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第三章
㉔長生きしてね
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純子の絶叫が部屋中に響き渡り、翔太の目から涙がこぼれ落ちていた。
純子はゆっくりとプロジェクターのスイッチを切った。
部屋は再び暗闇となる。
翔太は、純子の怒りが自分にも向けられるとは思っていなかったので、驚きと後悔、恐怖で呼吸すら途切れ、ただ呆然としていた。
暗闇の中、美知留もまた、涙を流し、頭を垂れながらぐったりとしていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
美知留のつぶやくお経のような声が室内に響く。
純子はプロジェクターに差し込まれていたUSBメモリーを抜き取ると、ポケットに収めた。
「これで、私の言いたいことは全て言ったわ」
純子は、部屋の明かりをつけると2人の前に立った。蛍光灯の明かりに目を細め、眩しそうにする翔太と美知留。
2人の表情が恐怖の色に変わる。純子の手にサバイバルナイフが握られていたからだ。
美知留は恐怖に体を震わせ、命乞いをした。
「ごめんなさい、命だけは、命だけは、命だけは、助けてください、助けてください、助けてください!」
純子は淡々と告げた。
「人を不幸にして、幸せになれるはずがない。夫婦の真似事をして幸せになったつもりでいたようだけど、そんなことは私が絶対に許さない」
純子はまず、翔太の椅子に近づき、手足と胴体を縛るロープを素早く切り裂き、最後に猿ぐつわを解いた。
翔太の口から声にならない声が出る。
「あ、くっ……う、あぁ……」
呆然と純子を見上げる翔太に、純子は声をかける。
「彼女はあなたが助けてあげなさい。私が姿を消した後でね……」
そして、スマホを取り出し、画面を2人に向けて話しかけた。
スマホには2人の姿が鮮明に写っていた。
「この映像は、永遠に保存される。あなたたちが今ここでしたこと、そして過去にしたことは、すべて記録されている」
「あなたたちが、もし警察に届け出ようとしたり、誰かにこの山荘での出来事を話そうとしたら……。その瞬間、あなたたちの過去の犯罪は、誰の目にも触れることになるでしょう」
「あなたたちの汚れた関係、美知留さんのしたこと、翔太さんの無責任な裏切り、すべてよ」
純子が釘を刺す。
「安心しなさい。あなたたちが死ぬまで口を閉じていれば、何の心配もありません」
「だけど、もし誰かに一言でも喋ったら、私の復讐は再び動き始めるから、その時はあなたたちの命を保証できない」
「私は永遠にあなたたち2人を、影から見ているから、ずっと見ているから」
純子は冷徹な笑みを浮かべ、鋭い視線を向けてつぶやいた。
「それが私の生きがいになっているの。だからお願い。2人とも長生きしてね」
最後にそれだけ言うと純子は、ソファの背もたれにかけてあった服に、素早く着替え部屋を出た。
姿を消した純子を見て、慌てて美知留が翔太に訴えかける。
「翔太、お願い、早く私のロープを解いて!」
呆然と純子が出ていく姿を見ていた翔太が、美知留の声に反応してやっと椅子から立ち上がった。
純子は山荘の1階の奥の部屋から、あらかじめ用意しておいた別のリュックサックだけを持つと、玄関を出て、濃いグレーのステーションワゴンの運転席に乗り込んだ。
エンジン音が静かに響き、車はゆっくりと走り出す。
純子が二度と振り返ることはなかった。
山荘に残された翔太と美知留の耳に車の走り去る音が虚しく聞こえていた。
純子はゆっくりとプロジェクターのスイッチを切った。
部屋は再び暗闇となる。
翔太は、純子の怒りが自分にも向けられるとは思っていなかったので、驚きと後悔、恐怖で呼吸すら途切れ、ただ呆然としていた。
暗闇の中、美知留もまた、涙を流し、頭を垂れながらぐったりとしていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
美知留のつぶやくお経のような声が室内に響く。
純子はプロジェクターに差し込まれていたUSBメモリーを抜き取ると、ポケットに収めた。
「これで、私の言いたいことは全て言ったわ」
純子は、部屋の明かりをつけると2人の前に立った。蛍光灯の明かりに目を細め、眩しそうにする翔太と美知留。
2人の表情が恐怖の色に変わる。純子の手にサバイバルナイフが握られていたからだ。
美知留は恐怖に体を震わせ、命乞いをした。
「ごめんなさい、命だけは、命だけは、命だけは、助けてください、助けてください、助けてください!」
純子は淡々と告げた。
「人を不幸にして、幸せになれるはずがない。夫婦の真似事をして幸せになったつもりでいたようだけど、そんなことは私が絶対に許さない」
純子はまず、翔太の椅子に近づき、手足と胴体を縛るロープを素早く切り裂き、最後に猿ぐつわを解いた。
翔太の口から声にならない声が出る。
「あ、くっ……う、あぁ……」
呆然と純子を見上げる翔太に、純子は声をかける。
「彼女はあなたが助けてあげなさい。私が姿を消した後でね……」
そして、スマホを取り出し、画面を2人に向けて話しかけた。
スマホには2人の姿が鮮明に写っていた。
「この映像は、永遠に保存される。あなたたちが今ここでしたこと、そして過去にしたことは、すべて記録されている」
「あなたたちが、もし警察に届け出ようとしたり、誰かにこの山荘での出来事を話そうとしたら……。その瞬間、あなたたちの過去の犯罪は、誰の目にも触れることになるでしょう」
「あなたたちの汚れた関係、美知留さんのしたこと、翔太さんの無責任な裏切り、すべてよ」
純子が釘を刺す。
「安心しなさい。あなたたちが死ぬまで口を閉じていれば、何の心配もありません」
「だけど、もし誰かに一言でも喋ったら、私の復讐は再び動き始めるから、その時はあなたたちの命を保証できない」
「私は永遠にあなたたち2人を、影から見ているから、ずっと見ているから」
純子は冷徹な笑みを浮かべ、鋭い視線を向けてつぶやいた。
「それが私の生きがいになっているの。だからお願い。2人とも長生きしてね」
最後にそれだけ言うと純子は、ソファの背もたれにかけてあった服に、素早く着替え部屋を出た。
姿を消した純子を見て、慌てて美知留が翔太に訴えかける。
「翔太、お願い、早く私のロープを解いて!」
呆然と純子が出ていく姿を見ていた翔太が、美知留の声に反応してやっと椅子から立ち上がった。
純子は山荘の1階の奥の部屋から、あらかじめ用意しておいた別のリュックサックだけを持つと、玄関を出て、濃いグレーのステーションワゴンの運転席に乗り込んだ。
エンジン音が静かに響き、車はゆっくりと走り出す。
純子が二度と振り返ることはなかった。
山荘に残された翔太と美知留の耳に車の走り去る音が虚しく聞こえていた。
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