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第3部3章 フォール・イントゥ……
130 逆さ塔第2層その2:ワギナデンタタ
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俺の叫び声にうちのパーティーの面子は反応したようだが、カジ隊は前に出てこなかった。
ヘタレが。せめてサチさんだけでも守れよ。
黒目の男が突進しながら、両手の刃物をでたらめに振り回す。
左手の一撃は金砕棒で弾き飛ばす。
右手の一撃は距離をつめて潰す。
懐に潜り込んだ俺は金砕棒の柄をかちあげて、相手の顎をくだく。
蹴飛ばす。
尻もちをついた男の胸に金砕棒を振り下ろす。
いろいろなものが砕け、潰れる感触が手に伝わる。
視界の端ではチュウジが2人をほぼ同時に切り捨てていた。
やっぱあの中2病魔剣、取り上げて俺が使おうかしら。
残りの2人は苦戦している。
チュウジがミカのカバーに入ったので、俺はサゴさんを左右から囲んでいるうちの片方を引き受けることにした。
「仲間にっ、いーれーてっ!」
こちらに注意を向けていない男の腰に金砕棒を叩き込む。
腰を砕かれた男は前に倒れ込む。
俺の追い打ちを男は転がりながらかわす。
仰向けになった男は刃物を捨て、両手で地面を押すようにして……。
飛びあがってくる?
両手の力だけで飛び上がるという人間離れした不気味な動きをした男は金砕棒にしがみつき、さらに噛みついてくる。
微笑みを浮かべていた口ががばっと開く。
耳まで裂けたかのような口にびっしりと並んだ歯が俺の兜に噛みつき、歯をぼろぼろとあたりに飛び散らせる。
俺に肉体的ダメージはないが、その気持ち悪さに吐きそうになる。
いつの間にか俺は男に金砕棒ごと抱きしめられている。
悲鳴が出そうになるのを必死にこらえながら、短剣を抜き、相手の横腹、背中と切っ先の埋まる範囲を滅多刺しにする。
歯を床に撒き散らしながら噛みついていた男がようやく離れて、ずるずると落ちていく。
やめろよ、そのデタラメな上にホラーな動きは。
うちにはホラー担当の呪いの人形がいるから、そんなやばい動きされたって採用できないんだよ。
俺は足元でまだうごめく男の頭に金砕棒を何度も落とす。
敵の前衛を片付け、武器を慎重に構え直す俺たちの横をカジ隊の4人がかけぬけていく。
数で有利になった途端、威勢が良くなりやがって。
そんな陰口を叩きたくなるが、大人数で囲んで潰すのが戦いの基本だ。
俺たちだってできる限りその状況を作ろうとしているし、囲める時は必ず囲んで潰すようにしている。だから、さっきの俺の思いはこちらが数で劣っている時に日和ったあいつらへのうらみつらみみたいなものだ。
「援護するか?」
チュウジがこちらを見る。
「いや、やめとこう。あいつらの連携を乱すことになっても悪いし。でも、敵がこっちに突破してくるかもしれないから注意しておこう」
俺は金砕棒を地面について、4対1の戦いを見守る。
奥で囲まれている長髪は突っ込んできた男たちとは異なりでっぷりと太った体をしている。
その体からは信じられないように機敏に動いているようだ。
脂身だけでつくったハムのような白く太い腕がカジ隊の男の顎を打ち抜く。
男は首を妙な角度に傾けながら後方に綺麗に吹っ飛び、そのままダウンする。
「おい、痙攣してるぞ。後ろにさがらせよう!」
俺はミカに合図をして、びくびくとのけぞる男のところにかけより、後方に引きずっていく。
「援護はいるかっ?」
後退しながら戦っているやつらに声をかける。
「うっせー。気ぃ散るから入ってくんなよ!」
この返事だと、まだ援護には入れそうもない。
彼らは大口を叩くだけあって、動きが悪いわけではない。
リーダーのカジが剣を振るう。
