魔法騎士団をクビにされたので犯罪者集団に所属して無双しまぁす

ななこ

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一章

14、セドリック

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 フェンリルの後を追って辿り着いた場所は、雪山だった。

『さ、さみい……』

 どこに連れてこられるのか想像できなかったわけじゃないが、さすがに雪山に来る想定は出来なかったので、防寒はしているがそれでも寒い。

 フェンリルは先を歩く。幸いにして雪は降っていないし、太陽が照っているため多少は温かい。気休め程度だが。

『おい、どこ行くんだよ……』

 セドリックは両腕を掻き抱きながら歩く。フェンリルはセドリックがちゃんと後ろにいるか確認しながら進んでいく。どれくらい歩かされるんだよ、と思っていれば。

 フェンリルが立ち止まった。

 セドリックも遅れてそこへ行けば。

『うわ……なんだよ、これ……!!』

 驚愕した。こんなこと、有り得ない。

 目の前には大量にフェンリルが死んでいたのだ。一匹ずつ息を確認するが、やはりもう既にない。ここは恐らくこのフェンリルのだったのだろう。

『酷え……』

 何が酷いかというと、ただ単に殺されているだけではないのだ。目が抉られて、皮も剥ぎ取られてしまっているのだ。可哀相に、とセドリックは寒さなど忘れて、亡くなってしまっているフェンリルを抱きしめた。

『一体何に襲われたんだ? もっと強い獣か? どうして、こんなことに……』

 とにかく埋めてやらないと、と地面を手で掘っていれば。パアアン、と銃声音が鳴り響いた。

『キャンッ!!』

 フェンリルが撃たれたのだ。

『おい!! 大丈夫か』

 フェンリルに近づく。足を撃たれたようだ。出血が酷い。

『今止血してやる。待ってろ』

 上着を脱ぎ、セドリックは下に着ていた服を裂いて、フェンリルの足に巻いてやる。こんなの応急処置にしか過ぎないが、それしか方法がない。

『後で弾、抜いてやっから』

 するとフェンリルが唸りだす。一体どうしたのかと思えば、セドリックは何か固い物で頭を殴られた。

『って……』

『どけ。これは俺の捜索用に飼ってんだ。お前のじゃねえよ。おい、立て』

 拳銃でフェンリルの頭を殴る。

『キャンッ!!』

『お前!! やめろって!! こいつ、怪我してんだ!!』
『うるせえ!! 怪我なんて舐めときゃ治るんだよ!! お前が言う事聞かねえから、いけねえんだぞ! 仲間のフェンリルのところにちゃんと案内してくれればよかったのによ!! 他のハンターに全部持って行かれちまった!! くそが!!』

 そう言って再びフェンリルを殴ろうとしたときに、セドリックがフェンリルの前に立った。強烈な一撃が今度は肩に入る。

『邪魔だ、退け!!』
『退かねえ!! お前は何なんだ!! 自分のものだからってやっていい事と悪い事があるだろうが!!』 

『黙れ!! 退かねえなら、お前ごと殺す!! 俺はハンターなんだ。そいつを殺して毛でも売らねえと、腹の虫が収まらねえからな!!』

 フェンリルの毛は上等で、物凄く高価な値で売れる。だから、ハンターに狙われたのだ。

『ゆるさねえ……!!』
『黙れ!!』

 どうすればフェンリルを守りきれるのか。こちらは丸腰で、向こうは銃を持っている。どう考えても勝てはしない。

 ああ、そうか。いい方法を思いついた。最善と言えるかは分からないが、やるしかない。

『レオ。今からお前はレオだ。レオ、召喚獣として俺の共になれ!!』

 そう。召喚獣として契約してしまえばいいのだ。たとえ、誰かの契約獣であっても実は獣の了承を得られれば、契約を上書きすることが出来る。それだけの魔力が俺にはある。

 本来なら許されない行為だ。しかし今は緊急事態だ。

 俺は獣医になりたい。でも、召喚士となって獣たちの生きる権利も守ってやりたい。

『ワォォォーン』

 お前の共になる、そう聞こえた気がした。

 するとバチバチバチとフェンリルが青い稲妻に包まれる。額にあったハンターの所有物である証拠の刻印が、セドリックのものへと変わる。

『おい!! 俺のフェンリルだぞ!! 盗むんじゃねえ!!』
『うるせえ!! お前よりも、俺の方が何百倍もレオを大事にできる!!』
『くそがっ!!』

 怒り狂ったハンターは引き金を引いた。セドリックはレオを抱きしめて、彼の身を守る。しかしセドリックを守ろうと、レオが身をていして銃弾を自身の身に受けた。

『レオ……!!』

 ハンターの銃に噛み付き、離さない。ハンターは思わず銃を離し、逃げて行った。

『くそが……!! お前、覚えてろよ……!!』

 ハンターの背が見えなくなったところでレオが倒れた。

『レオ!! おい!! レオ!!』

 丁度心臓の位置を撃ち抜かれている。このままではレオは助からない。家まで帰るまでに相当距離もあるし、そもそも大きすぎて運べない。

『くそ……どうすれば……!!』

 そこで、はっと何かを思いついた。

 そうだ。銃弾を取り除き、回復魔法をかければ助かるはずだ。やったことはない。成功するかはわからない。失敗したらレオは死ぬ。でも、やるしかない。

『我慢しろよ……絶対に、助けてやるからな』

 俺は必死になって銃弾を取り除ぞく。すると溢れんばかりに血が出てきた。

『や、やべえ……!』

 集中しろ。レオの命は俺の手にかかっている。

 俺は慌てないように、回復魔法をかけた。父に頼んで買ってもらった本の中にそんな魔法が書かれていたと記憶している。

傷よ癒えよヒール

 手が温かくなり、ゆっくりと傷が塞がってゆく。しばらくセドリックは傷口に手を当てていた。

 そしたら傷口は完全に塞がった。

『よかった……!! レオ? レオ!?』

 声に反応しない。レオは横たわったままだった。震える手で確認した。

 息が、ない……。

 だめだ。上手くいかなかった。俺が、レオを、殺しちまった……。

『ごめんよ、ごめんよ、レオ……』

 涙が溢れて止まらない。

『レオ……ごめんな……』

 俺は寒さと体力の限界で、レオと一緒にその場に倒れ込んだ。
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