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⑤ネロ王子、サラ男爵令嬢を意識する
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ネロ王子と側近のローバーは城下を歩いていた。
「殿下。サラ男爵令嬢をお探しですか?」
「・・・。」
「あのう。そんなにサラ男爵令嬢にお会いしたいのならサラ様のお屋敷に行けばよろしいのでは?」
「!」
「私、お屋敷を知っておりますが。」
「・・・ローバー。連れて行け。」
「はっ。」
アシャード・マクドナルド男爵邸の門の前で、中の様子見をしているネロ王子とローバー。
「では参る。ついて来い。」
「はっ。」
屋敷の中に入って行くネロ王子とローバー。
屋敷の中から二人が入って来たことに気づいたアシャード・マクドナルド男爵は慌てて玄関へ向った。
ローバーが入り口のドアを叩こうとした瞬間にドアが開いた。
中からアシャード・マクドナルド男爵が現れた。
「これはこれはネロ殿下。ようこそいらっしゃいました。」
右手を胸にあててお辞儀をする男爵。
「それで今日はなんの御用でしょうか?」
「うむ。実はサラに聞きたいことがあったのだが。」
「ここで立ち話もなんですので、こちらへどうぞ。」
「うむ。」
応接室にてソファに座る王子。
「サラに聞こうと思ったのだが男爵に聞いてもいいかもしれんな。」
「はっ。なんなりと。」
「私は父上からの命でサラと謁見したのだが。その時側近からサラが私に一目惚れをしたと聞かされたがそれはまことか?」
「はい。本当でございます。」
「それはいつのことだ?」
「今から10年前のことになります。」
「10年前・・・私はまだ6歳だな。」
「はい。サラはまだ5歳でした。」
「その頃、王国軍は魔王軍と戦闘中でした。」
「うむ。私も6歳であったがその時王国軍に同行していた。」
「はい。私はその時、平民で掃除夫でした。」
「うむ。聞いておるぞ。」
「あの時、私は冒険者ギルドからどぶ掃除の依頼を受けて、どぶ掃除を始めようとしていました。」
「私がどぶ掃除をしている間は、私の目の届く範囲で遊ばせていたのです。しかしサラが持っていた鞠がコロコロと道の真ん中に転がって行ったのです。」
「運の悪いことに魔王軍との戦いを終えて戻ってきた王国軍の行列を邪魔するような形になりました。」
「あ。それ、覚えているぞ。」
男爵は嬉しそうな顔で話しを続け
た。
「無礼打ちになるところを助けてくれたのが貴方様です。ネロ殿下。その節は誠にありがとうございました。」
立ち上がって深々とお辞儀をするアシャード・マクドナルド男爵は着席をするとまた話し始めた。
「ネロ殿下は鞠を持ってサラに渡すと、こうおっしゃいました。」
「王国軍は領民を守るために魔王
軍と戦ったのではないのか?その王国軍がこんな鞠が転がって来たぐらいで領民を殺していては王国軍は外道にも劣ると思わぬのか、と。」
「そしてサラは貴方様に一目惚れをしたのです。」
「そうか。あの時の女の子がサラであったか。」
側近のローバーがネロ王子に囁いた。
「殿下。最初にラブアタックを仕掛けたのは殿下でございましたな。」
ネロがローバーの足元をキョロキョロと見ている。
「いかがなさいましたか?」ローバーが聞いた。
「あー、頭のネジが落ちていないか探していた。」
「は?頭のネジですか?」
「お前のな。」
男爵は話しを続けた。
「そんな子供だった娘のサラも結婚という文字がちらつく年頃になりました。」
男爵は微笑みながらネロを見て
「ネロ殿下。サラが殿下に求婚をしたようですが、最近は少し気になる男が出来たようです。」
「なに?それは誰だ?」
「はい。なんでも城下の草団子のお店の近くで出会った男らしいですな。名前は口にしませんが。」
ローバーが殿下に囁く。
「ラ~ブアタック。知らぬ間にラ~ブアタックでございますな。殿下。」
ネロ王子がローバーをじっと見た。
「ローバー。お前、悩みはないんだろうな。羨ましい。」
「は?」
ネロ王子は立ち上がり
