114 / 114
第十四章
114.進路
ヤンセン伯爵家、執務室
リスナたち3人がジェームズに会ってから10日が経っていた。
執務席に座るリスナの目の前に、オリビアとジェームズが立ち、リスナが思い詰めた表情で2人に告げた。
「ジェームズ・ブラウンが亡くなった」
狼狽えるオリビアが聞き返す。
「いつ……亡くなったんですか?」
「我々が訪ねた、翌日の昼頃、吐血して、そのまま意識不明になり翌日、妻と娘に看取られて亡くなった」
「私たちが会いに行った翌日に、容態が変わるだなんて……」
ジェームズもやっと口を開いた。
「まだ元気そうだったのに……」
しょんぼりするジェームズの背中に手を当て、オリビアがリスナに尋ねた。
「では葬儀は終わっているんですね……」
「ああ、近所の教会で執り行われたが、彼の人柄か、弔問客が大勢来てくれたそうだ」
「彼の実家のブラウン公爵家からも、代理人が出席した」
ジェームズが質問する。
「我がヤンセン伯爵家からは? 誰か参列したのですか?」
リスナが寂しそうに言った。
「私が参列した。クロッグと一緒に」
オリビアがなにか言いたそうにしていたが、先にリスナが口を開いた。
「お前と、ジェームズが参列すれば、感極まって泣き出すかもしれんだろう?」
「……そ、それは……」オリビアが口ごもる。
「そんなことになってみろ。あちらの妻と娘は困惑するだろうし、他の参列者の目もある。だから、お前たちには教えなかった。済まないとは思っている。だから、暫くしたら、2人で墓参りに行ってくるがいい。それで我慢してくれ」
ジェームズがしんみりと話し出す。
「でも、お父様と話ができて、私は良かったと思っています。ありがとうございました、父上」
「そうね……これで良かったのかもしれませんね」
リスナは、執務室の重い空気を振り払うように、話を変えた。
リスナの目が鋭くなる。
「ところでジェームズ。お前は、騎士団に入るつもりなのか?」
「……」
「お前、私が幾つか知っているんだろうな? 81だぞ? 81。そろそろ、お前と交代したいのだが……」
ジェームズが申し訳なさそうに小さな声で
「あのう、父上。実は、もう入団手続きを済ませてしまいました」
「な、なんだと……では私の後は継がないと言うのか?」
「いえ、そうではありません。私は、ヤンセン伯爵家を継承致しますが、騎士団の仕事もしてみたいのです。あとで後悔しないように」
「しかし、私は81だぞ? 何度でも言うが、私は81! もうとっくに隠居している年なんだぞ?」
ジェームズが口を開く。
「3年間だけ、騎士団で働かせてくれませんか? 父上」
絶句するリスナ。
「3年って……お前なぁ、3年後は私は、84歳だぞ? 84!」
オリビアが口を挟む。
「お父様、ジェームズの言う通りにさせてやってくれませんか?」
「お前まで……」と文句を言いかけ、やめた。
「分かったよ。だが3年は無理だ。1年にしろ、1年に」
こうやってジェームズの騎士団生活が始まり、そして、この決断が、エリアの結婚へと結びついていくことになる。
第十四章 完
リスナたち3人がジェームズに会ってから10日が経っていた。
執務席に座るリスナの目の前に、オリビアとジェームズが立ち、リスナが思い詰めた表情で2人に告げた。
「ジェームズ・ブラウンが亡くなった」
狼狽えるオリビアが聞き返す。
「いつ……亡くなったんですか?」
「我々が訪ねた、翌日の昼頃、吐血して、そのまま意識不明になり翌日、妻と娘に看取られて亡くなった」
「私たちが会いに行った翌日に、容態が変わるだなんて……」
ジェームズもやっと口を開いた。
「まだ元気そうだったのに……」
しょんぼりするジェームズの背中に手を当て、オリビアがリスナに尋ねた。
「では葬儀は終わっているんですね……」
「ああ、近所の教会で執り行われたが、彼の人柄か、弔問客が大勢来てくれたそうだ」
「彼の実家のブラウン公爵家からも、代理人が出席した」
ジェームズが質問する。
「我がヤンセン伯爵家からは? 誰か参列したのですか?」
リスナが寂しそうに言った。
「私が参列した。クロッグと一緒に」
オリビアがなにか言いたそうにしていたが、先にリスナが口を開いた。
「お前と、ジェームズが参列すれば、感極まって泣き出すかもしれんだろう?」
「……そ、それは……」オリビアが口ごもる。
「そんなことになってみろ。あちらの妻と娘は困惑するだろうし、他の参列者の目もある。だから、お前たちには教えなかった。済まないとは思っている。だから、暫くしたら、2人で墓参りに行ってくるがいい。それで我慢してくれ」
ジェームズがしんみりと話し出す。
「でも、お父様と話ができて、私は良かったと思っています。ありがとうございました、父上」
「そうね……これで良かったのかもしれませんね」
リスナは、執務室の重い空気を振り払うように、話を変えた。
リスナの目が鋭くなる。
「ところでジェームズ。お前は、騎士団に入るつもりなのか?」
「……」
「お前、私が幾つか知っているんだろうな? 81だぞ? 81。そろそろ、お前と交代したいのだが……」
ジェームズが申し訳なさそうに小さな声で
「あのう、父上。実は、もう入団手続きを済ませてしまいました」
「な、なんだと……では私の後は継がないと言うのか?」
「いえ、そうではありません。私は、ヤンセン伯爵家を継承致しますが、騎士団の仕事もしてみたいのです。あとで後悔しないように」
「しかし、私は81だぞ? 何度でも言うが、私は81! もうとっくに隠居している年なんだぞ?」
ジェームズが口を開く。
「3年間だけ、騎士団で働かせてくれませんか? 父上」
絶句するリスナ。
「3年って……お前なぁ、3年後は私は、84歳だぞ? 84!」
オリビアが口を挟む。
「お父様、ジェームズの言う通りにさせてやってくれませんか?」
「お前まで……」と文句を言いかけ、やめた。
「分かったよ。だが3年は無理だ。1年にしろ、1年に」
こうやってジェームズの騎士団生活が始まり、そして、この決断が、エリアの結婚へと結びついていくことになる。
第十四章 完
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
【完結】今さら執着されても困ります
リリー
恋愛
「これから先も、俺が愛するのは彼女だけだ。君と結婚してからも、彼女を手放す気はない」
婚約者・リアムが寝室に連れ込んでいたのは、見知らぬ美しい女だった――
アンドレセン公爵令嬢のユリアナは、「呪われた子」として忌み嫌われながらも、政略結婚によりクロシェード公爵家の嫡男・リアムと婚約し、彼の屋敷に移り住んだ。
いつか家族になれると信じて献身的に尽くすが、リアムの隣にはいつも、彼の幼馴染であり愛人のアリスがいた。
蔑まれ、無視され、愛人の引き立て役として扱われる日々。
ある舞踏会の日、衆前で辱めを受けたユリアナの中で、何かがプツリと切れる。
「わかりました。もう、愛される努力はやめにします」
ユリアナがリアムへの関心を捨て、心を閉ざしたその夜。彼女は庭園で、謎めいた美しい青年・フィンレイと出会う。
彼との出会いが、凍りついていたユリアナの人生を劇的に変えていく。
一方、急に素っ気なくなったユリアナに、リアムは焦りと歪んだ執着を抱き始める。
・全体的に暗い内容です。
・注意喚起を含む章は※を付けています。
私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。