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一章
15、セドリック
しおりを挟む気づけば、俺は病院にいた。
『セドリック! 気づいた!?』
『ああ、よかった……。寿命が縮むかと思ったぞ』
父と母が覗き込んできた。俺はどうやら助かったみたいだ。
でも、どうやって……? そういえばレオは……?
『レ、オ……レオは!?』
『レオ??』
『レオって何だ?』
両親は顔を見合わせて首を捻ったが、何か思い当たる節があったのか、『もしかして』と答える。
『傷を負っていた、あのフェンリルのことか?』
『そうだよ、俺のレオ!』
『レオっていうのね。可愛い名前。レオ君、疲れたみたいで寝てるわよ』
『は?』
両親が体を退ければ、その後ろに丸まって寝ていた。すう、すうと寝息を立てている。見たところ怪我は完全に治っているようだ。
それにどうやらレオが家まで運んでくれたらしい。俺の姿を見て慌てた両親が病院へ連れてきてくれたようだ。
俺もレオも生きていた。よかった。本当によかった。
しかしあのハンターは自分のフェンリルが俺に盗まれた、と魔法騎士団に報告した。そして俺は窃盗罪を背負うことになった。だから家にいたら両親に迷惑をかけるので、俺は家を出ることにしたのだ。
罪を背負ったとしても、俺は後悔などしていない。
レオが生きてくれればそれでいいから。
セドリックは目の前にいるハンターを睨んだ。
「お前にレオの成長を見せてやるよ。なあ、レオ、昔の借りを返してやろうぜ!!」
セドリックの声に反応するように、レオが真横からハンターに噛み付く。ぎりぎりで短剣で防いだハンターに、セドリックが声を上げた。
「第二体型、解・放!!」
すると青い稲妻がレオを包む。レオの牙や爪がさらに鋭く、筋肉で膨れ上がった体が、ハンターを圧倒する。
「く、くそ!!」
バキッと短剣を折り、レオは咆哮を上げた。ハンターはバックステップを踏んで、負けじと銃を撃ち鳴らす。銃口から飛び出た銃弾がレオの心臓を狙った。
しかしレオはその弾を見切って避ける。地面に銃弾がチュンッ、とぶつかり砕けるも、ハンターは狙いを定めて次々と狙い撃った。華麗に避けるレオにはその銃弾はかすりもしない。
「レオ、紺青の稲妻!!」
レオの体を帯電していた電流が、一気に膨れ上がる。バチバチッと轟音を響かせたかと思えば、ハンターに稲妻が直撃する。
「うわあああああ!!」
眩い光が炸裂する。その攻撃は空間でさえも痺れさせ、狙い撃ちされたハンターは丸焦げになって地面に倒れ込んだ。
「う……くそ……!!」
セドリックはハンターの近くへ歩み寄る。
ピクピクしているため、死んではいない。これぐらい痛めつけないと、俺とレオの怒りは収まらない。別に復讐したかったわけじゃない。ただ、知って欲しかっただけだ。
セドリックは冷たい眼差しで見下ろした。
「分かったか。……これが、痛みだ」
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