬車まで案内するとドアを開け、二人を馬車に乗せた。

そして馬車はゆっくりと動き出した。

「なんだか緊張するね、バル」

「うん、そうだね」

隣に座るヒナシスを見てバルガンスがときめく。

この日のためにヒナシスにプレゼントしたドレス、靴、バッグ、イヤリング、ネックレス、全てアイボリー色に統一した。

「ヒナ、似合っているよ」

ヒナシスは少し照れて礼を言った。

「ありがとう、バルも似合ってるよ」

バルガンスもタキシードの色はヒナシスに合わせてアイボリー色にしてあった。

「ありがとうヒナ」

「ねえバル、御者の人、仮面を被っていたけど、まさか仮面舞踏会じゃないでしょうね?」

「まさか……」

仮面舞踏会ではないが……なにかあるはずだとバルガンスは思っていた。

バルカンスは天界にいた頃のことを思い出していた……




天使になりたての頃、神様の元で一生懸命に働いていたバルガンス。

そこへ一人の女性が尋ねてきた。

ドスン……

バルガンスが誰かとぶつかった。

「あ!ごめんなさい」

バルガンスが見上げると目の前に美しい女性が立っていた。

「ふふふ、あら、あなた新人さんね?」

「あの、あなたはどなたですか?」

「私は花の女神フローラです」

「なんてお美しいのでしょうか……言葉もありません」バルガンスが感想を述べると、

「あらあら、私を口説いているつもり?」

「いいえ、本当の思いを口に出したまでです」

「ふふ、素直でよろしい。ね、神様はいらっしゃる?」

「はい、こちらです。どーぞ」

神様と女神が楽しそうに話している。

その日からちょくちょく女神が神様の元を訪ねて来るようになった。

バルガンス以外の天使たちも女神が来ると仕事が手につかなくなる。

見かねた神様が女神に忠告する。

「そなたがここへ来ると天使たちが落ち着かなくなる。暫く訪問を控えてくれぬか?」

「あらあら、それは申し訳ないことをしてしまいましたね、分かりました。では、当分の間控えさせていただきましょう」

その時もう会えないのかと思ったバルガンスが女神の前に飛び出した。

神様と女神がバルガンスを見つめる。バルガンスが思いを伝えた。

「女神様、どうか私と結婚してください!」

驚く女神。

「ま、なんて素直で正直者なのでしょう。お前、私を妻にしたいのか?」

「はい!」

女神は感動していた。誰も知らなかったが、生まれて初めてのプロポーズだったからだ。

神様が無表情で女神に話しかける。

「な?このように申し出る天使まで現れよる。だから、暫くは訪問を控えてくれ」

「はいはい、分かりました。神様とお話するのが楽しくて訪ねていたのですが……それでは仕方ありませんね」

女神が席を立ち出口へ向かう間、バルガンスがつきまとう。

「ねえ女神様!私と結婚してください!」

女神は天使の頭を優しくなでるだけでそのまま、部屋を出て行った。

女神が少しして後ろを振り向くと出口のところで天使が立っていて手を振りながら叫んだ。

「女神さまーーっ!愛していますーーっ!」

女神も小さく手を振っていた。

女神は踵を返して歩いて行った。その背中に天使の声が聞こえた。

「女神様ー!結婚してくださーい!」

女神の胸が温かくなっていた……

天使のストレートな言葉にほんの少し女神フローラは乙女になっていた……




「バル、着いたみたいよ」

馬車が止まって、御者が馬車の扉を開けた。

「ようこそ、おいでくださいました。こちらがフローラ様所有の花の御屋敷、女神の城でごさいます」

バルガンスとヒナシスの目の前には辺り一面、色とりどりの薔薇の花が敷き詰められていた。






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