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④二人三脚競技
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「今度の運動会に、ネロ殿下が出場されるそうだ。」
「へえ。王族が出るなんて珍しいな。」
「出る種目は二人三脚だそうだ。」
「殿下は誰と組むんだろうな。」
側近のローバーが王子に尋ねた。
「殿下は、誰と組むんですか?」
「さあな。誰でもいいぞ。」
ローバーが王子にメモを渡した。
「殿下と二人三脚をやりたい者を募集しましたところ、こちらの3名が申し出ました。」
ネロがメモを見た。
「ローバー。サラ男爵令嬢の名前が書いてないが?」
「サラ男爵令嬢は申し出ておりません。」
「そうか。」
「サラ男爵令嬢をお望みでございますか?」
「・・・。」
城の窓から城下を見た。
「ローバー。城下へ行くぞ。」
「はっ。」
ネロ王子とローバーは、城下の街中をブラブラと歩いていた。
「ローバー。お前は私から離れて警護していろ。」
「はっ。」
ローバーが王子と距離をとった。
ネロは草団子を買っているサラ男爵令嬢に話しかけた。
「やあ。サラ男爵令嬢。また会ったな。」
「あ、ネロ殿下。」
いつもは草団子を三つまとめて口に入れるのだが、一つだけにした。
「サラ男爵令嬢は、草団子が好きなのか?」
サラはネロ王子に草団子を1本差し出した。
「食べて見て下さい。理由がわかりますから。」
「ふふ、食べなくても知っているぞ。」
「え?」
「この前、サラと別れた後、私も毒味をしたのだ。美味かった。」
「そうですか。毒味をされたのですか。」
「ああ、毒味をした。」
店の親父がたまらず声を掛けた。
「お客さーん。やめてよ。毒味毒味っていうの。」
サラと王子は顔を見合わせて笑った。
「ごめんなさい。」
「すまなかった。」
二人は公園の噴水の所で休憩をしていた。
「ネロ殿下は、時々城下にお越しになるのですか?」
「ああ。城の中にいると息が詰まりそうになるんだ。だから時々来ている。サラは?」
「私は元々平民ですから、ここが庭のようなものです。」
「そうか・・・サラはこの前謁見した時と全然違うのだが、どちらが本当のサラなんだ?」
サラは自虐的に、少し笑って答えた。
「どちらも私です。私、緊張すると頭の中が真っ白になるんです。そうなると、もう会話がトンチンカンになって。」
ネロ王子は、謁見の時のサラを思い浮かべながら
「ああ・・・ん?おい。今は緊張していないのか?」
「あ、今は緊張していませんね。緊張した方がいいですか?」
「いや。今のほうがいいぞ。うん。」
ネロ王子は立ち上がって
「私はもう帰る。」
サラを見て
「また会いに来てもいいか?」
とネロ王子が聞いた。
「はい。」
サラは小さな声で答えた。
ネロ王子は右手を上げて
「じゃあな。」
と言って立ち去った。
いつの間にか、自然にネロ王子はスキップをしていた。
ローバーがネロ王子に声を掛けた。
「殿下。ラブスキップでございますな。」
スキップをやめて、歩き始めたネロ王子は
「ローバー。」
「はっ。」
「今の命名は良かったぞ。」
「はっ。」
ネロ王子は、私も1本ネジが外れたのかもしれないなと思った。
「殿下。いつからサラ男爵令嬢と恋仲になられたのですか?」
「はあ?なに言ってるの?お前は!」
「殿下。サラ男爵令嬢のラブアタックにやられましたな?」
「ローバー。」
「はい。」
「二人三脚の相手はサラ男爵令嬢にする。」
「はっ。」
運動会当日
ローバーが、王子を呼びに来た。
「殿下。間もなく二人三脚の競技が始まります。」
「わかった。今行く。」
運動場へ行くとサラが待っていた。
「待たせたな。サラ男爵令嬢。」
「いえ。今日は宜しくお願い致します。ネロ殿下。」
ローバーが、王子の右足首とサラの左足首を紐で結んだ。
「サラ男爵令嬢。二人三脚競技のときは、サラと呼び捨てにする。いいか?」