でっぷりと太った長髪の化け物は機敏に飛び退く。
完全には避けきれず、身にまとっていた薄青色の服の前が切り裂かれてはだける。
「おっほー、こいつ女だぜ。巨乳だ」
カジが下卑た笑い声をあげながら追い打ちをかける。
裸身をさらしても張り付いたような微笑みを浮かべたままの女がカウンター気味の一撃を放つ。
豪快なフックがカジの左腕に炸裂する。
腕を叩き折られたカジは倒れて転げ回る。
やはり微笑みを浮かべたままで女はカジにのしかかろうとする。
その左右から剣と槍の一撃が両胸を貫く。
女は微笑みを浮かべていた口を大きく開き、甲高い叫び声を上げながら、左右に噛みつこうとする。
カジは起き上がり、片手で剣を構えると、耳まで裂けた口の奥に剣を深々と突き入れた。
女はそのまま後ろに大の字に倒れる。
倒れた女を踏みつけながら、カジはこちらを振り向く。
「タカくんはどうした?」
タカというのは先程、女の化け物に顎を打ち抜かれた男の名前だった。
サチさんが涙をこらえながら首を振って、「首を折られていて治療している最中に亡くなりました」と告げる。
カジは折られた片手をぶらぶらさせたまま、短剣を抜くと、仲間の1人に放る。
「おい、そこの化け物女、そいつでイカせてやれよ」
そう言いながらやつは腰をふってみせる。
仲間をやられたことを差し引いても趣味の悪いゲスな野郎だ。
仲間も同類だったようで、短剣を受け取った男以外も腰から自分の短剣を抜く。
二人は足を開いて倒れている大女の股間に顔を近づける。
「反吐が出るような行為だ。やめさせる」
チュウジが前に出ようとした時、大女の腰がびくんとはねあがる。
ブレイクダンスの1シーンのように突如上に伸び上がった女の足は大きく開き、短剣を握った男の一人の頭をつかまえる。
次の瞬間、男の頭があったところからは鮮血が吹き出している。
女は痙攣のような奇妙な動きでもう1人の短剣を構えた腕をつかまえる。
女の股の間に大きく開いた歯のついた口のようなものが、男の腕をばりばりと噛み砕いていく。
カジは悲鳴をあげる男を助けることもせずにぺたんと座り込んで呆然としている。
俺も恐ろしくて動けない。
俺の横をミカが駆け抜けていく。
ブレイクダンスかカポエイラの技を決めようとするかのような態勢で動き続ける女を盾で殴り倒して転がす。
彼女は金砕棒で何度も大女を動かなくなるまで叩き続けた。
彼女が叩き続けている最中にようやく動けるようになった俺はチュウジと一緒に腕を喰われた男をサチさんのところに運ぶ。
頭を喰われた男は当然助からなかったが、彼は助かった。ただし、細かくかみ砕かれた腕がくっつくことはなかった。
サチさんは無言でカジのとこに寄ると、折れた腕を治した。
治しおえたあとにカジを立ち上がらせると、思い切り平手打ちをした。
「あの人の死と、あの人の腕はあなたの責任です。あなたの不真面目さのせいです。あなたの腐った性根のせいです。すべてあなたの責任です。あなたはリーダー失格です」
サチさんの胸ぐらをつかもうとするカジの手をミカがひねり上げる。
「次は治してもらえないかもよ?」
カジはようやく黙る。
今回の偵察任務は失敗だ。
腕を喰われた男は恐怖でもはや動けない。カジも荷物になりこそすれ、戦力にはならないだろう。
これ以上奥に行くのは無理だ。
「いったん帰ろう」
俺はミカとサチさんのとこに走り寄って、謝る。
「ごめん、嫌な役目をやらせた」
彼女たちは力なく笑う。
「あんなふうになったら嫌だよ」
そういうミカに俺はうなずいてから、もう一度謝った。
◆◆◆
2人となったカジ隊は街での休養が許された。
彼らの様子は経験の浅い探索隊をひきしめるのに十分だった。
結局、第2層の制圧はタダミたちともう1つの熟練の隊が共同でおこなった。
