愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらちん黒糖

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第十四章

114.進路

​ヤンセン伯爵家、執務室
 
リスナたち3人がジェームズに会ってから10日が経っていた。
 
執務席に座るリスナの目の前に、オリビアとジェームズが立ち、リスナが思い詰めた表情で2人に告げた。
 
「ジェームズ・ブラウンが亡くなった」
 
狼狽えるオリビアが聞き返す。
 
「いつ……亡くなったんですか?」
 
「我々が訪ねた、翌日の昼頃、吐血して、そのまま意識不明になり翌日、妻と娘に看取られて亡くなった」
 
「私たちが会いに行った翌日に、容態が変わるだなんて……」
 
ジェームズもやっと口を開いた。
 
「まだ元気そうだったのに……」
 
しょんぼりするジェームズの背中に手を当て、オリビアがリスナに尋ねた。
 
「では葬儀は終わっているんですね……」
 
「ああ、近所の教会で執り行われたが、彼の人柄か、弔問客が大勢来てくれたそうだ」
 
「彼の実家のブラウン公爵家からも、代理人が出席した」
 
ジェームズが質問する。
 
「我がヤンセン伯爵家からは? 誰か参列したのですか?」
 
リスナが寂しそうに言った。
 
「私が参列した。クロッグと一緒に」
 
オリビアがなにか言いたそうにしていたが、先にリスナが口を開いた。
 
「お前と、ジェームズが参列すれば、感極まって泣き出すかもしれんだろう?」
 
「……そ、それは……」オリビアが口ごもる。
 
「そんなことになってみろ。あちらの妻と娘は困惑するだろうし、他の参列者の目もある。だから、お前たちには教えなかった。済まないとは思っている。だから、暫くしたら、2人で墓参りに行ってくるがいい。それで我慢してくれ」
 
ジェームズがしんみりと話し出す。
 
「でも、お父様と話ができて、私は良かったと思っています。ありがとうございました、父上」
 
「そうね……これで良かったのかもしれませんね」

リスナは、執務室の重い空気を振り払うように、話を変えた。
 
リスナの目が鋭くなる。
 
「ところでジェームズ。お前は、騎士団に入るつもりなのか?」
 
「……」
 
「お前、私が幾つか知っているんだろうな? 81だぞ? 81。そろそろ、お前と交代したいのだが……」
 
ジェームズが申し訳なさそうに小さな声で
 
「あのう、父上。実は、もう入団手続きを済ませてしまいました」
 
「な、なんだと……では私の後は継がないと言うのか?」
 
「いえ、そうではありません。私は、ヤンセン伯爵家を継承致しますが、騎士団の仕事もしてみたいのです。あとで後悔しないように」
 
「しかし、私は81だぞ? 何度でも言うが、私は81! もうとっくに隠居している年なんだぞ?」
 
ジェームズが口を開く。
 
「3年間だけ、騎士団で働かせてくれませんか? 父上」
 
絶句するリスナ。
 
「3年って……お前なぁ、3年後は私は、84歳だぞ? 84!」
 
オリビアが口を挟む。
 
「お父様、ジェームズの言う通りにさせてやってくれませんか?」
 
「お前まで……」と文句を言いかけ、やめた。
 
「分かったよ。だが3年は無理だ。1年にしろ、1年に」
 
こうやってジェームズの騎士団生活が始まり、そして、この決断が、エリアの結婚へと結びついていくことになる。


 
 



第十四章 完
    

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