《完結》伯爵令嬢は怨霊になり、復讐を果たす。ーーしかし彼女を裏切った男は、怨霊よりも恐ろしい妻に出会う。

ぜらちん黒糖

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第七章

㊾愛の最終宣言と消失の刻(とき)

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テーブルに伏せたままのアレックスを見て、老婆とミラが心配そうに見つめる。

「ねぇ、いつまでアレックスは眠っているの?遅くない?」

ミラにそう尋ねられてさすがにうろたえ始める老婆。

「う、う~ん、そうじゃな」

その時アレックスが大きく息を吸い込むように起き上がった。

胸を両手で押さえ必死に深呼吸をするアレックス。

ミラが呆れたようにアレックスに話しかける。

「アレックス、溺れる夢でも見ていたの?」

アレックスはゆっくりとミラに振り向くと、安堵したように答えた。

「……よく覚えてはいないのですが、一つだけ確かなことがあります」

老婆が優しくアレックスに尋ねる。

「お前さん、ミラお嬢様が、ブランドン公爵令息と結婚をすることに賛成かい?」

するとアレックスは立ち上がり、ミラを見つめてはっきりと返事をした。

「反対です。なぜなら、ミラお嬢様と結婚するのは、私だからです」

「アレックス…」「ミラお嬢様…」

二人が抱きしめあった瞬間、二人の姿が徐々に透き通り始め、やがて、二人の姿は消えてなくなった。

一人残された老婆が微笑むと、老婆の姿も、そして建物自体が消えてなくなった。





​ズキン!と後頭部に痛みが走り、アレスは咳き込みながら、浴槽の縁に乗せていた頭がずれ落ち、浴槽の底に勢いよく沈んでしまった。

『う!』

目を開けて、自分が今、浴槽の中にいることに気づく。

ザバァ!とお湯を揺らしながら立ち上がったアレス。

必死で深呼吸をする。

「あ、危なかった。浴槽で寝てしまっていたのか…」

アレスは急いで浴室から出ると、バスローブを羽織り、部屋へと戻った。

部屋のソファには、メアリーが静かに眠っていた。

「待ちくたびれて寝てしまったのか…」

テーブルの上には、手つかずの豪華な夕食と、空になったワイングラスが置いてあった。

アレスは、​ソファで寝息を立てるメアリーの顔を見つめながら、そっと隣に座る。

なぜかとても愛おしく感じてしまう。いつまでも寝顔を見ていたかったが、声をかけようとした瞬間、メアリーがゆっくりと目を開けた。

​「……レス君…」

「メリー、ごめんね、湯船が気持ちよくて眠ってしまったみたいなんだ」

「私こそごめん。ワインを飲んだら知らぬ間に眠ったみたいで……」

メアリーがうかがいを立てるように尋ねた。

「お料理、冷めちゃったけど、どうします?温め直してもらいますか?」

アレスは笑って答えた。
「いいよ、このままで。悪いのは長湯した、私なんだから…」

二人は椅子に座り直しテーブルの料理を食べることにした。

「冷めた肉も意外に食べられるもんだね、冷たくなっても」
「本当ですね、美味しいです」

なぜか自然と見つめ合いながら食事をする二人。

食後のワインを飲みながらアレスが口を開いた。

「浴槽でいつのまにか眠って、その時、どうやら夢を見ていたようなんだが……思い出せないんだ。何かとっても大切なことだったような気がするんだが……」

メアリー も口を開く。
「レス君、私もそうなんです。ワインを飲んだ後、眠くなって、眠ってしまったんですけど……私も確かに夢を見たんです。どんな夢かと聞かれたら答えられないんですけど……」

アレスがひらめいたように話し始める。
「分かった。何か違和感があったんだが、記憶はないはずなのに、とても夢とは思えないほどリアルな夢を見た、そんな気がするんだ」

メアリー もそれに同調する。
「そうです。その通り。とてもリアルな夢を見ていたような気がする」

「私たちは二人とも、この大魔境ホテルの神秘の世界へ、知らぬ間に行ってきたのかもしれないね」

「ええ、そうかもしれません」

アレスは立ち上がると、メアリーに声をかけた。
「メリー、お風呂に入ってきた方がいいよ。でも 浴槽には浸からない方がいいかもしれないな。アルコールが入ってるからね、体の中には。湯船に浸かるなら、溺れないように気をつけてくれ」

メアリーが食器をワゴンに載せ始めると、アレスが止めて言った。

「いいよ、後片付けは私がやるから、お風呂に入っておいで」

「あ、はい。ありがとう、レス君」
「ふふ、気にしなくていいさ」

メアリーは浴室へ入って行った。

洗面所で歯を磨いてから、ベッドで横になるアレス。

メアリーが浴室から出てくるのを待っているつもりだったが、またしても睡魔がアレスを襲った。

メアリーは浴室から出ると、バスローブを羽織り、部屋に戻るとアレスが寝息を立てて眠っていた。

テーブルの上に短いロウソクを1本だけで立て火をつけ、メアリーはベッドに入った。眠りに入るに時間はかからなかった。

しかし、そんなメアリーの耳元にアレスの寝言が聞こえた。

「ミチコ…行かないでくれ」

女性の名前を呼ぶアレスの寝言に反応してメアリーが起き上がる。

(まさか、アレス様に、女が?)

その時、頭の片隅に何かが引っかかった。
「ミチコ……ミチコ…美智子」

記憶が上書きされるように流れ込んでくる。

(美智子…美智子って、私じゃ……ないの?)

(!、一太郎さん!) 

蘇った記憶がメアリーをせきたてる。

隣のベッドで眠るアレスを見る。
懐かしさと愛おしさでメアリーの目から涙がこぼれ落ちた。

そしてアレスがまた寝言を言った。

「レオ…愛している……」

「あ、」その言葉で全てを思い出した メアリー。

「アレックス……フランク、そして 一太郎」

メアリーは全て思い出し、全てを理解した。

これらは全て夢ではなく、前世だったのだ。フランクとレオ、アレックスとミラ、一太郎と美智子。

そして今、アレスとメアリーとして四度目の出会いを果たしていたのだと……。






























    
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