《完結》恋した天使は一途でございます。

ぜらちん黒糖

文字の大きさ
11 / 13
第二章

⑪フローラとヒナシス

しおりを挟む
バルガンスとヒナシスが玄関ホールに入って行くとすぐにまた案内人が現れた。

「ようこそいらっしゃいました。バルガンス様、ヒナシス様」

二人は軽く会釈をする。

玄関ホールにはこの三人しかいなかった。

静まり返った玄関ホールに『なんだか場違いのところに来たみたい』と心の中で呟いたヒナシスに向かって案内人が声をかける。

「ささ、こちらへどうぞ、決して場違いなどではございませんから」

案内人が先へ進む。

ポカンとしているヒナシスに声をかけるバルガンス。

「ヒナ、行こう」

「あ、うん」

ヒナシスはじっと案内人の背中を見ていた。

案内人は重厚で大きな扉の前で立ち止まると扉の取っ手を掴みゆっくりと引っ張った。

その瞬間、華やかな音楽が聞こえ、賑やかな喧騒が二人の耳に入って来た。

案内人が二人に手を部屋の方に向けて言葉をかける。

「どうぞお入りください」

明るい広間に入った二人、綺羅びやかな様子に言葉を失う。

深紅の絨毯が床一面に敷き詰められていて大勢の男女がいた。ダンスを踊っている者、お酒を嗜んでいる者、皆、楽しそうにしていた。

そして一番の驚きは天井から吊られている巨大なシャンデリアだった。ロウソクが何百本あるのか、もしかすると千を越えているのかもしれない。

心が落ち着く光だった。

その時二人の目の前に道ができた。

中央で踊っていた人たちが自然に両脇に別れ、ホールの先まで見渡せる道が見え、その先の階段の上にある玉座のような大きな椅子に鎮座するフローラがいた。

呆然と立ちすくむ二人に背中から声がかかる。

「どうぞお進みください」

振り向くと案内人の男が立っていた。

二人は案内人の言葉を受けて前に進むことにした。大勢の視線を感じて緊張する二人。気がつくと音楽はしなくなり、話し声も聞こえなくなっていた。

突き刺さるような視線を感じながら前に進んで行く二人だったが突然どよめきが起こる。

バルガンスとヒナシスはお互いに顔を見合わせて手を強く握り合い、そして前を見るとフローラが椅子から立ち上がり階段を下りて下で二人を待ち受けていた。

フローラの前まで来るとバルガンスは片膝を立てお辞儀をした。ヒナシスもドレスの裾を軽くつまんで腰を落としてお辞儀をした。

そんな二人を優しく見つめ声をかけるフローラ。

「久しいですね、バルガンス、元気でしたか?」

「はい、おかけざまで、幸せに暮らせています」

フローラはヒナシスにも声をかける。

「そなたもよく来てくれました」

ヒナシスが緊張しながら返事をする。

「本日はお招きありがとうございます」

フローラがニヤリと笑って声をかける。

「そなたは二番目であるぞ?」

「は?」

何のことか分からぬヒナシスが聞き返す。

「二番目とは?」

「プロポーズをされた順番です」

一瞬固まるヒナシスだったが、

「あ、あー、夫が子供の頃の話ですか?」と直球で聞き返す。

「まあ、子供であると言えば子供であるが……人間」とここまでフローラが喋ると、バルガンスが割って入る。

「あ、あの……フローラ様、子供の頃の話とはいえ、その時は身分をわきまえず、過ぎたことを申して、申し訳ございませんでした」

そう謝るバルガンスにフローラが口を開く。

「いいえ、嬉しく思いましたよ。そなたの声がまだ耳に残っております」

嫌な予感がするバルガンスが目を瞑り耳をフローラに集中させ祈る。

(頼みますからヒナのいる前で余計なことは言わないでくださいよ、女神様、お願いします)

「バルガンスは小さな手を振ってこう言ったのです」

「女神様ーーー!結婚して下さい!ってね」

バルガンスが恐る恐るヒナシスの顔を見るとニコニコと優しく笑っていた。

「バル、可愛い」

フローラが微笑みながら二人に、

「では二人とも、今夜は楽しんでくださいね」

女神はまた椅子へ戻って行った。

バルガンスがヒナシスに話しかける。

「ねえ、怒ってないの?」

「怒るって、何に怒るの?」

「いや、だからプロポーズのことさ」

「プッ、怒るわけないでしょう?バルの子供時代の話でいちいち」

「あ、そーだよね」

「そうよ、子供のうちはおばさんも若く見えるみたいだし」

その言葉を言ったほんの一瞬、音楽もざわつきも止まったような気がしたヒナシスに、バルガンスが尋ねる。

「ヒナ、どうかした?」

「ううん、なんでもない。ね、バル、何か食べようよ」

「そうだね」

二人はお料理が置かれているテーブルへ向った。

玉座のような椅子に座ってヒナシスを見つめるフローラが呟く。

「あらあら、すぐに老いる人間におばさん扱いされちゃったわ」と……







    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

運命の番より真実の愛が欲しい

サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。 ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。 しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。 運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。 それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

処理中です...