《完結》伯爵令嬢は怨霊になり、復讐を果たす。ーーしかし彼女を裏切った男は、怨霊よりも恐ろしい妻に出会う。

ぜらちん黒糖

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第四章 

㉑救出

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意識が徐々に戻り始めるキャサリン。心地よい弾力の中でお気に入りの香水に包まれていた。

はっとして目をぱっちりと開けると勢いよく起き上がり目に映る光景を見て呆然とする。

キャサリンはエバンス伯爵家の自分の寝室にいた。ベッドの上で寝巻きに着替えて……。

「え?これは……どういうことなの?」

思い出したようにスロットルの名前をつぶやくキャサリン。

「スロットル……スロットルはどこ」

しかしあれは夢だったのかもかもしれないと思いつく。

「夢?……だったのかしら。……あ!」

だが自分の手首を見て呆然となる。布団をめくり足首も見る。手枷足枷の跡が残っていた。アザがあったのだ。

「夢なんかじゃなかった…」

急いでベッドから降り寝室を出て行こうとした時、父のエバンス伯爵が入ってきた。

「キャサリン!もう動いて大丈夫なのか?」
「お父様!一体これは何が起こったのですか?あ、スロットルは?スロットルは大丈夫なのですか?ねぇお父様!」

そんな娘の姿を見て伯爵は心の中でつぶやく。

(おお、キャサリンがスロットルのことを心配しておる。もしかすると、うまくいくかもしれん)

「大丈夫だ、スロットルは別室で眠っている。背中にひどい鞭の跡があって……どうやら拷問を受けたらしいな」

スロットルの無事を確認することができて安堵するとともに、胸の奥から熱いものが込み上げてくる。キャサリンの目から自然と涙がこぼれ落ちた。





ベッドで横になりスロットルは上半身裸で包帯を巻かれて眠っていた。

そばで伯爵とキャサリンが椅子に座ってスロットルの顔を見つめていた。

伯爵が事件の全容をゆっくりと話し始めた。

「スロットルはここに寝かされる前に意識を取り戻し全てを話してくれた。今は疲れているのだろう。だから眠らせてやってくれ、キャサリン」

キャサリンが頷くと伯爵は話を続けた。

「キャサリン、お前はメネセル公爵家の仮面舞踏会に出席中に誘拐されたんだ。覚えていないか?」

「……」

キャサリンは遠くを見るような目をして思い出していた。

「そういえば私、あの日は、ダンスの申し込みが多くて……なんだか嬉しくなって……最近は全然、誰も申し込んでくれたりしなかったから…つい全員の申し出を受けてダンスを踊ったの……」

「そしたら疲れちゃって……それで 外の空気を吸いに出ようと思って……」

「その時にたまたま、そばを通り過ぎた使用人が美味しそうなワインを運んでいたの。だから……」

「一番手前のワイングラスを手に取り、テラスへ向かった……」

「そして、ベンチに座りワインを飲みながら、庭の景色を眺めてぼーっとしていたら……。あ、ここまでしか覚えていない…」

伯爵が口を挟む。
「おそらく、そのワインに眠り薬が入っていたんだ。そしてお前はそれを飲んで意識を失った。そこへ誘拐犯たちが、お前をさらい地下牢に押し込めた」

「お父様!地下牢ってどこだったの?まさか犯人は公爵家?」

「そんなわけないだろう?お前は別の場所の地下牢に閉じ込められていたんだ」

「そうだったの。でもどうしてスロットルが私を助けに来てくれたの?どうして場所が分かったの?」

「キャサリン、よく聞きなさい。スロットルはお前のことが心配でずっとあの日も後をつけていたんだ」

「その時、スロットルがお前が誘拐されるところを目撃した」

「お前は馬車に乗せられ地下牢のある場所まで運ばれた。スロットルは 懸命に走って、お前が乗った馬車を追いかけたんだ」

「スロットル……」キャサリンが動揺する。

「スロットルは懸命に走り、なんとか馬車を見失わないようについて行った。そしてお前が、ある家の中に連れ込まれるのを目撃した」

「犯人たちは三人。お前を担ぎ上げ家の中に入って行ったそうだ」

「スロットルは場所を確かめた後、警備隊に知らせるか迷ったと言っていた」

「え?どうしてすぐにスロットルは知らせなかったの?」

「それはお前のことを考えてのことだ。お前が誘拐されたとわかれば、世間の連中は何を言うかわからん。そんなことになればお前が傷つくだろう?スロットルはそう考えたんだ」

「……」

「それでスロットルは通りがかった流しの馬車を呼び止めて、御者に伝言を頼み私に連絡をよこした」

「伝言を受け取った私は、腕の立つ使用人を連れてその場所へ向かった。そして地下牢の出入り口を発見して入っていくと、気絶したお前とスロットルがいた。そのそばに三人の黒装束の男がいたが、私たちが制圧した」

「お父様、その男たちが言っていたんですが屋根裏に金庫があるというのは本当ですか?」

「あるにはあるが、何も入っておらんよ。鍵もどこにあるのかもわからん。昔から置いてあるんだ」

「そうだったのですか…。それで犯人たちはどうなさったのですか?」

「その質問には答えられん。大事な娘と、大事な執事をひどい目に遭わされたんだ。もうこのことは二度と聞かないでくれ、キャサリン」

キャサリンは、父エバンスの凄みのある表情に驚くとともに、自分への愛情を強く感じ、これ以上、男たちの処遇はもう聞かないことにした。

その時、眠っていたはずのスロットルが叫びながら目を覚ました。

「お嬢様!キャサリンお嬢様ー!」

すぐに立ち上がり、キャサリンがスロットルの手を握る。
「スロットル、もう大丈夫なのよ。お父様が助けてくれたの」

「旦那様が?」

「そうよ、お父様が私たちを助けてくれたの」

スロットルはキャサリンに手を握られたまま伯爵を見つめ、涙を流して感謝を述べた。

「旦那様!誠にありがとう存じます!」

「う、うん。なに…当たり前のことをしたまでだ。気にするんじゃない スロットル。娘を助けてくれてありがとう、感謝をしている」

キャサリンがスロットルの手を握りながら涙を流し安堵していた。

しかし伯爵は心の中で思っていた。

(スロットルは、策士であり役者でもあるな……)と。







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