《完結》伯爵令嬢は怨霊になり、復讐を果たす。ーーしかし彼女を裏切った男は、怨霊よりも恐ろしい妻に出会う。

ぜらちん黒糖

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第五章

㉘湧き起こる性欲

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 結局、泊まることにしたアレスは、使う前に部屋のチェックをすることにした。

 トイレ、洗面脱衣所、玄関周り、ベッドのセッティング、床のほこりや塵がないか、鏡に曇りや汚れがないか、ランプの油は補充してあるか、ロウソクは規定通りの長さになっているか……など。

「うん、清掃や備品に不具合はなさそうだな」

 そしてやっとソファに座ったアレス。

「ふぅ、疲れた」

 この宿泊施設を見て回った後、帳簿を確認して、金庫のお金と照らし合わせ、異常もなく、よく管理維持されていた。

「バルは、管理者として有能だな……。私が爵位を受け継いだら、この片田舎の領地から彼を連れ出そうかな……」

 目を瞑ってマーガレットを思い浮かべる。

「本当にお姉様に似ていたな……」

 その時、ドアがノックされた。思わず舌打ちが出そうになったがやめた。

「ゆっくりさせてくれよ、もう……」

 アレスがドアを開けると、ワゴンにワインセットと軽食が載せられてマーガレットが立っていた。

「アレス様、今日はお疲れ様でございました。いかがでしょうか?軽くお食事でもされては」

 マーガレットの顔を見たアレスは、自分の気持ちを悟られぬように返事をした。

「バルには夕食は不要だと言ってあったのだがな」

 マーガレットの表情が曇る。

「失礼いたしました。ではお下げいたします」

 立ち去ろうとしたマーガレットを呼び止める。

「いいよ、せっかく持ってきてくれたんだから、中に入れてもらえるかな」

 マーガレットは安堵したように軽くお辞儀をして、部屋の中にワゴンを入れた。

 アレスがソファに座り、テーブルに置かれたワイングラスにワインが注がれていくのを見つめていた。

 ただしアレスが見つめていたのはワインではなく、彼女の手や指先だった。

(細くて、長い指……そして白い肌…)

 ワイングラスを差し出すマーガレット。アレスはワイングラスを掴むと、わずかに小指を離し持ち上げ、ワイングラスの中でワインを回して香りを楽しみながら口につけた。

「うん、うまい……」

 その言葉にホッとしてマーガレットがお辞儀をすると口を開く。

「では私はこれで失礼いたします」

 そう言って部屋を出ていこうとしたのだが……アレスが呼び止めた。

「バルが言っていたんだが、私のお世話を君にさせると……。君はそんな指示を受けていないのかな?」

 マーガレットは返事に困る。
「あの……このワゴンを持っていくようにと言われただけでしたので」

 困ったような表情が姉のグレイスに似ていた。

「そうか、それなら仕方がないね。悪かった。ただ、話し相手が欲しかっただけなんだが……。いいよ、戻ってくれ」

 アレスが優しく言葉をかけた。

「ん?」

 マーガレットが立ち止まったまま出ていかない。

「どうかした?」

「あの、お話相手くらいなら構いませんけど?」

「ふふふ、まさか君、私が夜の相手をしろと言うとでも思ったのか?」

 意地悪そうな笑みを浮かべてからかうアレス。

「冗談だよ、マーガレット……」

 マーガレットが顔を赤らめていた。

「まぁ、君さえ良ければ、だけど。一緒にワインでも飲んで、語り合わないか?」

 するとマーガレットがゆっくりとアレスの隣に座った。

 アレスから意地悪な笑みは消えて、労わるような優しい眼差しに変わった。

「君が着ている制服のワンピース。上が白で、腰から下が黒になっているが、この配色はどう思う?君は気に入っているか?」

「はい、とても」

「そう、やはり制服はある方がいいかい?」

「ええ、断然その方がいいですね」

「……君は恋人いるの?」

 突然アレスの話が切り替わる。

「恋人はいるのかな?と聞いているんだが……」

「恋人は……いません」

アレスの胸が弾む。一日の疲れが抜けきらないままワインを飲んだせいか、心が少し淫らになっていた。

そっとマーガレットの膝に手を置いてみる。マーガレットの体に力が入るのがわかった。

「アレス様、話し相手のはずでは?」

「……そうだよ。だけど打ち解けるには心だけじゃ、物足りないと思わないかい?」

アレスの手がワンピースの裾を少しずつ巻き上げていった。しかしその手をマーガレットが抑える。

「おやめください、アレス様…」

マーガレットの困ったような、恥ずかしそうな、その仕草がアレスを動かした。

無意識のうちにアレスはマーガレットの唇に唇を重ね、長く熱いキスをした。

「マーガレット……君が欲しい」
「アレス様……」

アルコールの力もあったのだろうが……二人は燃え上がり結ばれてしまった。

世間知らずのアレスは、マーガレットの見た目が姉と似ていたので、性格も姉と同じ内向的で、大人しい性格だと思い込んでいた。

アレスはベッドの中でマーガレットを抱きしめたまま、いつしか深い眠りに落ちていった。

翌日から、恐怖が始まるとも知らずに……。

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