《完結》伯爵令嬢は怨霊になり、復讐を果たす。ーーしかし彼女を裏切った男は、怨霊よりも恐ろしい妻に出会う。

ぜらちん黒糖

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第七章

㊻水晶玉が移す、追体験

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丸いテーブルに三人が椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。

「それで、今日は何を占って欲しいのかな?」老婆がミラに話しかけた。

「私は誰と結婚すればいいのか、それが知りたいんです」

「ほう、誰と結婚すればいいのか、だって?選ぶ相手は1人ではないのか……」

 アレックスが気まずそうに口を開く。
「ミラお嬢様、私は部外者ですので外でお待ちしています」

そう言って立ち上がろうとしたが 、ミラが引き止める。

「いいの、あなたもいて。アレックスは当事者なんだから」

「……え?」戸惑うアレックスを見て老婆も少し驚く。

「おやおや……まぁ、私には関係ないが……では、ミラお嬢様、ご希望通り占ってあげよう」

老婆は二人に、テーブルの真ん中に置いてある、手のひらに乗る大きさの水晶玉を見つめるように指示した。

「いいかい?私が10数えるから、そのまま水晶玉を見ているんだよ?」

頷く二人の顔を見て、老婆が数え始める。

「1、2、3、4、5、6、7……」

二人の瞼がだんだんと重くなってきた。

「8、9……10」「パチン!」

最後に老婆が指を鳴らしたその瞬間、二人がテーブルにゆっくりと伏せた。


 ❖


ミラが気づくと、まな板の上で野菜を刻んでいた。

 トントントントン!

「え?何?…あ!」

包丁で指を切ってしまったミラ。

「痛~い、もう」

慌てて洗面所へ行くと、消毒液と絆創膏を取り出し手当する。

顔を上げて鏡を見るミラ。その瞬間、意識が美智子に入れ替わった。

「あ、指を怪我してる。あれ?あ、でもこれ、自分で治療してるから、自分でやったのよね」

急いで キッチンに戻る美智子。

「私も疲れてるのかな、指を切ったことも覚えてないなんて…」

壁にかかった時計を見る。もうすぐ7時になる。一太郎が帰ってくる時間だ。

料理を作りながら、今の状況を考える 美智子。

(親の取り決めで私たちは結婚したけど、彼はこれで良かったと思っているのかしら?)

(まだ一緒に暮らして10日だけど、それでも私はこの暮らしを楽しんでいる)

(それどころか、少しずつ彼に情が移っている。これが愛なのかもしれない)

(彼の気持ちが知りたい……)

(私のことをどう思っているのか…)

キッチンの窓ガラスに足音とともに人影が映った。そして鍵を開ける音がしてドアが開いた。

「ただいま、美智子」
「おかえりなさい 、一太郎さん」

一太郎はキッチンを通り過ぎ、寝室に入ると上着をぬいで後ろにいた美智子に手渡した。美智子は上着を受け取るとハンガーにかけ、ネクタイを外すのを待った。

「はい」一太郎がネクタイを手渡す。無言でネクタイを受け取るとそれもハンガーにかけてから、尋ねる。

「先にお風呂入ります?それともご飯にします?」

「ご飯にするよ」

食卓にはもう食事の用意ができている。

「じゃあ、食べましょうか」

「うん」

小さな食堂の食卓には焼き鯖が置いてある。

換気扇は回っているが、なかなか焼き魚の匂いは消えてくれない。

一太郎が食事を美味しそうに食べている表情が、美智子にとってなんとなく嬉しく感じてしまう。

面倒だったけど、大根おろしも鯖のお皿の端に載せてある。味噌汁も豆腐の他に、大根のほうが入れるのは楽だったけど、それはやめて里芋を入れてある。

「鯖、美味しいね」一太郎がぽつりと呟いた。

(この人は、私のことをどう思っているのだろうか?)

(知りたい…)

一太郎が食事を食べ終わって、お茶を飲んでいた。

(この人の気持ちが、知りたい)

「ねえ、一太郎さん」

「ん?」

「私たち、離婚しましょう」

美智子は、じっと一太郎の表情を見つめていた。






     
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