《完結》ありがとう神様!スキル【リセット】を使って異世界を生き抜きます!

ぜらちん黒糖

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⑥吸血鬼現れる

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朝ゴロウが一階へ降りていくと女将さんは、出店の方へ出勤した後だった。

ヨリコが1人で店を仕切っていた。

「おはよう。ヨリコちゃん」

「おそーい。起きて来るのがおそーい」

「ごめん。寝すぎてしまったよ」

「ゴロウさん。今日はどうするの?泊まる?」

「ああ、お願いする。これ3日分の部屋代。」

そう言って金貨1枚、銀貨2枚を渡した。

「ゴロウ様。本日もご利用ありがとうございます。ごゆるりとお過ごし下さい。」

「あ、ああ。それはどうも」

「朝ご飯はどうするの?」

「外に食べに行こうかと思ったけど…面倒だから串焼きもらえる?」

「ありがとう。何本?」

「じゃあまた5本もらえる?」

「毎度!」

「はい。銀貨1枚」

「はい、丁度ですね。ありがとうございます」

この世界の貨幣感覚が少し分かって来たような気がするぞ。

お皿に乗せてくれた串焼きを食べながらヨリコに質問するゴロウ。

「ねえ。この串焼き、とっても美味しいけど、なんの肉なの?」

「ゴロウさん、この世の中には知らない方がいいこともあるのよ。」

「え?」

「知りたい?」

「あ、ああ。余計に知りたい。今後、食べるか食べないか判断するためにも」

「ごめんなさい、私の口からは言えないわ」

「え?」

「お母さんから聞いてもらえる?お願い」

「……」

ゴロウはそっとお皿に串焼きを戻した。


ゴロウは朝食後、ぶらぶらと王都見物に出かけた。

人間以外の種族は見かけない。ちょっとがっかりした。

もっとこう異世界らしく獣人とかフウさんみたいに可愛いエルフとかさ。

その時大きな声がした。

「吸血鬼が出たぞおーーーー!」

「みんな!逃げろ!」

「早く隠れるんだ!」

あっと言う間に街中が静かになった。

ゴロウ1人を残して。

「え?」

「この真っ昼間に?」

「太陽がさんさんと輝いているのに?」

「みんな馬鹿じゃないの?」

「「「「どんっ!」」」」

地響きと何かが地面にめり込む音がした。

ゴロウの目の前に吸血鬼が立っていた。

ゴロウはすぐに右手中指を眉間にあてて「リセット」を発動した。





ゴロウが過去に戻った瞬間

「吸血が出たぞーー」の声が聞こえた。

すぐに踵を返して全力で走った。

宿に向って。走って走って・・宿が見えてきた。

宿に戻るとすぐにヨリコに声をかける。

「ヨリコちゃん、吸血鬼が出た。早く店を閉めて」

「わかった」

急いで戸締まりをするヨリコ。

ゴロウも手伝う。

ヨリコが今にも泣きそうな声でゴロウに聞いた。

「お母さん!大丈夫かな?ねえゴロウさん」

「出店の方角と逆だったから大丈夫だよ、たぶん」

ヨリコが外へ出ようとした。

「どこへ行くんだ!」

「お母さんを迎えに行く!」

「ま、待て俺が行くから」

「ゴロウさん」

「俺が行くから!ヨリコちゃんはここで待ってろ!」

そう言うと外に飛び出した。が、すぐに誰かとぶつかった。

「なんだ、こんなときに」

尻もちをついて見上げると吸血鬼が立っていた。


 スキル『リセット』を発動する。

あれ?あの過去へ戻る感覚がしない…なぜ?

そして気づく。眉間に当てていた指は人差し指だったことに。

吸血鬼がゴロウを見た。

(ぎゃあああああ!ごわいいい!)

それでも必死でスキル『リセット』を発動した。

ゴロウは目を開けると見せの中に立っていた。

目の前には外に出ようとしているヨリコがいた。

「ヨリコちゃん、待つんだ。吸血鬼はもう近くまで来ている」

信じないヨリコに扉の隙間から外を見せる。

「ほ、ほんとだ」

「今は我慢だ!じっとしているんだ」

しかし吸血鬼がその場所を動かない。

吸血鬼の視線がこちらへ向いた。不味い。

ヨリコを下がらせヨリコの前へ出るゴロウ。

  カツ  カツ  カツ

足音がこちらへ向っている。

ドアの前で止まった。

ゴロウはヨリコの手を掴み階段へ向った。

ヨリコも一生懸命ついて来る。

  バアンッ!!

入口のドアが吹き飛んだ。

階段の半ばで立ち止まるゴロウとヨリコ。

吸血鬼と目が合った。

吸血鬼の標的はゴロウではなかった。

ヨリコだ。

ヨリコの前に立ち、手を広げるゴロウ。

「ヨリコちゃん!部屋へ逃げるんだ!早く!」

頷くと走り出すヨリコ。

同時にふわっと飛び上がる吸血鬼。
先回りしてヨリコの前に降りた。

牙を向き出しで口を大きく開けてヨリコに向った。

  ヒュン
   
        ブスッ

後ろから飛んできた矢が吸血鬼の眉間に命中した。

吸血鬼は煙となって消えた。
 
ゴロウの後ろには弓使いのバコがいた。

「ゴロウ!これで馬車の時の借りは返したぞ」

そう言うとバコは引き上げていった。

が、すぐに戻ってきて自分が放った矢を回収して

「これ高いんだよ、銀の矢。じゃな」

バコはそう言うと表で待ち受ける衛兵たちと一緒に帰っていった。


女将さんも暫くして帰って来た。

入口のドアが壊れていたので心配して入ってきたが、ヨリコが無事でほっとしていた。

ドアは丸ごと交換となったが、その分修理も早く済み晩御飯までに直った。



今日は女将とヨリコが晩御飯に招いてくれた。

昼間のお礼だという。

「でね、ゴロウさんが私の肩を抑えて、待てヨリコ。吸血鬼は近くまで来ている!」

「ちゃんづけしました。ヨリコちゃんって」ゴロウが訂正する。

「今は我慢だ!じっとしていよう2人で、いつまでも」

「いつまでも、なんて言ってないよ?」

ゴロウはため息をついて

「ヨリコちゃんは大げさだなあ」

女将が「ゴロウさん。今後とも娘をよろしくお願いします。」

ゴロウは慌てて「やだなあ。女将さんまで。冗談はやめて下さいよ」

「あら私いいわよ?ゴロウさんと付き合っても」

ヨリコが真顔で言った。

「え?ヨリコちゃん!もうやめて!おじさん本気にするよ」

「ゴロウちゃん!好きよ!」

ゴロウは顔を手の平で隠して

「俺もう寝ます」

そう言って部屋に戻ることにした。

「ゴロウちゃん、かわいい~」

母娘の明るい笑い声が聞こえた。

女の人にちゃん呼びされるのもいいもんだなとゴロウは思った。

前世のゴロウは女の人とこんなふうに軽口を言い合った経験もなかった。


ベッドの上で思案するゴロウ。

今日みたいにスキルを発動するとき、焦ってはいけないな。スキルは必ず一発で決めないと。命を落とすことになる……

遅れたせいで3分前の過去に戻っても、目の前には吸血鬼がいたんではシャレにならんしな。

やっぱりこのスキルも万能ではないのか…… 
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