《完結》伯爵令嬢は怨霊になり、復讐を果たす。ーーしかし彼女を裏切った男は、怨霊よりも恐ろしい妻に出会う。

ぜらちん黒糖

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第七章

㊼愛の追走と涙の告白

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「え?」そうつぶやくと一太郎が箸を落とした。

(一太郎さん、さぁ、何か言って)

しかし、一太郎は口を開けたままポカンとしていた。

(もう!)仕方なく美智子が話しかける。

「ええ、私たち、親同士の取り決めで結婚したけど、愛し合って結婚したわけじゃないでしょ?一応、私たちが結婚したことで、親同士のメンツは保つことができたじゃない?」

「……」

「だから、離婚しましょう」

(一太郎さん、お願い、引き止めて!)

「うん、分かった。そうしよう」

(え?)

美智子の胸が、どうしようもないほど締め付けられた。そして、すぐに気を取り直して一太郎に声をかけた。

「悪いんだけど、食器の後片付け、お願いできる?私、出て行くから……」

「え?もう出て行くのか?」

美智子は部屋に入ると、あらかじめ用意しておいた鞄を手に持ち、ポケットから折りたたんだ離婚届の用紙を、一太郎に手渡した。

そして足早に玄関へ向かう。靴を履いて振り返ると、一太郎はまだ、椅子に座ったまま、離婚届を見ていた。

(一太郎さん、呼び止めるなら、今よ!)

だが、一太郎は美智子の方を振り向きもしなかった。

「一太郎さん、短い間だったけど、お世話になりました。それでは、元気でね」

美智子はゆっくりとドアを開けて、ゆっくりとドアを閉めた。

美智子はアパートの前の道路に出ないで、駐輪場のそばで鞄を抱えながら、壁にもたれて座っていた。

(やっぱり私たちは、縁がなかったのかもしれない)

(その前に、私、こんなことしなくても良かったんじゃないのかしら?このまま時間が過ぎて、自然と夫婦の形になっていったんじゃないかしら?)

「私、とんでもないことしちゃったんじゃないかしら?」

(ううん、私を愛してくれない人と一緒に暮らしていくのは……辛いから、これで良かったのかもしれない)

その時、部屋を飛び出していく一太郎が目に入った。

「え?」

一太郎が慌てて表の通りに出ると駅に向かって走り出した。思わず後を追いかける美智子。

「一太郎さん…」

その一太郎を追い抜くように電車が追い越していく。

焦る一太郎。駅の改札口を通って中へ入っていく。

誰もいない駅のホームを肩を落として立っている一太郎。

そして、駅から出てくると下を向いてしょんぼりしながら一太郎が美智子の前を通り過ぎていく。

路地から抜け出して一太郎の後ろを歩く美智子。

肩を落として歩く一太郎の背中が切なくなり、鞄を置いて駆け出すと、一太郎の背中にしがみついた。

「美智子……」
一太郎は振り返ると美智子を抱きしめてきた。

(一太郎さん)

「美智子!お願いだ!離婚は取り消して欲しい!」

美智子が一番聞きたかったことを尋ねる。

「一太郎さん、私のこと、愛してる?」

「うん、愛してる」

(私も、一太郎さんのことが好き)

(これからもずっと一緒に、あなたと生きていきたい……)

そして徐々に美智子の意識が薄れていった。





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