《完結》ありがとう神様!スキル【リセット】を使って異世界を生き抜きます!

ぜらちん黒糖

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⑯恋心が消えた理由

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ゴロウがゆっくりと目を開けた。

カオリンがゴロウに聞いた。

「どうですか?気分は」

「ええ、大丈夫です。俺、なんだかずっと夢を見ていたような気がします」

ゴロウは爽やかな表情で言った。

「いい夢だった」

ずっこけるセンフーとカオリン。

「ゴロウ、冒険者にならねえか?『蒼き光』に入れよ。お前ならキュウとも上手くやれるし俺も大歓迎だ」

「うん。考えておくよ。俺も今回のことで、新しい世界を見てみるのも悪くはないかなって思ったし」

「そうか。その時が来るのを待ってるぞ、ゴロウ。じゃあ俺とカオリンはもう帰るから」

「うん。今日はどうもありがとう。助かったよ」

ベッドから出ようとするゴロウに、

「いいから、いいから。お前はじっとしていろ、今日は。な!」

そう言うとセンフーとカオリンは帰って行った。


ベッドで横になっていたゴロウはお腹が空いて目が覚めた。その時ドアがノックされた。

コンコン

ドアが開いてヨリコの顔が現れた。

「ゴロウちゃん。晩御飯食べる?」

「うん食べるよ、お腹ぺっこぺこ。今、行くよ」
「じゃ一緒に行こ!」
「うん」


食堂に行くとテーブルの上に食事が用意されていた。

ゴロウに気づいた女将が聞いた。

「ゴロウさん。体、大丈夫なの?」

「はい。センフーとカオリンのお陰で、もうすっかり良くなりました」

「じゃあ食べましょうか」

「ゴロウちゃん。こっち、こっち、ここに座って」

はしゃぐヨリコの隣に座るゴロウ。

ゴロウは女将が、ちゃん付けじゃなく、さん呼びになっていることに気づいていた。

そしてそのことにショックを受けていない自分に気づいていた……

3人は食事も終わり食後のお茶を飲んでいたがゴロウが2人に話しかける。

「女将さん、ヨリコちゃん。話があるんだ」

ヨリコが心配そうに「なあに?ゴロウちゃん」

「俺の昔話を聞いてほしいんだ」

ヨリコが少し安心した顔で「昔話?」

女将が立ち上がる。

「ちょっと待ってね。お茶を入れかえるわね」


女将が熱いお茶を入れてくれたが3人共ただお茶を見つめていた。

ゴロウが話し出す。

「俺の母は千子って言う名前なんだ。千の子と書いて千子」

ヨリコが「お母さんの名前もセンコだね」

「うん、俺ね、最近はもう全然母の名前を思い出すこともしなくなて、この間女将さんの名前がセンコって聞いたときに、あ、母さんと同じ名前だって……」

「俺の家は、俺と母の二人暮らしで父親はいないんだ。誰かも知らない。母は元々都会で暮していたんだけど、俺を身ごもったときに田舎へ引っ越したんだ」

「田舎では俺と母はその土地の人間からしてみれば余所者だからね。意地悪もされた。何かと因縁をつけて嫌がらせをするやつもいた」

「ある日、朝俺が起きると枕元に五郎へと書いたメモと一緒に手袋が置いてあった。母は俺が起きるよりも早く仕事へ出かけていたから……」

「もう冬が近づいていたから外は寒かったから、俺はその手袋を早速はめて学校へ行った」

「でもいつも俺に意地悪をするやつが……あ、その意地悪をするやつは母さんの職場の上司の息子。そいつが手袋を俺から取り上げて地面に投げ捨て、足で踏みつけたんだ。手袋はドロドロさ」

「俺は思わずそいつを突き飛ばしたんだ。でもそいつ、勢いよくひっくり返っちゃって、転び方が悪かったのか足を怪我して……そいつの父親が怒鳴り込んで来たよ。その日の夜に」

「母は土下座して謝ってた。俺は部屋でじっとしていた。あいつの父親が帰った後、母に理由を聞かれて、朝の出来事を正直に話した。母はわかってくれたよ。でもだからって暴力はいけないよ、って優しく叱ってくれた」

「俺も大人になって、都会へ行くことになった。大学、あ、勉強するところね。そこへ4年間」

「最初は夏休み、冬休みと母の元へ帰っていたけど、そのうち忙しいのを理由にして帰らなくなって……大学を卒業して就職して、働くようになっても帰らなかった」

「そんな時、知らせが届いた。母が亡くなったって……」

「俺は急いで連絡をくれた病院へ向った。母は霊安室のベッドに横たわっていた……顔を見たらいつの間にか老けててさ。白髪も沢山混じってた」

「葬儀も無事に終わって母の遺品を整理していたとき、母の日記帳が出てきた」

「日々の出来事が色々と書いてあった。日記帳の最後のページを読んでみた……亡くなる前日の日付になってた」

「明日は五郎のアパートを訪ねてみるって書いてあった」

「そして翌日、母は亡くなった。両手に荷物一杯持って……」

「家を出て少しの距離の所で倒れている母を、通りがかった人が見つけてくれたけど、手遅れだった。心臓麻痺。あっけない最期だった」

「母は俺に会いに来ようとして亡くなったんだ。俺がちゃんと帰郷していればこんなふうに母は、亡くならなかったと思う」

「俺は元気だったのに、都会での暮らしが楽しくて、遊ぶのが楽しくて帰らなかっただけなのに……」

「後悔の念が胸の底から湧き出てきて……気がついたら俺は嗚咽して涙を流していた」

「ごめん、ごめん、母さん。涙がボロボロ落ちてきて、俺の顔はぐしゃぐしゃになってた」

「それから何年かして、この世界、いやこの土地に来てここで女将さんとヨリコちゃんに出会って……それに綺麗な女将さんに少し恋心も芽生えたりして…」

「でも、そんなときに女将さんの名前を聞いて……母さんと同じ名前、センコ」

「不思議なんだけどその瞬間、女将さんへの恋心が消えて……なんだか母とだぶって見えてさ、おかしいでしょ?女将さんのほうが若くて綺麗なのに……なのに女将さんが母さんのようにしか見えなくて」

「ゴロウさん。実を言うと私もゴロウさんに対してすこーし恋心があったみたいなの。でもね、昨日ゴロウさんが酔っ払って眠っていた寝顔を見ていたら、これは恋心じゃないって思ったの。ゴロウさんが自分の子供ように思えちゃって……年は近いのにね」

そう言うと女将は立ち上がり、

「さあ、もうこの話はおしまい。寝ましょう。お開きお開き」

「そうですね」

そう言うとゴロウも立ち上がった。

女将とゴロウがヨリコを見た。

顔をくしゃくしゃにしてヨリコが泣いていた。

 
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