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③サラとネロ
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ネロ王子はフードを被ってマスクをして、一人で城を抜け出していた。
城の中にずっといると、息が詰まりそうになって、時々城下へ遊びに出ていたのだ。
いつもは、側近を連れて城を出るのだが、側近のローバーが体調不良で、今日は休みでいなかった。
普段なら、そんな時は一人では城を出ないのだが、もう城下には慣れたし、一人でも大丈夫だろうと思ったのだ。
ドン
「あ、失敬。」
誰かに当たったので、謝ってそのまま行こうとしたネロ王子に、大男が声を掛けた。
「待ちな。」
ネロ王子が振り向くと
パンッ
思い切り頬を平手打ちをされた。
「何をする。この、無礼者。」
ドンッ
すかさず今度は、腹を蹴られたネロ王子。
その場にうずくまり、痛みに耐える。
「おい。人にぶつかっておいて、失敬だけで、済むと思っているのか?あーん。」
大男が凄んできた。
「じゃあどうすればいいんだ?」
「金だよ。金を払えよ。」
「分かった。これでいいか?」
そういうと、金貨を1枚差し出した。
大男はニヤリと笑って受け取り
「まだ足りねーな。その財布、全部よこせ。」
「な、なんだと。」
この財布の中身は、昨日もらったばかりのお小遣いだ。
これは渡せない。
「お兄さん。」
ネロ王子が振り向くと、サラ男爵令嬢がいた。
「そんなタカリ野郎に渡す必要はないわよ。」
サラがネロ王子の前に立って、大男に言った。
「お前だな。最近ここらへんで当たり屋をやっているのは?」
「なんだとう。小娘が。」
「お?私とやる気か?」
「なんだ。俺に抱かせてくれるのか?」
急に身震いをするサラ。
「どうした。小娘。震えているじゃないか。謝るなら今のうちだぞ。まあ、許さないけどな。」
「ケダモノに話しかけられて、寒気がしただけだ。」
顔を真っ赤にして大男はサラに殴りかかった。
サラは慌てずに、大男の股間に狙いを定めて、思い切り、右足を振り上げた。
「ふぉおうっっっっっっっ!」
大男は、股間を抑えてうずくまった。
「衛兵!衛兵はおらんのか!」
すぐに衛兵が駆けつけてきた。
「コイツを連れていけ。余罪を調べ上げて、しっかりと罪を償わせよ。」
大男は衛兵に連れて行かれた。
サラはネロ王子に
「怪我はないか?」と尋ねた。
「ああ。助かった。ありがとう。サラ男爵令嬢。」
「ん?私の名前を知っているのか?」
ネロ王子はマスクを取って、サラに話しかけた。
「ネロ・ワースリーだ。」
「ネロ・ワースリー?」
ジッとネロ王子の顔を見つめるサラ男爵令嬢。
サラはそっとネロ王子の側に来て、怯えるような仕草をして言った。
出来るだけ可愛らしく。
「怖かったあ。」
顔を引きつらせて、ネロ王子が尋ねた。
「サラは、ここに何をしに来たんだ?」
「私は父上のために、草団子を買いに参りました。」
孝行娘を装いながら
「草団子を食べて、いえ、注文していたら、騒ぎが起こったので。ネロ殿下こそ、何しに城下へ参られたのですか?」
「私はただの暇つぶしだ。」
「そうですか。」
その時、団子屋の親父がサラに声を掛けた。
「お嬢ちゃん。お腹は大丈夫かい?そんなに食べて。」
屋台のカウンターの上には、食べた後の串が、10本ほど置いてあった。
ネロ王子がそれを見て
「父上に買って帰るのではなかったのか?」
サラは頬をピクピクさせながらネロ殿下に言った。
「毒味です。」
店の親父がずっこけた。
「お嬢ちゃん。毎日毒味ご苦労さま。今日の毒味はどうだった?」
「ええ。とっても美味しか・・・いえ、問題はありませんでした。」
ネロ王子は笑っていた。
店の親父が紙に包んでサラに渡した。
「はい。これ。お持ち帰りの草団子。」
サラは代金を払ってから
「父上に、これを持って帰らねばなりませんので、これにて失礼致します。」
サラはネロ王子にお辞儀をして立ち去った。
「アシャード・マクドナルド男爵の娘、サラ男爵令嬢か・・・。」
さっきのサラは、城で会ったサラと違って、肩に力が入ってなくて自然で・・・なんか言葉ではうまく言えないが、サラに好感を持ったネロ王子であった。
ネロは団子屋の親父に向って言った。
