《完結》伯爵令嬢は怨霊になり、復讐を果たす。ーーしかし彼女を裏切った男は、怨霊よりも恐ろしい妻に出会う。

ぜらちん黒糖

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第四章 

㉖全ては愛のため

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メネセル公爵家執務室

ソファに座るグレッド・メネセル公爵と対面して座るエバンス伯爵家執事兼次期伯爵のスロットル。

「父上、この度は私にご協力くださり、ありがとうございまいした」

公爵がニヤリと笑う。
「いや、私も楽しませてもらったよ。スロットル、体は大丈夫か?」

「ええ、父上」

スロットルの目の前に座る公爵は、公園で彼を殴る蹴るの暴行をした、あのチンピラだった。そして隣に立っている執事はもう一人の男だったのだ。

「スロットル様、私も様になっていたでしょう?酔っ払いの役」

「ああ、バンスもうまくやってくれた。ありがとう」

バンスは嬉しそうに笑った。公爵が少し心配そうに尋ねる。
「しかし、いずれお前の女房殿に会うことになるだろうが、あの酔っぱらいが私たちと、バレないだろうな?」

「それは大丈夫です。人は身なりや物腰が変わるだけで同じ人物でも別人に見えてしまうものですからね」

そしてスロットルがくすりと笑う。
「それにお二人とも、しっかりと変装なさっていたじゃないですか」

公爵も執事も、カツラを被り、重ね着をして体を大きくして、さらには付け髭をつけていたのだ。

するとスロットルの後ろに立つ三人の男(メネセル公爵の部下)が声をかける。

「スロットル様、背中の鞭の傷はもう癒えましたか?」

「ああ、大丈夫だ。アザにはなっているが傷はもう治っている」

「でもどうしてあの時、キャサリン様のチョコレートをそのまま食べてしまわれたのですか?眠り薬が入っているのをご存知だったのに」

「ああ、あれか……本当は彼女にわからないように口から出すつもりだったんだが……できなかった。彼女と一緒に眠ってしまいたくなってしまったんだ」

「鞭の痛みにも嬉々として耐えるし、本当にスロットル様はマゾの素質がおありですね」

「マゾか……そうかも知れない」

公爵が尋ねる。
「結婚生活は上手くいっているのか?」

「はい。それはもう」

「しかし、あのキャサリン嬢を妻にするとは、お前も物好きだな。前夫の色男も逃げ出したというのに」

「いいえ、妻のあの性格がたまりません。私を監視して、私から視線を外そうとしないあの表情……」

スロットルは顔を赤らめ小さな声で言った。

「愛らしいです、とっても……」

後ろに立っていた男が尋ねる。
「スロットル様、今日はよく一人で外出できましたね」

スロットルが嬉しそうに返事をする。
「そんなわけないだろう?表の通りを見てご覧よ。馬車が一台止まっているだろう?あの馬車にはキャサリンが乗っているはずだ」

「え?尾行されているんですか?」

公爵も執事も、後ろに立っていた男たちも、全員窓から外を見てため息をついた。キャサリンが馬車から降りて中を窺っていたのだ。

公爵が執事に言った。

「バ、バンスよ……キャサリンをここに連れて来てあげなさい」

全員で執事が呼びかけに行くシーンを見ようと窓にへばりつく。
 
執事がキャサリンに声をかけると慌てて馬車に乗り込もうとした。そしてそれを止めるバンス。

公爵がスロットルに声をかける。
「あれは何をしているんだ?」

スロットルが愛でる表情で返事をした。
「尾行がバレたのが恥ずかしくて、抗っているのでしょう」

キャサリンは、呼びに行った執事の誘いを断り、馬車にしがみついていた。


    
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