1つの部屋に、黒目の男たちが眠る培養装置のようなものがあったらしく、それを破壊した後に第2層で微笑みを浮かべながら駆け寄ってくる黒目の男女たちに出会う者はいなかった。
ヘタレが。せめてサチさんだけでも守れよ。
黒目の男が突進しながら、両手の刃物をでたらめに振り回す。
左手の一撃は金砕棒で弾き飛ばす。
右手の一撃は距離をつめて潰す。
懐に潜り込んだ俺は金砕棒の柄をかちあげて、相手の顎をくだく。
蹴飛ばす。
尻もちをついた男の胸に金砕棒を振り下ろす。
いろいろなものが砕け、潰れる感触が手に伝わる。
視界の端ではチュウジが2人をほぼ同時に切り捨てていた。
やっぱあの中2病魔剣、取り上げて俺が使おうかしら。
残りの2人は苦戦している。
チュウジがミカのカバーに入ったので、俺はサゴさんを左右から囲んでいるうちの片方を引き受けることにした。
「仲間にっ、いーれーてっ!」
こちらに注意を向けていない男の腰に金砕棒を叩き込む。
腰を砕かれた男は前に倒れ込む。
俺の追い打ちを男は転がりながらかわす。
仰向けになった男は刃物を捨て、両手で地面を押すようにして……。
飛びあがってくる?
両手の力だけで飛び上がるという人間離れした不気味な動きをした男は金砕棒にしがみつき、さらに噛みついてくる。
微笑みを浮かべていた口ががばっと開く。
耳まで裂けたかのような口にびっしりと並んだ歯が俺の兜に噛みつき、歯をぼろぼろとあたりに飛び散らせる。
俺に肉体的ダメージはないが、その気持ち悪さに吐きそうになる。
いつの間にか俺は男に金砕棒ごと抱きしめられている。
悲鳴が出そうになるのを必死にこらえながら、短剣を抜き、相手の横腹、背中と切っ先の埋まる範囲を滅多刺しにする。
歯を床に撒き散らしながら噛みついていた男がようやく離れて、ずるずると落ちていく。
やめろよ、そのデタラメな上にホラーな動きは。
うちにはホラー担当の呪いの人形がいるから、そんなやばい動きされたって採用できないんだよ。
俺は足元でまだうごめく男の頭に金砕棒を何度も落とす。
敵の前衛を片付け、武器を慎重に構え直す俺たちの横をカジ隊の4人がかけぬけていく。
数で有利になった途端、威勢が良くなりやがって。
そんな陰口を叩きたくなるが、大人数で囲んで潰すのが戦いの基本だ。
俺たちだってできる限りその状況を作ろうとしているし、囲める時は必ず囲んで潰すようにしている。だから、さっきの俺の思いはこちらが数で劣っている時に日和ったあいつらへのうらみつらみみたいなものだ。
「援護するか?」
チュウジがこちらを見る。
「いや、やめとこう。あいつらの連携を乱すことになっても悪いし。でも、敵がこっちに突破してくるかもしれないから注意しておこう」
俺は金砕棒を地面について、4対1の戦いを見守る。
奥で囲まれている長髪は突っ込んできた男たちとは異なりでっぷりと太った体をしている。
その体からは信じられないように機敏に動いているようだ。
脂身だけでつくったハムのような白く太い腕がカジ隊の男の顎を打ち抜く。
男は首を妙な角度に傾けながら後方に綺麗に吹っ飛び、そのままダウンする。
「おい、痙攣してるぞ。後ろにさがらせよう!」
俺はミカに合図をして、びくびくとのけぞる男のところにかけより、後方に引きずっていく。
「援護はいるかっ?」
後退しながら戦っているやつらに声をかける。
「うっせー。気ぃ散るから入ってくんなよ!」
この返事だと、まだ援護には入れそうもない。
彼らは大口を叩くだけあって、動きが悪いわけではない。
リーダーのカジが剣を振るう。
でっぷりと太った長髪の化け物は機敏に飛び退く。
完全には避けきれず、身にまとっていた薄青色の服の前が切り裂かれてはだける。
「おっほー、こいつ女だぜ。巨乳だ」
カジが下卑た笑い声をあげながら追い打ちをかける。
