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第五章
㉜香水と疑惑
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マーガレットと別々の部屋になって、正直ホッとしていたアレスは、ソファに座りながら昨夜のことを思い返してみる。
ぞくぞくとする快感と嫌悪感がアレスを押しつぶすように胸に迫る。
思わず右手を胸に当て拳を握る。
「これから、私はどうすればいいのだろう。このままでは、あの女と結婚することになってしまう」
そしてアレスの頭にひらめきが起こる。
「そうだ、何もかも父上に話して許しを乞い、助けてもらおう。もうそれしかない」
アレスは出口へ向かい、扉をゆっくりと開けた。
「ひっ!」
扉の前にマーガレットが立っていた。
マーガレットはアレスの胸を押しながら部屋に押し入り、扉を閉めると鍵をかけた。
「アレス様、どちらへ行かれるつもりだったのですか?」
「い、いや、君に会いに行こうかと……」
「本当に?」
「ああ、本当だとも」
「ではもう部屋を出て行かなくても良くなりましたね?私が会いに来てあげたんだから…」
「そ、そうだな」
その時、ドアがノックされた。
アレスとマーガレットが顔を見合わせる。すぐにマーガレットが耳打ちをした。
「この部屋には誰も入れないで!」
頷くとアレスはほんの少しだけ扉を開けた。立っていたのは執事のサンバルだった。
「アレス様、まもなく夕食でございます。旦那様もお待ちですのでお越しください」
「あ、ああ、わかった。今行くから」
「アレス様、マーガレット様がどこにいらっしゃるのか、ご存じありませんか?どうやらお部屋にいらっしゃらないようなんですが……」と言いつつ扉の隙間から中を覗こうとするサンバル。
お尻をマーガレットにつつかれて返事を考えるアレスは、扉の隙間に立ちふさがるようにしながら答えた。
「あ、あー、おそらく部屋で眠っているんだろう、疲れていたみたいだから」
「そうですか……では、彼女の食事はお部屋の方にお持ちいたします」
「ああ、そうしてくれ」
次の瞬間お尻を思い切りつねられる。
「あ!」
「どうかされましたか?」
「いや、あのマーガレットは私が一緒に連れて行くよ」
サンバルがにっこりと笑う。
「いえ、マーガレット様は別室でのお食事になります」
「え?一緒じゃないのか?」
「はい、まだマーガレット様とアレス様は正式に婚約もされておりません。今はまだ単なる使用人でございますから、旦那様と一緒に食事は早ようございます」
サンバルは、なぜかほっとするアレスの顔を不審に思うと同時に、扉の隙間から、かすかにマーガレットの香水の匂いが漂うことに気がついた。
サンバルはアレスにお辞儀をすると「では失礼いたします」と行ってその場を離れた。
しかしサンバルの歩幅はだんだんと大きくなり、やがて走り出していた。
(旦那様に知らせねば!)と。
アレスはゆっくり扉を閉めて、マーガレットの顔を見た。
鬼の形相のような顔をして、アレスに訴えた。
「アレス様、私も一緒にあなたと食堂で食事いたします」
「だめだ!サンバルの言っていたことを聞いただろう?」
「たかが執事の分際で、私たちに意見をするというのですか?あの男は」
「私たちって……」と言いかけて口を閉じるアレス。
アレスの喉元にマーガレットの研ぎ澄まされた爪が食い込んでいた。
「私たちでしょ?アレス様」
「う、うん、分かった。分かったから刃物は下げてくれ、な?マーガレット」
マーガレットは静かに冷たい声でアレスに話しかけた。
「私を見捨てたり、捨てたりしたら、あなたを絶対に許しませんから」
マーガレットの無表情な視線がアレスの心に突き刺さった。
❖
その頃、ウッド伯爵は仕事も一段落がつき、執務室で椅子に座り、窓から外を眺めていた。その時、ノックもせず、執事のサンバルが駆け込んできた。
「旦那様!至急お話ししたいことがございます!」
