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第二章
⑯ジェームズとダニー
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ダニーは王立女子学園の2年生である。
「ふう、やっと終わった」
下駄箱で靴を履き替えていると少しだけ校門の辺りが騒がしい気がする。
「なんだろう?」
ダニーはゆっくりと歩きながら校門の様子を窺う。
「あ」
小さな声を上げて一瞬立ち止まってしまうダニー。
「ジェームズじゃない」
ジェームズの姿を見つけて思わず笑ってしまった。
「きっとお父様に言われて迎えに来たのね」
ジェームズもダニーに気がついたようでホッとした顔をしている。
「ジェームズ、迎えに来てくれたの?」
「ああ、叔父さんに言われて来た」
「ジェームズ、借りてきた猫みたいだったわよ」
「まさか女子校だとは思わなかったんだ。びっくりしたよ」
二人は並んで歩く。
「ダニー」
「なに?」
「叔父さんが帰りに何か美味しいものでも食べて来いって、お小遣いをくれたんだけど、どうする?行くかい?」
ダニーは目を輝かせて答える。
「行く!」
「お、返事が早い」
ダニーはすぐに気になっていたお店が頭に浮かぶ。
「ねぇ、新しく出来たお店があるんだけど」
「いいよ、どこでも」
「わーい」
子どものようにはしゃぐダニーを見て、なぜか心が和むジェームズ。
酒を飲みに来る女性客ばかり見て来たせいか、ダニーの無邪気さが眩しく見えた。
ジェームズがダニーに連れて行かれた店は甘味処『キララ』。
「うわー、これ全部食べるの?」
「うん」
テーブルの上にはロールケーキにショートケーキ、チョコレート菓子、そしてクリームたっぷりのシュークリームが並んでいた。
「ダニーは甘いものが好きなんだな」
「私だけじゃないわよ。周りを見てよ。女の子は皆好きなの」
「ふーん」
ダニーに言われてジェームズは周りを見ようと思ったが、ちょっと恥ずかしかったので、目だけキョロキョロと動かしたのだが、その仕草を見ていたダニーが吹き出した。
「ぷっぷっーー!」
「何だ、どうした?」
「ジェームズってば変質者みたい。目だけ動かして」
「うるさい。黙って食べてなさい」
「うふ……ふふふ、はーい」
そこへ注文をしていたコーヒーが来た。店員からコーヒーを受け取って、一つをダニーの方へ置いてやる。
「さあ、コーヒーもどうぞ」
「ありがとう」
コーヒーを飲みながらダニーに尋ねる。
「ダニーは好きな人はいるの?」
「コホン……」
慌ててコーヒーを飲むダニー。
「ふー、何よ、急に」
「いや聞いてみただけ」
「あ、お父様に頼まれたんでしょう?聞いて来いって」
「ううん、全然」
「ほんと?」
「ああ」
ダニーは急に真面目な顔で話し始めた。
「私が養女なのは知ってるでしょう?」
「ああ」
「私は養護施設の門の前に捨てられていたの」
「私が5歳の時にお父様が施設にやって来て、大勢いる孤児の中から私を選んでくれた」
「お陰でこの年まで、なんの苦労もせずに生きて来られたわ」
「お父様には感謝している。だから私、恩を返さないといけないの」
「恩を返すって、どういうふうに?」
「お父様の唯一の心配の種は、ヤンセン伯爵家の存続。だから私がお婿さんを取れば解決するわ」
ダニーが話題を変える。
「ねえ、ジェームズはどうするの?執事見習いでうちへ来たんでしょう?」
「叔父さんがそう言ったのか?」
「うん。一ヶ月は客人扱いだって言ってた。ジェームズは執事になりたいの?」
「執事にはならないよ、とりあえず俺は、一ヶ月間、ヤンセン伯爵家で暮らしてみる。それだけだ。後のことは分からない」
「え?後のことは分からないって、いなくなるかもしれないの?」
「まあね、俺には地元にお店があるんだよ。母さんが残してくれた酒場が……」
「そうなんだ」ダニーが少し寂しそうに返事をした。
「さ、もう出ようか。あんまり食べすぎると太っちゃうぞ?」
「ふふんだ、これくらいじゃ太りませんよ、私は」
「はいはい」
ヤンセン伯爵家の執務室の窓からクロッグが門の方を見ている。そこへジェームズとダニーが仲良く話しながら歩いて帰って来た。
クロッグは嬉しそうに執事のループに言った。
「若い者は仲良くなるのが早いな。いいことである」
「このまま上手く行けばよろしいですね、旦那様」
「そうだな」
夜ベッドの上で色々と考えるジェームズ。
(ダニーも大変だな。叔父さんに恩を感じて自分の未来を叔父さんに委ねようと決めているようだ)
(俺はどうしよう。このままここにいてダニーと結婚して貴族になるのか?それとも地元に戻って酒場の店主としてやっていくのか?)
