《完結》二人が結ばれたなら、それは運命です。

ぜらちん黒糖

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②マクラン・グレイ

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 ステラ家の食堂、無言のまま食事をする三人。

 ユキリアがマクランに話しかける。

「マクランさん」

 沈黙を破るユキリアの声にビクッとするマクランが返事をする。

「…はい」

 そして、明らかに不機嫌そうな顔で、ユキリアがマクランを見た。

「お見合いって、然るべき場所で、然るべき時間に、するものなんじゃないんですか?」

「すみませんでした。おばさんに似顔絵を見せられて、一目惚れをしてしまい、来てしまいました」

「似顔絵?似顔絵って?」ユキリアが母エステルをみた。エステルが口を挟む。

「サマンサは子供の時から似顔絵が得意なのよ。マクランさん、今、私の姿が描いてある似顔絵を持っているの?持っているなら出して見せて」

 マクランは大事そうに鞄から取り出し、エステルとユキリアに見せた。

 その似顔絵には、実際のエステルよりも10歳は年上のエステルが描いてあった。

「サマンサの目には、私がこう見えていたっていうわけね」

 ユキリアはこの似顔絵を見て、疑問に思ったことをマクランに尋ねた。

「マクランさん、あなた、この似顔絵を見て一目惚れしたって言ったわよね?」

「はい」

「だけど、この似顔絵はどう見ても60前の顔よ?この顔に惚れたの?本当に?」

「はい」

 ため息をつきながら、ユキリアはマクランを諭すように話しかける。

「マクランさんと、母は18も年が違います」

「年は関係ありません」とマクランが反論するがユキリアは手を緩めない。

「あのねえ、よーく考えてください。年が18も違うということは、あなたが60歳の時、母は78歳ですよ?世間を見てみなさい。78歳でピンピンしている人がどれだけいますか?ほとんど生きた屍のような感じでしょ?母の介護、できるんですか?オムツを取り替えたり、できるんですか?」

 さらに追い打ちをかけるユキリア。

「早ければもう2、3年でそうなるかもしれないんですよ?」

 隣で聞いていたエステルが慌てる。

「ユキリア、最低でもあと10年位は元気だと思うわよ?」

「あ母さんは黙っててくれる?」

 その時マクランがはっきりとした声で答えた。

「おむつ交換、喜んで、やらせていただきます」

 真剣な顔でそう言ったマクランを見て、ユキリアはもう、何も言えなかった。

 母エステルが口を開く。

「あなたの気持ちは分かりましたので、今日のところは、もうお引き取りください」

「はい」

 マクランは立ち上がると、

「あのう、今日は俺、どこで寝ればいいんですか?」と聞いてきた。

 呆れたユキリアが聞き返す。

「はあ?」

 ユキリアの表情が強ばっていたので、小さな声でマクランは説明した。

「あ、あの、サマンサおばさんから、ここで共同生活を送って、お互いの気持ちを確認してから、結婚を決めなさいって言われているんですけど」

 無言でマクランを睨みつけるユキリア。さすがに気後れしたのかマクランは、しょんぼりして、

「あの、俺、帰ります。突然お邪魔した俺が悪かったんです。ごめんなさい」

 マクランは一礼をして食堂を出て行った。

 エステルがはっきりした声でマクランに声をかけた。

「待ってください 、マクランさん」

 すぐに戻ってきたマクラン。

「今日はもう遅いから、泊まって行ってください。マクランさん」

「本当に泊まって行ってもいいのですか?」

 マクランはユキリアの顔をチラチラと見ながら伺いを立てた。

 エステルがユキリアを説得する。

「ね?ユキリア、いいでしょ?泊めてあげても」

「好きにすれば」

 ユキリアはぷいっとそっけなく言うと二階へ上がって行った。

 エステルが優しい口調で、

「気にしないでください、マクランさん。ユキリアはとってもいい子なんです。私を心配しているだけですから」

「いえ、俺は気にしていません。大丈夫です、エステルさん」

 なんとも複雑な表情で、マクランに声をかける。

「あのね、マクランさん。あなたの気持ちは嬉しいけど、この話は所詮無理な話よ?」

 黙ってエステルの言葉を聞いているマクラン。

「だから、私のことは諦めてください」

 エステルは一度言ってみたかったセリフを言ってみたのだが、マクランは、

「エステルさん、俺をしばらくここに置いてくれませんか?そして一緒に暮らしていればお互いの性格も分かるし、俺のことも、もっと知ってもらいたい!だめですか?」

 エステルは少しの間考えていたが、マクランの熱意にほだされて、

「分かったわ、一週間だけね。一週間後二人の考えが一致しなかったら、この話はなかったことにしてくれない?」

 マクランは神妙な表情でエステルの手を握り、「分かりました」と答えた。

 エステルの心は少し乱れていた。夫以外に手を握られたことのなかったエステルは、『いきなり手を握るなんて反則よ!』と思いながら マクランに言った。

「手を離してくださる?」

 このセリフもエステルが一度言ってみたかったセリフであった。


 マクランは慌てて握っていた手を離した。














     
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