「はい。殿下。」
「私のことはネロと呼んでくれ。」
「本当に宜しいのですか?」
「かまわん。」
「さればネロ。」
「なんだサラ。」
「1番を狙いましょう。」
「わかった。では、行こうサラ。」
スタート位置で構えるサラとネロ。
号令をかける教師が大声を出す。
「並んで。よーいどん!」
ネロ王子とサラは、息もぴったりで軽快に走っていた。
今の所、1位だった。
「あ!」
ネロ王子がつまづいて転んだ。
サラはすぐに立ち上がって、ネロ王子を立たせて汚れたところを手ではたいた。
その間に、ふた組に抜かれて3位に落ちていた。
「サラ。すまなかった。」
「かまいません。さあ。走りましょう。ネロ。」
「ああ。」
二人は再び、息の合ったリズムで走り出した。
ひと組に追いつき、追い抜いた。
2位になった。
ゴール数メートル手前で、先頭に追いつき、追い抜こうとした瞬間、ネロ王子がつまづいて転んだ。
続いてサラも転んだ。
しかし二人はすぐに立ち上がりゴールに向って走り出した。
結果は4位だった。
転んでいる間に、ふた組に抜かれてしまったのだ。
はあはあ、と息を乱すサラとネロ王子。
「サラ。すまなかった。私が転んでしまったから負けたな。」
サラは満面の笑みで、ネロ王子に言った。
「楽しかったですね。」
「え?」
「私、あんなに一生懸命走ったの久しぶりでした。」
ネロ王子はボケ~ッとした顔でサラの顔を見つめて
「ああ、私もだ。あの、サラは怒っていないのか?私のことを。」
「怒る訳がないでしょう?こんなに楽しかったのに。ネロ殿下は楽しくはなかったですか?」
「そうだな。楽しかった。私もこんなに一生懸命に走ったのは久しぶりだった。」
ローバーがネロ王子を呼びに来た。
「ネロ殿下。お時間です。」
ネロ王子は、ローバーを手で制してサラにもう一度声を掛けた。
「また来年も二人三脚に一緒に出ないか?私と。」
サラはニッコリと笑って
「ええ。喜んで。」と言った。
ネロ王子はサラと別れた後、ローバーに命令した。
「ローバー。明日、城下に出るぞ。準備しておけ。」
「はっ!」
「へえ。王族が出るなんて珍しいな。」
「出る種目は二人三脚だそうだ。」
「殿下は誰と組むんだろうな。」
側近のローバーが王子に尋ねた。
「殿下は、誰と組むんですか?」
「さあな。誰でもいいぞ。」
ローバーが王子にメモを渡した。
「殿下と二人三脚をやりたい者を募集しましたところ、こちらの3名が申し出ました。」
ネロがメモを見た。
「ローバー。サラ男爵令嬢の名前が書いてないが?」
「サラ男爵令嬢は申し出ておりません。」
「そうか。」
「サラ男爵令嬢をお望みでございますか?」
「・・・。」
城の窓から城下を見た。
「ローバー。城下へ行くぞ。」
「はっ。」
ネロ王子とローバーは、城下の街中をブラブラと歩いていた。
「ローバー。お前は私から離れて警護していろ。」
「はっ。」
ローバーが王子と距離をとった。
ネロは草団子を買っているサラ男爵令嬢に話しかけた。
「やあ。サラ男爵令嬢。また会ったな。」
「あ、ネロ殿下。」
いつもは草団子を三つまとめて口に入れるのだが、一つだけにした。
「サラ男爵令嬢は、草団子が好きなのか?」
サラはネロ王子に草団子を1本差し出した。
「食べて見て下さい。理由がわかりますから。」
「ふふ、食べなくても知っているぞ。」
「え?」
「この前、サラと別れた後、私も毒味をしたのだ。美味かった。」
「そうですか。毒味をされたのですか。」
「ああ、毒味をした。」
店の親父がたまらず声を掛けた。
「お客さーん。やめてよ。毒味毒味っていうの。」
サラと王子は顔を見合わせて笑った。
「ごめんなさい。」
「すまなかった。」
二人は公園の噴水の所で休憩をしていた。
「ネロ殿下は、時々城下にお越しになるのですか?」
「ああ。城の中にいると息が詰まりそうになるんだ。だから時々来ている。サラは?」
「私は元々平民ですから、ここが庭のようなものです。」