裸身をさらしても張り付いたような微笑みを浮かべたままの女がカウンター気味の一撃を放つ。
豪快なフックがカジの左腕に炸裂する。
腕を叩き折られたカジは倒れて転げ回る。
やはり微笑みを浮かべたままで女はカジにのしかかろうとする。
その左右から剣と槍の一撃が両胸を貫く。
女は微笑みを浮かべていた口を大きく開き、甲高い叫び声を上げながら、左右に噛みつこうとする。
カジは起き上がり、片手で剣を構えると、耳まで裂けた口の奥に剣を深々と突き入れた。
女はそのまま後ろに大の字に倒れる。
倒れた女を踏みつけながら、カジはこちらを振り向く。
「タカくんはどうした?」
タカというのは先程、女の化け物に顎を打ち抜かれた男の名前だった。
サチさんが涙をこらえながら首を振って、「首を折られていて治療している最中に亡くなりました」と告げる。
カジは折られた片手をぶらぶらさせたまま、短剣を抜くと、仲間の1人に放る。
「おい、そこの化け物女、そいつでイカせてやれよ」
そう言いながらやつは腰をふってみせる。
仲間をやられたことを差し引いても趣味の悪いゲスな野郎だ。
仲間も同類だったようで、短剣を受け取った男以外も腰から自分の短剣を抜く。
二人は足を開いて倒れている大女の股間に顔を近づける。
「反吐が出るような行為だ。やめさせる」
チュウジが前に出ようとした時、大女の腰がびくんとはねあがる。
ブレイクダンスの1シーンのように突如上に伸び上がった女の足は大きく開き、短剣を握った男の一人の頭をつかまえる。
次の瞬間、男の頭があったところからは鮮血が吹き出している。
女は痙攣のような奇妙な動きでもう1人の短剣を構えた腕をつかまえる。
女の股の間に大きく開いた歯のついた口のようなものが、男の腕をばりばりと噛み砕いていく。
カジは悲鳴をあげる男を助けることもせずにぺたんと座り込んで呆然としている。
俺も恐ろしくて動けない。
俺の横をミカが駆け抜けていく。
ブレイクダンスかカポエイラの技を決めようとするかのような態勢で動き続ける女を盾で殴り倒して転がす。
彼女は金砕棒で何度も大女を動かなくなるまで叩き続けた。
彼女が叩き続けている最中にようやく動けるようになった俺はチュウジと一緒に腕を喰われた男をサチさんのところに運ぶ。
頭を喰われた男は当然助からなかったが、彼は助かった。ただし、細かくかみ砕かれた腕がくっつくことはなかった。
サチさんは無言でカジのとこに寄ると、折れた腕を治した。
治しおえたあとにカジを立ち上がらせると、思い切り平手打ちをした。
「あの人の死と、あの人の腕はあなたの責任です。あなたの不真面目さのせいです。あなたの腐った性根のせいです。すべてあなたの責任です。あなたはリーダー失格です」
サチさんの胸ぐらをつかもうとするカジの手をミカがひねり上げる。
「次は治してもらえないかもよ?」
カジはようやく黙る。
今回の偵察任務は失敗だ。
腕を喰われた男は恐怖でもはや動けない。カジも荷物になりこそすれ、戦力にはならないだろう。
これ以上奥に行くのは無理だ。
「いったん帰ろう」
俺はミカとサチさんのとこに走り寄って、謝る。
「ごめん、嫌な役目をやらせた」
彼女たちは力なく笑う。
「あんなふうになったら嫌だよ」
そういうミカに俺はうなずいてから、もう一度謝った。
◆◆◆
2人となったカジ隊は街での休養が許された。
彼らの様子は経験の浅い探索隊をひきしめるのに十分だった。
結局、第2層の制圧はタダミたちともう1つの熟練の隊が共同でおこなった。
1つの部屋に、黒目の男たちが眠る培養装置のようなものがあったらしく、それを破壊した後に第2層で微笑みを浮かべながら駆け寄ってくる黒目の男女たちに出会う者はいなかった。
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