「さて私も毒味をしてみるか。」
親父が笑いながら答えた。
「草団子中毒になってもしらねえぞ。」
城の中にずっといると、息が詰まりそうになって、時々城下へ遊びに出ていたのだ。
いつもは、側近を連れて城を出るのだが、側近のローバーが体調不良で、今日は休みでいなかった。
普段なら、そんな時は一人では城を出ないのだが、もう城下には慣れたし、一人でも大丈夫だろうと思ったのだ。
ドン
「あ、失敬。」
誰かに当たったので、謝ってそのまま行こうとしたネロ王子に、大男が声を掛けた。
「待ちな。」
ネロ王子が振り向くと
パンッ
思い切り頬を平手打ちをされた。
「何をする。この、無礼者。」
ドンッ
すかさず今度は、腹を蹴られたネロ王子。
その場にうずくまり、痛みに耐える。
「おい。人にぶつかっておいて、失敬だけで、済むと思っているのか?あーん。」
大男が凄んできた。
「じゃあどうすればいいんだ?」
「金だよ。金を払えよ。」
「分かった。これでいいか?」
そういうと、金貨を1枚差し出した。
大男はニヤリと笑って受け取り
「まだ足りねーな。その財布、全部よこせ。」
「な、なんだと。」
この財布の中身は、昨日もらったばかりのお小遣いだ。
これは渡せない。
「お兄さん。」
ネロ王子が振り向くと、サラ男爵令嬢がいた。
「そんなタカリ野郎に渡す必要はないわよ。」
サラがネロ王子の前に立って、大男に言った。
「お前だな。最近ここらへんで当たり屋をやっているのは?」
「なんだとう。小娘が。」
「お?私とやる気か?」
「なんだ。俺に抱かせてくれるのか?」
急に身震いをするサラ。
「どうした。小娘。震えているじゃないか。謝るなら今のうちだぞ。まあ、許さないけどな。」
「ケダモノに話しかけられて、寒気がしただけだ。」
顔を真っ赤にして大男はサラに殴りかかった。
サラは慌てずに、大男の股間に狙いを定めて、思い切り、右足を振り上げた。
「ふぉおうっっっっっっっ!」
大男は、股間を抑えてうずくまった。
「衛兵!衛兵はおらんのか!」
すぐに衛兵が駆けつけてきた。
「コイツを連れていけ。余罪を調べ上げて、しっかりと罪を償わせよ。」
大男は衛兵に連れて行かれた。
サラはネロ王子に
「怪我はないか?」と尋ねた。
「ああ。助かった。ありがとう。サラ男爵令嬢。」
「ん?私の名前を知っているのか?」
ネロ王子はマスクを取って、サラに話しかけた。
「ネロ・ワースリーだ。」
「ネロ・ワースリー?」
ジッとネロ王子の顔を見つめるサラ男爵令嬢。
サラはそっとネロ王子の側に来て、怯えるような仕草をして言った。
出来るだけ可愛らしく。
「怖かったあ。」
顔を引きつらせて、ネロ王子が尋ねた。
「サラは、ここに何をしに来たんだ?」
「私は父上のために、草団子を買いに参りました。」
孝行娘を装いながら
「草団子を食べて、いえ、注文していたら、騒ぎが起こったので。ネロ殿下こそ、何しに城下へ参られたのですか?」
「私はただの暇つぶしだ。」
「そうですか。」
その時、団子屋の親父がサラに声を掛けた。
「お嬢ちゃん。お腹は大丈夫かい?そんなに食べて。」
屋台のカウンターの上には、食べた後の串が、10本ほど置いてあった。
ネロ王子がそれを見て
「父上に買って帰るのではなかったのか?」
サラは頬をピクピクさせながらネロ殿下に言った。
「毒味です。」
店の親父がずっこけた。
「お嬢ちゃん。毎日毒味ご苦労さま。今日の毒味はどうだった?」
「ええ。とっても美味しか・・・いえ、問題はありませんでした。」
ネロ王子は笑っていた。
店の親父が紙に包んでサラに渡した。
「はい。これ。お持ち帰りの草団子。」
サラは代金を払ってから
「父上に、これを持って帰らねばなりませんので、これにて失礼致します。」
サラはネロ王子にお辞儀をして立ち去った。
「アシャード・マクドナルド男爵の娘、サラ男爵令嬢か・・・。」
さっきのサラは、城で会ったサラと違って、肩に力が入ってなくて自然で・・・なんか言葉ではうまく言えないが、サラに好感を持ったネロ王子であった。
ネロは団子屋の親父に向って言った。
「さて私も毒味をしてみるか。」
親父が笑いながら答えた。
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