《完結》王子と男爵令嬢

ぜらちん黒糖

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⑥サラの想い

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「ネロ殿下、どうしてここに?」

「サラ男爵令嬢。あなたのことがもっと知りたくて来てしまった。もう、帰るところだったのだが。まだ時間もあるし。少し私と話さないか?」

「はい。殿下。」

男爵が二人に声をかけた。

「私とローバーは部屋の外におりますので、時間を気にせず話しをして下さい。」

男爵とローバーが部屋を出ていった。

二人は互いに向かい合ってすわった。

ドアがノックされてメイドが紅茶を持って来た。

テーブルの上において、お辞儀をして出て行った。

「サラ。押しかけたようでわるかったな。許してくれ。」

「ネロ殿下。」

「サラ。正直に言う。私はサラのことが好きになったようだ。」

 気取って紅茶を上品に飲んでいたサラだったが、その言葉を聞いて鼻から紅茶をすすってしまった。

「ふん!ふん!」

ハンカチを鼻にあてて鼻から紅茶を必死にだすサラ。

それを見ていたネロ王子が

「お前はほんとに面白い。サラは私のことをどう思っている?」

「好きです。」

「そうか。ずっと私を慕っていてくれたのだな。サラは。」

「それはどういう意味ですか?」

ネロは少しはにかみながら

「10年前に私に一目惚れをしたそうだな。」

「・・・。」

「ずっと・・・10年間私を慕ってくれていたのか?」

サラはネロ王子の顔をじっと見つめて、顔を赤くしながら答えた。

「忘れていました。」

 ずっこけるネロ王子。

 「え?」

「5歳でしたから私。」

「そ、そうか。私は6歳だったが。」

「父上からはよくその話しを聞かされていましたので、私もその時に殿下に一目惚れをしたんだと記憶しておりました。」

「うーん。」

「ネロ殿下と謁見したときに10年ぶりにお会いしても」

「お会いしても?」

「緊張はしましたが、その緊張は好きな人に会ったからではなく、高貴なお方に会ったので緊張したのだと思います。」

「・・・。」

「でも、城下で出会い、そして二人三脚競技で一緒に走ったりして、殿下のお人柄がとても私の胸に残っております。」

サラがネロを見て

「私はお城の謁見室で出会ったネロ殿下よりも、城下で出会ったネロ殿下が好きです。」

「うん。私もサラが好きだ。もっと一緒にいたい。」

「殿下。」

「私と婚約してくれ。」

「はい。殿下。」

「サラ。頼むから勝ち残ってくれよ。」

「はい?」

「婚約者は3人になる。」

「へ?」

「国王である父上が指名したヴアカ侯爵令嬢。母上が指名したキャサリン伯爵令嬢。そして私が指名したサラ男爵令嬢の3人だ。」

「・・・。」

「後は3人でお妃教育を受けたのち3ヶ月後に試験がある。成績1位の令嬢が私の后となるのだ。」

「お断りします。殿下。」

「え?」

「ネロ殿下。」

「・・・。」

「我が家に婿に来ませんか?」

「え?」

「男爵家も一応貴族ですから暮しには困りません。どうですか?」

「いや、しかし、将来、国王陛下になれるのだぞ?それを棒に振れと?」

「はい。」

「気楽な貴族暮しもいいもんですよ。」

「うーん。第2王子、第3王子もいるし、問題ないか。」

「どうします?」

「そうだな。それもいいかもしれんな。」


その後サラとネロは本当に結婚した。

ネロは王位継承1位の座を弟のリチャードに譲った。

ヴアカ侯爵令嬢とキャサリン伯爵令嬢はお妃候補から外された。

リチャード王子よりも年下の令嬢が指名されることになったからだ。


70年後

サラ85歳、ネロ86歳。
男爵家のバルコニーでロッキングチェアに座って体を揺らしているサラとネロ。

ネロ「長いようであっという間の70年であったな。」

サラ「そうね。あっという間だったわね。」

ネロ「いつまで生きられるか分からないが、それまで仲良くしような。」

サラ「ええ。これからもよろしくね。」

ネロ「来生もサラと一緒になりたい。お前は?」

サラ「お断りです。」

ネロ「え?」

サラ「ふふ。冗談ですよ。」

ネロ「サラ~~。」

サラ「ごめん。ごめん。」 

二人はロッキングチェアに揺られてまったりとしていた。

 

 その後ろに生涯結婚せず、なぜかこの家に住み着いたヴアカ侯爵令嬢85歳がいた。

ロッキングチェアに揺られながら。

「いつまでもお熱いことで。」

「来生は絶対に結婚しますわよーーー。」




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