「それでは帰る。聞きたかったことも聞けたし。邪魔したなアシャード・マクドナルド男爵。」
ガチャ
サラ男爵令嬢がドアを開けて入って来た。
「殿下。サラ男爵令嬢をお探しですか?」
「・・・。」
「あのう。そんなにサラ男爵令嬢にお会いしたいのならサラ様のお屋敷に行けばよろしいのでは?」
「!」
「私、お屋敷を知っておりますが。」
「・・・ローバー。連れて行け。」
「はっ。」
アシャード・マクドナルド男爵邸の門の前で、中の様子見をしているネロ王子とローバー。
「では参る。ついて来い。」
「はっ。」
屋敷の中に入って行くネロ王子とローバー。
屋敷の中から二人が入って来たことに気づいたアシャード・マクドナルド男爵は慌てて玄関へ向った。
ローバーが入り口のドアを叩こうとした瞬間にドアが開いた。
中からアシャード・マクドナルド男爵が現れた。
「これはこれはネロ殿下。ようこそいらっしゃいました。」
右手を胸にあててお辞儀をする男爵。
「それで今日はなんの御用でしょうか?」
「うむ。実はサラに聞きたいことがあったのだが。」
「ここで立ち話もなんですので、こちらへどうぞ。」
「うむ。」
応接室にてソファに座る王子。
「サラに聞こうと思ったのだが男爵に聞いてもいいかもしれんな。」
「はっ。なんなりと。」
「私は父上からの命でサラと謁見したのだが。その時側近からサラが私に一目惚れをしたと聞かされたがそれはまことか?」
「はい。本当でございます。」
「それはいつのことだ?」
「今から10年前のことになります。」
「10年前・・・私はまだ6歳だな。」
「はい。サラはまだ5歳でした。」
「その頃、王国軍は魔王軍と戦闘中でした。」
「うむ。私も6歳であったがその時王国軍に同行していた。」
「はい。私はその時、平民で掃除夫でした。」
「うむ。聞いておるぞ。」
「あの時、私は冒険者ギルドからどぶ掃除の依頼を受けて、どぶ掃除を始めようとしていました。」
「私がどぶ掃除をしている間は、私の目の届く範囲で遊ばせていたのです。しかしサラが持っていた鞠がコロコロと道の真ん中に転がって行ったのです。」
「運の悪いことに魔王軍との戦いを終えて戻ってきた王国軍の行列を邪魔するような形になりました。」
「あ。それ、覚えているぞ。」
男爵は嬉しそうな顔で話しを続け
た。
「無礼打ちになるところを助けてくれたのが貴方様です。ネロ殿下。その節は誠にありがとうございました。」
立ち上がって深々とお辞儀をするアシャード・マクドナルド男爵は着席をするとまた話し始めた。
「ネロ殿下は鞠を持ってサラに渡すと、こうおっしゃいました。」
「王国軍は領民を守るために魔王
軍と戦ったのではないのか?その王国軍がこんな鞠が転がって来たぐらいで領民を殺していては王国軍は外道にも劣ると思わぬのか、と。」
「そしてサラは貴方様に一目惚れをしたのです。」
「そうか。あの時の女の子がサラであったか。」
側近のローバーがネロ王子に囁いた。
「殿下。最初にラブアタックを仕掛けたのは殿下でございましたな。」
ネロがローバーの足元をキョロキョロと見ている。
「いかがなさいましたか?」ローバーが聞いた。
「あー、頭のネジが落ちていないか探していた。」
「は?頭のネジですか?」
「お前のな。」
男爵は話しを続けた。
「そんな子供だった娘のサラも結婚という文字がちらつく年頃になりました。」
男爵は微笑みながらネロを見て
「ネロ殿下。サラが殿下に求婚をしたようですが、最近は少し気になる男が出来たようです。」
「なに?それは誰だ?」
「はい。なんでも城下の草団子のお店の近くで出会った男らしいですな。名前は口にしませんが。」
ローバーが殿下に囁く。
「ラ~ブアタック。知らぬ間にラ~ブアタックでございますな。殿下。」
ネロ王子がローバーをじっと見た。
「ローバー。お前、悩みはないんだろうな。羨ましい。」
「は?」
ネロ王子は立ち上がり
「それでは帰る。聞きたかったことも聞けたし。邪魔したなアシャード・マクドナルド男爵。」
ガチャ
サラ男爵令嬢がドアを開けて入って来た。
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