冷静さを失った執事の姿に、思わず笑みを浮かべたが、その表情を見てウッド伯爵の顔から笑みが消えた。
ぞくぞくとする快感と嫌悪感がアレスを押しつぶすように胸に迫る。
思わず右手を胸に当て拳を握る。
「これから、私はどうすればいいのだろう。このままでは、あの女と結婚することになってしまう」
そしてアレスの頭にひらめきが起こる。
「そうだ、何もかも父上に話して許しを乞い、助けてもらおう。もうそれしかない」
アレスは出口へ向かい、扉をゆっくりと開けた。
「ひっ!」
扉の前にマーガレットが立っていた。
マーガレットはアレスの胸を押しながら部屋に押し入り、扉を閉めると鍵をかけた。
「アレス様、どちらへ行かれるつもりだったのですか?」
「い、いや、君に会いに行こうかと……」
「本当に?」
「ああ、本当だとも」
「ではもう部屋を出て行かなくても良くなりましたね?私が会いに来てあげたんだから…」
「そ、そうだな」
その時、ドアがノックされた。
アレスとマーガレットが顔を見合わせる。すぐにマーガレットが耳打ちをした。
「この部屋には誰も入れないで!」
頷くとアレスはほんの少しだけ扉を開けた。立っていたのは執事のサンバルだった。
「アレス様、まもなく夕食でございます。旦那様もお待ちですのでお越しください」
「あ、ああ、わかった。今行くから」
「アレス様、マーガレット様がどこにいらっしゃるのか、ご存じありませんか?どうやらお部屋にいらっしゃらないようなんですが……」と言いつつ扉の隙間から中を覗こうとするサンバル。
お尻をマーガレットにつつかれて返事を考えるアレスは、扉の隙間に立ちふさがるようにしながら答えた。
「あ、あー、おそらく部屋で眠っているんだろう、疲れていたみたいだから」
「そうですか……では、彼女の食事はお部屋の方にお持ちいたします」
「ああ、そうしてくれ」
次の瞬間お尻を思い切りつねられる。
「あ!」
「どうかされましたか?」
「いや、あのマーガレットは私が一緒に連れて行くよ」
サンバルがにっこりと笑う。
「いえ、マーガレット様は別室でのお食事になります」
「え?一緒じゃないのか?」
「はい、まだマーガレット様とアレス様は正式に婚約もされておりません。今はまだ単なる使用人でございますから、旦那様と一緒に食事は早ようございます」
サンバルは、なぜかほっとするアレスの顔を不審に思うと同時に、扉の隙間から、かすかにマーガレットの香水の匂いが漂うことに気がついた。
サンバルはアレスにお辞儀をすると「では失礼いたします」と行ってその場を離れた。
しかしサンバルの歩幅はだんだんと大きくなり、やがて走り出していた。
(旦那様に知らせねば!)と。
アレスはゆっくり扉を閉めて、マーガレットの顔を見た。
鬼の形相のような顔をして、アレスに訴えた。
「アレス様、私も一緒にあなたと食堂で食事いたします」
「だめだ!サンバルの言っていたことを聞いただろう?」
「たかが執事の分際で、私たちに意見をするというのですか?あの男は」
「私たちって……」と言いかけて口を閉じるアレス。
アレスの喉元にマーガレットの研ぎ澄まされた爪が食い込んでいた。
「私たちでしょ?アレス様」
「う、うん、分かった。分かったから刃物は下げてくれ、な?マーガレット」
マーガレットは静かに冷たい声でアレスに話しかけた。
「私を見捨てたり、捨てたりしたら、あなたを絶対に許しませんから」
マーガレットの無表情な視線がアレスの心に突き刺さった。
❖
その頃、ウッド伯爵は仕事も一段落がつき、執務室で椅子に座り、窓から外を眺めていた。その時、ノックもせず、執事のサンバルが駆け込んできた。
「旦那様!至急お話ししたいことがございます!」
冷静さを失った執事の姿に、思わず笑みを浮かべたが、その表情を見てウッド伯爵の顔から笑みが消えた。
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