《完結》二人が結ばれたなら、それは運命です。

ぜらちん黒糖

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③忍び寄る影

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 四人の男が乗った馬車は、ステラ家が見える場所に止まっていた。

 リーダーの男が他の三人の男に説明をする。

「いいか、ステラ家の裏口の場所はもうわかったな?」

 頷く三人。

「この家には隠し金があると言う情報が入った。まあ、ガセネタかもしれんが、その場合は中にいる女を連れていく」

 リーダーは「安心しろ、殺しはやらないから」と声を潜めて言った。

 ホッとした表情の三人を見て、「決行は家に明かりが消えてから一時後いっときご。まあまだ時間はある。それまで飯でも食べにいかないか?」

 三人が頷いた。

「決まりだな」

 リーダーは御者席に移ると、繁華街へ向けて馬車を走らせた。



 夜、夕食が終わって、エステル、ユキリア、マクランの三人は食堂でお茶を飲みながら、家族会議を開いていた。

 議長役のユキリアが二人に話しかける。

「よろしいですか?明日でちょうど一週間です。明日の夕食後に、お二人の気持ちを聞かせていただきます。いい?」

 マクランが緊張の面持ちで返事をする。

「はい、覚悟は出来ています」

 母エステルも口を開く。

「私も」

 ユキリアが、

「私は今から先にお風呂に入って来ます。その間に、二人で最後の話し合いをしてください。それで、私がお風呂から上がったら話し合いはもう終わりにしてください」

 うつむいている二人を見ながら、ユキリアは立ち上がってお風呂へ行った。

 ユキリアは湯船に浸かりながら、母とマクランの事を考えていた。

 〘マクランさん、最初はふざけているのかと思ったけど、本気みたい〙

 この一週間のマクランの行動を見ていて、この人は本当に母のことが好きなんだなと思った。

 朝は、母と一緒に食事の準備をしたり、母が高いところの物を取ろうとしていると、マクランがさりげなく取ってあげたりしていた。

 言動も聞き苦しいことは一度もなかった。マクランが誰かの悪口を言ったり、不平不満を言ったりしたこともなかった。

 似顔絵を見て一目惚れし、実物の母を見てもまだ、恋心は消えない。

 〘そう言う男も、この世の中には一人ぐらい、いてもおかしくはないけど……〙

 〘でもねえ、これが身近で起きると、そばにいる者にとっては〙

「やっぱり迷惑よね。お母さん、どうするつもりなんだろう?」

「まさかとは思うけど、OKするんじゃないでしょうねえ」

 湯船に顔をつけて上げる。

「ぷはっ!」

 〘まあ、そんなことはありえないけどね、常識的に考えて……〙

 その頃、二人は食堂で、まったりとしながらお茶を飲んで話しあっていた。

「エステルさん」

「はい」

「俺の決心は変わりません。でも、エステルさんが断るなら俺は諦めます。気にしないでください」

 マクランが湯のみ茶碗を両手で挟んで、じっと見つめていた。

 エステルもまた、湯のみ茶碗を両手で挟み、少し湯のみ茶碗を揺らしながら、

「あのね、最初はあなたのこと迷惑だと思ったの」

「でもね、この年になっても、男性から慕われるのは嬉しいものね。なんだか、少しだけ心がウキウキしちゃった」

「だけど、18歳差はやっぱり大きいわ。今はまだいいかもしれないけどね」

「老いは突然やって来るものなよ。そのときになって後悔しても遅いのよ?」

「娘が言ったセリフじゃないけど、私が病気になって寝たきりになったら、あなた、老人の介護をするために結婚したことになるのよ?」

 エステルが寂しそうに呟く。

「そんなことになったら、あなたが気の毒よ」

 ずっと黙って聞いていたマクランが、喋りだす。

「エステルさん」

「はい」

「取り越し苦労はやめにしませんか?」

「え?」

 マクランがエステルの目を見て話す。

「どうなるかわからない先の事を、あれこれ心配するのは、やめにしませんか?」

「エステルさん。先をみるのは悪いことじゃないけど、先の先まで見すぎるのもよくないと思います」

 マクランはエステルの手を握って、

「俺と一緒に今を生きて見ませんか?」

 エステルの表情が少し和らいでいた。

 目から鱗が落ちるとはこの事かもしれない。エステルの気持ちにわずかに変化が起き始めていた。

 私は、先のことを心配しすぎて、今を見ていなかったのかもしれないと……



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