《完結》辱めを受けた女は復讐の狂気に人生をかける

ぜらちん黒糖

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第三章

㉕悪行の果て

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​山荘から東に遠く離れた、海沿いの静かなホスピス病棟。

​姉の純子は、わずかに開いた窓から、冬の曇り空を見上げていた。

手に握られた1枚の写真には、笑っている陽子の姿があった。

​その数日前、身分を貸していた妹から、一度だけ、非常に短いメールが届いていた。

​『ありがとう、お姉ちゃん。全て終わったわ』

​それ以上の言葉はなかったが、姉にはそれで十分だった。

自分の人生は不幸続きだったが、最後に妹の無念を晴らす手助けができて満足していた。

1ヶ月後、​純子は、そっと息を引き取った。傍らにいた陽子がつぶやいた。

「天国で幸せになってね、お姉ちゃん」

​死後、彼女の身分情報は警察に追跡されることはなかった。

妹は、姉の死を最後に「純子」という名義を完全に放棄し、世間から消え、「陽子」に戻った。

​❖

​それから、半年後のことだった。

あの日、山荘からなんとか脱出して山を下り、やっと街へ出られたのは外が薄暗くなってからだった。

疲れ果てた2人はなんとかタクシーを捕まえてアパートに戻ったが、105号室の純子はもういなかった。部屋は空き家になっていた。

自室に戻ると手紙が入っていた。新聞の切り抜き文字を繋ぎ合わせて書いてあった。

『ずっと見ているから』そう書いてあった。

それから2人はいつも周りをキョロキョロ見回して、落ち着かない生活を送っていた。

警察へ相談に行こうかと2人で話し合ったが、結局それはしなかった。

話せば、自分たちのやったことが公になるかもしれなかったからだ。

そのうち2人は互いに悪口を言い始めた。

「お前のせいだ」「あなたのせいよ」

いつしか2人はお互いに名前を呼ばなくなっていた。

そして、たまたま1匹のゴキブリを発見して、美知留が声を上げた瞬間、翔太が美知留を殴ってしまった。

「大きな声をだすな!」

と怒鳴る翔太に、殴られた美知留は逆上した。

キッチンから包丁を取り出すと、翔太のお腹に突き刺した。翔太は美知留の首を、力いっぱい両手で絞めた。

翌日、仕事に出てこない美知留。パン屋の店主が心配して電話をかけてみたが連絡が取れない。それでアパートを訪ねて来て、2人が倒れているのを発見した。


美知留はキッチンの床で、翔太は玄関ドアの前で、お腹を押さえて力尽きていた。床には血まみれの包丁が落ちていた。

ドアの鍵を開けたところで、翔太は力尽きたらしい。

​2人の人生はたった1匹のゴキブリの出現であっけなく終了してしまった。

​❖ 

​山荘はその後、取り壊され、その土地は、誰も買い手のないまま荒れ果てていった。


    
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