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第二章
⑮ペールピンクのマニキュア
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純子は、玄関に突っ立っている翔太に上がるように言った。
「翔太、早くこっち来て」
「え?う、うん」
翔太が純子に言われるまま上がると、浴室に連れて行かれ、水で洗い流すように言われる。
仕方なく、靴下を脱いで、ズボンの裾を太もも近くまで上げた。そこへシャワーのお湯をかけて洗い流す。
「いってぇー!」
傷口がしみて思わず声が出る翔太。
「我慢しなさい、男の子でしょう?」
「……」
そして、タオルで傷口と足を拭いて、キッチンに連れてくると、翔太を椅子に座らせ傷口に消毒液をかけて手当した。
「翔太のところには消毒液とかあるの?」
「ない。怪我なんてしないから」
「本当に落ち着きがないんだから、あなたは」
「絆創膏はどうする?」
「いや、いいよ、それはあるから」
「そう、なら良いけど……でも明日はデートはやめにしましょう」
「……」
「明日はゆっくり休んでね」
「いや、家にはいられないよ。有給勝手に取っちゃったし、それにこの位の傷で休んだら変だろう?」
「それじゃあ、デートするの?」
「ああ、約束だからな」
「ううん、やっぱりやめにしておきましょう。さ、もう2階に行きなさい」
翔太はなぜか立ち上がらずに、椅子に座ったまま純子に話しかけた。
「陽子さん」
「……」固まる純子。
翔太が話を続ける。
「『陽子さん』っていう人と、俺、結婚前に同棲していたことがあるんだけど……その人が、純子さんに似てるんだ、とても」
純子はピクリともせず、ただじっとして翔太の声に耳を傾けていた。
「なんとなくさ、まぁ、雰囲気は似てるんだけど、陽子さんはもう少し細くて髪も長くて、いつもマニキュアをしていた、ペールピンクっていうの?淡いピンク色の奴」
そっと指を隠す純子。
「さっきのさ、純子さんが言った言葉、『我慢しなさい、男の子でしょう?』って」
「……」
「俺、よくそう言って叱られたんだ」
純子がか細い声で聞き返す。
「懐かしがってるけど、それならどうしてその人と別れたの?」
「運命だと思う」
「え?」
「結ばれる運命ではなかったんだと思う。本当に些細なことで家を飛び出したんだよね。今だったら、陽子さんの言う通りにしていたと思う。あ、その頃俺、陽子さんのヒモ状態だったから、あはは」
翔太は立ち上がると潰れたケーキの箱をつまみ上げた。
「ありがとう、手当してくれて」
ズボンを直し、玄関で靴を履いた。
「じゃあ、デートは中止ということで」
ドアノブに手をかけた時、玄関のドアが叩かれた。
コンコン
「純子さん、205の西村ですけどぉ」
美知留がドアの外に立っていた。
コンコン
「純子さーん、西村ですぅー」
別に悪いことをしていたわけじゃないのに……翔太の顔が引きつっていた。
「翔太、早くこっち来て」
「え?う、うん」
翔太が純子に言われるまま上がると、浴室に連れて行かれ、水で洗い流すように言われる。
仕方なく、靴下を脱いで、ズボンの裾を太もも近くまで上げた。そこへシャワーのお湯をかけて洗い流す。
「いってぇー!」
傷口がしみて思わず声が出る翔太。
「我慢しなさい、男の子でしょう?」
「……」
そして、タオルで傷口と足を拭いて、キッチンに連れてくると、翔太を椅子に座らせ傷口に消毒液をかけて手当した。
「翔太のところには消毒液とかあるの?」
「ない。怪我なんてしないから」
「本当に落ち着きがないんだから、あなたは」
「絆創膏はどうする?」
「いや、いいよ、それはあるから」
「そう、なら良いけど……でも明日はデートはやめにしましょう」
「……」
「明日はゆっくり休んでね」
「いや、家にはいられないよ。有給勝手に取っちゃったし、それにこの位の傷で休んだら変だろう?」
「それじゃあ、デートするの?」
「ああ、約束だからな」
「ううん、やっぱりやめにしておきましょう。さ、もう2階に行きなさい」
翔太はなぜか立ち上がらずに、椅子に座ったまま純子に話しかけた。
「陽子さん」
「……」固まる純子。
翔太が話を続ける。
「『陽子さん』っていう人と、俺、結婚前に同棲していたことがあるんだけど……その人が、純子さんに似てるんだ、とても」
純子はピクリともせず、ただじっとして翔太の声に耳を傾けていた。
「なんとなくさ、まぁ、雰囲気は似てるんだけど、陽子さんはもう少し細くて髪も長くて、いつもマニキュアをしていた、ペールピンクっていうの?淡いピンク色の奴」
そっと指を隠す純子。
「さっきのさ、純子さんが言った言葉、『我慢しなさい、男の子でしょう?』って」
「……」
「俺、よくそう言って叱られたんだ」
純子がか細い声で聞き返す。
「懐かしがってるけど、それならどうしてその人と別れたの?」
「運命だと思う」
「え?」
「結ばれる運命ではなかったんだと思う。本当に些細なことで家を飛び出したんだよね。今だったら、陽子さんの言う通りにしていたと思う。あ、その頃俺、陽子さんのヒモ状態だったから、あはは」
翔太は立ち上がると潰れたケーキの箱をつまみ上げた。
「ありがとう、手当してくれて」
ズボンを直し、玄関で靴を履いた。
「じゃあ、デートは中止ということで」
ドアノブに手をかけた時、玄関のドアが叩かれた。
コンコン
「純子さん、205の西村ですけどぉ」
美知留がドアの外に立っていた。
コンコン
「純子さーん、西村ですぅー」
別に悪いことをしていたわけじゃないのに……翔太の顔が引きつっていた。
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