「そうか・・・サラはこの前謁見した時と全然違うのだが、どちらが本当のサラなんだ?」
サラは自虐的に、少し笑って答えた。
「どちらも私です。私、緊張すると頭の中が真っ白になるんです。そうなると、もう会話がトンチンカンになって。」
ネロ王子は、謁見の時のサラを思い浮かべながら
「ああ・・・ん?おい。今は緊張していないのか?」
「あ、今は緊張していませんね。緊張した方がいいですか?」
「いや。今のほうがいいぞ。うん。」
ネロ王子は立ち上がって
「私はもう帰る。」
サラを見て
「また会いに来てもいいか?」
とネロ王子が聞いた。
「はい。」
サラは小さな声で答えた。
ネロ王子は右手を上げて
「じゃあな。」
と言って立ち去った。
いつの間にか、自然にネロ王子はスキップをしていた。
ローバーがネロ王子に声を掛けた。
「殿下。ラブスキップでございますな。」
スキップをやめて、歩き始めたネロ王子は
「ローバー。」
「はっ。」
「今の命名は良かったぞ。」
「はっ。」
ネロ王子は、私も1本ネジが外れたのかもしれないなと思った。
「殿下。いつからサラ男爵令嬢と恋仲になられたのですか?」
「はあ?なに言ってるの?お前は!」
「殿下。サラ男爵令嬢のラブアタックにやられましたな?」
「ローバー。」
「はい。」
「二人三脚の相手はサラ男爵令嬢にする。」
「はっ。」
運動会当日
ローバーが、王子を呼びに来た。
「殿下。間もなく二人三脚の競技が始まります。」
「わかった。今行く。」
運動場へ行くとサラが待っていた。
「待たせたな。サラ男爵令嬢。」
「いえ。今日は宜しくお願い致します。ネロ殿下。」
ローバーが、王子の右足首とサラの左足首を紐で結んだ。
「サラ男爵令嬢。二人三脚競技のときは、サラと呼び捨てにする。いいか?」
「はい。殿下。」
「私のことはネロと呼んでくれ。」
「本当に宜しいのですか?」
「かまわん。」
「さればネロ。」
「なんだサラ。」
「1番を狙いましょう。」
「わかった。では、行こうサラ。」
スタート位置で構えるサラとネロ。
号令をかける教師が大声を出す。
「並んで。よーいどん!」
ネロ王子とサラは、息もぴったりで軽快に走っていた。
今の所、1位だった。
「あ!」
ネロ王子がつまづいて転んだ。
サラはすぐに立ち上がって、ネロ王子を立たせて汚れたところを手ではたいた。
その間に、ふた組に抜かれて3位に落ちていた。
「サラ。すまなかった。」
「かまいません。さあ。走りましょう。ネロ。」
「ああ。」
二人は再び、息の合ったリズムで走り出した。
ひと組に追いつき、追い抜いた。
2位になった。
ゴール数メートル手前で、先頭に追いつき、追い抜こうとした瞬間、ネロ王子がつまづいて転んだ。
続いてサラも転んだ。
しかし二人はすぐに立ち上がりゴールに向って走り出した。
結果は4位だった。
転んでいる間に、ふた組に抜かれてしまったのだ。
はあはあ、と息を乱すサラとネロ王子。
「サラ。すまなかった。私が転んでしまったから負けたな。」
サラは満面の笑みで、ネロ王子に言った。
「楽しかったですね。」
「え?」
「私、あんなに一生懸命走ったの久しぶりでした。」
ネロ王子はボケ~ッとした顔でサラの顔を見つめて
「ああ、私もだ。あの、サラは怒っていないのか?私のことを。」
「怒る訳がないでしょう?こんなに楽しかったのに。ネロ殿下は楽しくはなかったですか?」
「そうだな。楽しかった。私もこんなに一生懸命に走ったのは久しぶりだった。」
ローバーがネロ王子を呼びに来た。
「ネロ殿下。お時間です。」
ネロ王子は、ローバーを手で制してサラにもう一度声を掛けた。
「また来年も二人三脚に一緒に出ないか?私と。」
サラはニッコリと笑って
「ええ。喜んで。」と言った。
ネロ王子はサラと別れた後、ローバーに命令した。
「ローバー。明日、城下に出るぞ。準備しておけ。」
「はっ!」
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