魔法騎士団をクビにされたので犯罪者集団に所属して無双しまぁす

ななこ

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一章

3、GHOST

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「他に必要な薬は?」
「いや、もう充分よ。ありがとう。エルメスちゃん」
「いいのよ」

「う……ううん……」

 目を開けたら先ほども見た白衣の男と、もう一人、片目を隠している艶やかな紫色の髪の毛の女性が立っていた。波打つ髪の毛は胸のあたりまで伸びているが、ジンの視線は鱗のような光沢で所々輝く腕や首にいく。この女性は竜人族なのだろうか?

「目が覚めた?」

 白衣の男が覗き込んできた。ドギツイ化粧は目に毒だ。 

「……離れろ」

 手で押し退ければ、白衣の男は素直に下がった。

「はいはい。でも、よかったわ。これで安心ね。……もう、君が怪我なんてするから!」
「あんたが怪我させたんだろ」

 ジンが白衣の男を睨むように見遣る。

「あ、私の事はハカセって呼んで♥」
「は、はあ?」

「それに隣にいる彼女は薬屋のエルメスちゃんよ。これからお世話になるから。覚えておきましょ」
「初めまして。よろしくね」

 エルメスはニコッと笑顔を作る。その笑みは多くの男性をとりこにしてしまいそうな程の極上の笑みだった。

 よくよく見れば、エルメスは体のラインがはっきりとわかる服を着ていた。豊満な胸にくびれた腰、そこからのお尻の曲線美は誰もが唸る。それにスリットからチラッと見える足も実にセクシーだ。

 別段興味のないジンでさえ目を奪われてしまう程、彼女の体のラインもバランスも見事だったのだ。

「は、はあ……どうも。というかここはどこ。それに、このイレズミは何」

「え? ハカセ、何も教えてないの?」とエルメスが困ったようにハカセに問う。

「やだ♥ これから教えるつもりだったのよ。だって私のコト、いきなり襲おうとしてくるから♥」

 くねくね体をくねらせるハカセに、「……キモい」とジンは突っ込む。

「キモいなんて失礼しちゃうわ! もうっ」
「……早く説明してくれって」

 何なんだ、この人は。

「まあ、そうね……。ふざけ過ぎたわ。じゃあ、事の成り行きを説明しましょうか。あ、その前に。ぶっ倒れていたあなたを運んだ子がいるんだけど、その子はまた紹介するわ」

「……はあ」

「で、ちょっとその子にお仕事でタナブの森に行ってもらってたのよ。そしたら気絶していたあなたを見つけて、ここまで運んでくれたってわけ」

「なあ、その場にはケルベロスはいなかったか!?」

「え? それは聞いていないし、知らないわ。あなたが倒れていたとだけしか聞いていないのよ。だから気になるならその事は直接その子に聞いて。私は運ばれて来たあなたの状態を診て、そしてちょいちょいっと体を改造させてもらっただけなの♥ ンフッ♥」
「は? 改造?」

 だからこんな変なイレズミが入っているのか?

「お、俺の体に一体何をしたんだよ!!」

 鬼気迫るジンの表情を見たハカセは、「うそだぴょーん!」とウサギの真似をして変な顔をこちらに向けた。

「……な、何がうそだぴょーんだ!! 真面目に答えろ!!」
「えー……わかりやすいブラックジョークじゃない。そんなにも怒らなくてもいいじゃない。そう思うわない? エルメスちゃん」

「いや、私には茶化す意味がわからないわ。もっと現実を突きつけて心をボッキリと折るべきだと思うのだけど」と笑うエルメスの笑顔が極悪だ。

「やだ、エルメスちゃん怖い」

 こいつら、やばい気しかしない……。

 警戒するジンに、真面目腐ったような顔をしてハカセが向き合った。

「本当の事を言うと、あなたは魔力が封印されていたのよ」
「は? 封印?」

 初耳だ。

「ええ。それもかなり厳重に。誰が何の目的でそうしたのかはちょっとわからなかったけれど、魔力がないとこの世界で生きていくことが難しいと思ったから、勝手に封印を解かせてもらったわ。そしたらあなたの体にそのイレズミが浮き出てきたってわけ。あなた、どうやら相当強力な魔力があるみたいね」

「……」

 ジンは自分の両手を見つめる。手のひらには黒い円のような模様が入っていた。体の奥底から、今まで感じたことのない力の存在を感じる。

 もしかして、これが……俺の魔力。

 ぐっと拳を握る。

「力の使い方はそのうちわかるようになるわ。で、ここからが本題なの」
「え?」

「私たちは慈善事業をしてるの。まあ簡単に言うと困っている人を助ける何でも屋的な? 戦力のある人がいないから、あなたに私たちの組織に是非入って欲しいと思って、あなたの魔力の封印を解いたの。どう?」
「どうって……」

 ジンは視線を落とした。

 魔法騎士団をクビになって、行き場を失っている俺に、手を差し伸べてくれるのは、信用できないような男。でも、俺の魔力の封印を解いてくれて(正直本当かどうかは怪しいし、別に頼んでない)、俺を必要だと言ってくれている。

 夢は父さんのような魔法騎士だった。でも、今の俺は――。

 期待と不安を込めた瞳でこちらを見つめるハカセに、まっすぐに見つめ返した。

「俺は、俺を捨てたこの世界に俺を認めさせたい。でも、ただ単にこの目覚めた力で復讐するだけじゃ面白くない。あいつらが捨てた人間が価値のある男だったんだって、わからせてやりたいんだ!!」

「なるほどね。そのためには、功績が必要、よね?」

 頷く俺に、ハカセがニッと笑う。

「なら、決まりね」

 するとパチンとハカセが手を叩くと、契約書が目の前に現れた。

「じゃあ、そこにサインを」と指示されて、俺は何の疑いもなく自分の名前を書き込む。すると契約書が燃え、ジンの人差し指にリングとなって収まる。そのリングは黒とシルバーの二色だ。

「その指輪は目印よ。人によって形が違うのだけれど、そのうち見た瞬間、直感で仲間だとわかるようになるわ」

 ハカセが手を差し出す。はまっている指輪は細くて波打っていた。確かに形が違うようだ。ジンも手を差し伸べて握手した。すると言葉には言い表せないような安堵感が胸に広がる。

 これが、仲間の印。

「ようこそ、犯罪者集団――GHOSTゴーストへ」

 にこっと笑うハカセの言葉に、ジンは眉根を寄せた。

「え? 犯罪者集団??」
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