同じ頃、ダニーもベッドの上で考え事をしていた。
(私の未来は一つしかない……)
(お父様の希望通りにお婿さんを迎えてこの家を守って行くこと……それが私の運命。でも、それって嫌いじゃないわ、 私)
(だけど、問題はお婿さんよね……)
(やっぱり、長い一生をともに暮らす相手は、素敵な人がいいわよねぇ)
その時なぜだかジェームズの顔がダニーの頭に浮かんだ。
「ジェームズ……かぁ…」
(ジェームズでもいいんだけどなぁ……なんてね)
「ふう、やっと終わった」
下駄箱で靴を履き替えていると少しだけ校門の辺りが騒がしい気がする。
「なんだろう?」
ダニーはゆっくりと歩きながら校門の様子を窺う。
「あ」
小さな声を上げて一瞬立ち止まってしまうダニー。
「ジェームズじゃない」
ジェームズの姿を見つけて思わず笑ってしまった。
「きっとお父様に言われて迎えに来たのね」
ジェームズもダニーに気がついたようでホッとした顔をしている。
「ジェームズ、迎えに来てくれたの?」
「ああ、叔父さんに言われて来た」
「ジェームズ、借りてきた猫みたいだったわよ」
「まさか女子校だとは思わなかったんだ。びっくりしたよ」
二人は並んで歩く。
「ダニー」
「なに?」
「叔父さんが帰りに何か美味しいものでも食べて来いって、お小遣いをくれたんだけど、どうする?行くかい?」
ダニーは目を輝かせて答える。
「行く!」
「お、返事が早い」
ダニーはすぐに気になっていたお店が頭に浮かぶ。
「ねぇ、新しく出来たお店があるんだけど」
「いいよ、どこでも」
「わーい」
子どものようにはしゃぐダニーを見て、なぜか心が和むジェームズ。
酒を飲みに来る女性客ばかり見て来たせいか、ダニーの無邪気さが眩しく見えた。
ジェームズがダニーに連れて行かれた店は甘味処『キララ』。
「うわー、これ全部食べるの?」
「うん」
テーブルの上にはロールケーキにショートケーキ、チョコレート菓子、そしてクリームたっぷりのシュークリームが並んでいた。
「ダニーは甘いものが好きなんだな」
「私だけじゃないわよ。周りを見てよ。女の子は皆好きなの」
「ふーん」
ダニーに言われてジェームズは周りを見ようと思ったが、ちょっと恥ずかしかったので、目だけキョロキョロと動かしたのだが、その仕草を見ていたダニーが吹き出した。
「ぷっぷっーー!」
「何だ、どうした?」
「ジェームズってば変質者みたい。目だけ動かして」
「うるさい。黙って食べてなさい」
「うふ……ふふふ、はーい」
そこへ注文をしていたコーヒーが来た。店員からコーヒーを受け取って、一つをダニーの方へ置いてやる。
「さあ、コーヒーもどうぞ」
「ありがとう」
コーヒーを飲みながらダニーに尋ねる。
「ダニーは好きな人はいるの?」
「コホン……」
慌ててコーヒーを飲むダニー。
「ふー、何よ、急に」
「いや聞いてみただけ」
「あ、お父様に頼まれたんでしょう?聞いて来いって」
「ううん、全然」
「ほんと?」
「ああ」
ダニーは急に真面目な顔で話し始めた。
「私が養女なのは知ってるでしょう?」
「ああ」
「私は養護施設の門の前に捨てられていたの」
「私が5歳の時にお父様が施設にやって来て、大勢いる孤児の中から私を選んでくれた」
「お陰でこの年まで、なんの苦労もせずに生きて来られたわ」
「お父様には感謝している。だから私、恩を返さないといけないの」
「恩を返すって、どういうふうに?」
「お父様の唯一の心配の種は、ヤンセン伯爵家の存続。だから私がお婿さんを取れば解決するわ」
ダニーが話題を変える。
「ねえ、ジェームズはどうするの?執事見習いでうちへ来たんでしょう?」
「叔父さんがそう言ったのか?」
「うん。一ヶ月は客人扱いだって言ってた。ジェームズは執事になりたいの?」
「執事にはならないよ、とりあえず俺は、一ヶ月間、ヤンセン伯爵家で暮らしてみる。それだけだ。後のことは分からない」
「え?後のことは分からないって、いなくなるかもしれないの?」
「まあね、俺には地元にお店があるんだよ。母さんが残してくれた酒場が……」
「そうなんだ」ダニーが少し寂しそうに返事をした。
「さ、もう出ようか。あんまり食べすぎると太っちゃうぞ?」
「ふふんだ、これくらいじゃ太りませんよ、私は」
「はいはい」
ヤンセン伯爵家の執務室の窓からクロッグが門の方を見ている。そこへジェームズとダニーが仲良く話しながら歩いて帰って来た。
クロッグは嬉しそうに執事のループに言った。
「若い者は仲良くなるのが早いな。いいことである」
「このまま上手く行けばよろしいですね、旦那様」
「そうだな」
夜ベッドの上で色々と考えるジェームズ。
(ダニーも大変だな。叔父さんに恩を感じて自分の未来を叔父さんに委ねようと決めているようだ)
(俺はどうしよう。このままここにいてダニーと結婚して貴族になるのか?それとも地元に戻って酒場の店主としてやっていくのか?)
同じ頃、ダニーもベッドの上で考え事をしていた。
(私の未来は一つしかない……)
(お父様の希望通りにお婿さんを迎えてこの家を守って行くこと……それが私の運命。でも、それって嫌いじゃないわ、 私)
(だけど、問題はお婿さんよね……)
(やっぱり、長い一生をともに暮らす相手は、素敵な人がいいわよねぇ)
その時なぜだかジェームズの顔がダニーの頭に浮かんだ。
「ジェームズ……かぁ…」
(ジェームズでもいいんだけどなぁ……なんてね)
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