魔法騎士団をクビにされたので犯罪者集団に所属して無双しまぁす

ななこ

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一章

19、闇市へ

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 アジトに潜入して二日後。午前十一時二十五分。

「……セドリック、本気か?」
「ああ。レオを出品する」

 レオは子犬みたいになっているため、セドリックに抱きかかえられている。ちまっとしているレオは物凄く可愛い。毛が見るからにふわふわで、わしゃわしゃしたくなる。

 にしても一体どうなったらこんなサイズ感になるんだ?

 インカテンカへやってきた三人。

 怪しまれないようにハンターの変装をした三人は、闇市に行ってレオを出品する。そして闇市の開催される前、もしくは開催中に盗まれたものを探し出し、回収するという流れだ。

 まあ、たとえ出品されたとしても、レオはただの子犬ではないので、セドリックの言うとおり大丈夫だろう。

 三人は闇市へのゲートへ辿り着く。

 商店街の裏通りにあるマンホール。それが、エルメスに教えられた闇市へのゲートだ。そこは人通りが少なく薄暗い。

 確かにここから人が出入りしていても、誰にも気づかれないだろう。
 
「それじゃ、行くぞ?」

 三人はマンホールへ通行証をかざす。するとマンホールが光りだし、三人を光が呑み込んだ次の瞬間、別のところに三人とも立っていた。
 
「ここが……」
「闇市会場」

 昼間なのに薄暗い室内は、目を凝らさなければよく見えない。

「ようこそ、闇市会場へ」

 真っ黒い顔の案内人がお辞儀をする。それには目がなく、まるで動く人形のようだ。

「ここへ出品者の名前と出品物の名称を」

 中に浮いている名簿に、セドリックが名前を書き連ねてゆく。

「出品物の審査を致しますので、どうぞこちらへ」

 ジンとフィオナがその後ろをついていこうとしたら。

「……そちらの二名様は?」
「ああ、俺の連れだ。こいつが暴れだしたら俺一人じゃ捕らえられないからな」

 そう言ってセドリックがフェンリルをチラ見せする。ナイスカバー、セドリック。

「ああ、なるほど……。では、お連れ様も一緒に、こちらへどうぞ」

 納得した案内人は、三人を誘導した。

 辿り着いた審査台には眼鏡をかけた女性が一人だけ立っていた。

「その出品者が最後ね?……もう始まるっていうのに。早くしてよね」

 女性は文句を言うが、フェンリルを見るや否や目の色を変えた。

「これはいいフェンリルね。色艶がすごくいい。子どもにしては筋肉量が多い気もするけれど……」

 口を開けさせ、目をライトで照らして何かを見ている。その後で頷いた女性が興奮気味に頷いた。

「いいわ、すごくいい。今審査証明書を書くから、待ってて。あと、出品物の保管庫はこの奥だから、呼ばれるまでその子は待機ね。もちろん丁寧に扱って頂戴ね」

 すると案内人が「この番号札をつけていてください」とフェンリルに首輪のようなものを付けた。

「出品者様とお連れ様は闇市がご覧になれる会場へお連れしますので、どうぞこちらへ。まもなく闇市が開催されますので」

 三人は案内人の後ろをついて行く。そして、頷き合った。

「出品物は今回の下級品からオークションにかけられますので、あなた様たちのはおそらく最後の方では――ぐふっ」

 ジンが頭部へ蹴りを一発打ちこんだ。案内人はどさりと倒れて、さらさらと砂のようになって消えてゆく。どうやらレガーロで見た人形と同じつくりなのかもしれない。だとしたらお頭と呼ばれていた人間がここにいるのかもしれない。

「保管庫へ急ぎましょ」
「すまん、俺はハンターのお頭を探してくる。一発殴らないと気がすまない」

「わかった。俺とフィオナは保管庫へ行くが、ジン、気をつけろよ」
「ああ、虹蛇とゴールデンパンティは頼んだぜ!」

 三人は頷き合って、目的を達成するためにそれぞれ駆け出した。


 ♦♦♦


 特等席から闇市会場を見下ろす。この会場で今何がオークションにかけられているのかがはっきりと分かる場所だ。

「何? 極上の毛並みを持ったフェンリルの出品者が現れた、だと? なるほどな。……わかった」

 審査官の一人が報告に来て、そして急いで会場へ戻った。 

「ピュリオ公爵。……今回は豊作のようですね」
「ええ、そのようで。しかしながらあなたが出品した虹蛇とは比べものにならないでしょうけれど」

「あの蛇は苦労して手に入れたものですよ。それで? 手数料の話ですが、いくらになったんですか?」
「ええ。やはり前回もお話をしましたが、売価の四割ですね。それをこちら側が手数料としていただくということになります。それ以上は下げられないと。運営費用のこともありますから」

 とピュリオ公爵はいやらしい笑みを浮かべる。

「……分かりました。いいでしょう」

 するとマクベスが背後からピュリオ公爵を刃物で刺した。

「な、何を……!? ごふっ」
「残念だか、僕はあなた方闇市に手数料は払わない。なぜならば」

 どさり、とピュリオ公爵が床に倒れ伏す。

「出品物へ支払われた金額は全て、僕が手にするからだよ……!!」

 バチッと手の刻印が一つ消える。それを見たマクベスの表情が消える。

「邪魔者が侵入してきたか。この闇市の邪魔はさせない。……おい!!」

「「はい」」

 すっと影から雇われ兵が現れる。

「邪魔者を排除しろ」
「分かりました」

 その男達はお辞儀をして部屋から出て行った。
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