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一章
21、SHOW TIME
しおりを挟む「何者かが侵入しております。危険ですので、皆様、速やかに避難してください。繰り返します――」
アナウンスが流れる中、レオの青い稲妻が空間中に迸る。
「断首の剣!!」
出刃包丁のような刃がレオの首の上に現れて、それは断罪の如くレオの首を狙う。レオは後退して間一髪で避けるも、それはいくつも現れてレオの首を狙い続ける。
警備員がさらに二、三人増えた。
「加勢します!! 刃の乱咲き!!」
「捕縛の千手!!」
無数の刃がレオを襲う。避けようとすれば、床からぬっと出てきた無数の手に捕まって、身動きが取れなくなってしまった。
「レオ!! 紺青の稲妻!!」
稲妻が炸裂した。轟音とともに空気が震える。
レオを裂こうとしていた刃は稲妻で弾き飛ばされ、手は黒焦げになって消えてゆく。しかし、警備員の目の前には出刃包丁がタイミングよく落ちてきて、彼らは間一髪で稲妻から守られた。
「くそ……」
獣たちは順調に外に出ているが、フィオナは倒れているしゴールデンパンティは探せてねえ。
どうする。このまま警備員の人数が増えればこちらは明らかに不利になる。
「断首の剣!!」
もう一度レオに出刃包丁のようなナイフが飛んでくる。それは首を狙っているのではなく、今度は体全体だ。上下左右、全方向からレオを狙い打つ。
「くそ……!」
どうすれば。
すると、刃を一目見て閃いた。
「レオ!! 電光石火だ!!」
燐光し始めたレオは瞬く間にギロチンの刃をすれすれで通り抜けて、体を回転させながら手前から飛んできていた刃の上に乗る。それから思いっきり蹴って上下左右から飛んでくる刃へと飛び移り、次々と蹴り弾いた。
刃がドスドスッと床や壁ににめり込み、レオは地面に華麗に着地。
「伏せろ!! レオ!!」
後ろから飛んできたギロチンの刃が、伏せたレオの頭すれすれを物凄い速さで滑空してゆく。
「うわあああああ!?」
ドスッ。
警備員たちは避ける間もなく、自身のギロチンの刃の餌食となった。セドリックは彼らが動かなくなった事を確認して、安堵のため息を漏らす。
「なんとかなったな……レオ、よくやった」
レオの頭を撫でてやれば喜びのあまりセドリックに飛びついてくる。
「どわ!?」
レオは尻尾を振りながら顔を舐めてくる。セドリックの顔面はレオのよだれでぐしゃぐしゃだ。
「おい、くすぐったいだろ……って、今はじゃれてる場合じゃねえって!!」
セドリックはレオをひとまず退けて、残っている獣たちをすべてゲートへと送り出す。もうゲートを通りそびれている獣はいないようだ。
「よし、これで獣は回収完了。あとはハカセのパンティだけだな……おい、フィオナ起きろ!!」
フィオナの頬を軽く叩いても反応がないので、セドリックは起こす事を早々に諦めた。
「仕方ねえ。レオ、背中に乗せて運んでやれ。先にゲートをくぐっていてくれ。俺はパンティを探す」
「ワフッ」と返事をしたレオの背中にフィオナを乗せる。
「頼んだぞ」
「ワフッ」
レオがゲートを通っていったのを確認して、セドリックは保管庫の入り口から再び警備員が入って来ないか確認しながら、物品を漁り始めた。
♦♦♦
ジンは通路を駆けてゆく。
前から剣を持って襲い掛かってくる黒い顔の人間(恐らく人形だろう)を猛烈な速さで斬り捨てて、先へ進む。
「貴賓席ってどこだよ……」
貴賓室。
そこはテラスになっているようなガラス張りの部屋で、今回の主催者、そして高額物品を出品した人が入れる部屋になっているのだ。
闇市がもっとも良く見える部屋があるとエルメスから聞いておいて良かった。おそらくお頭がそこにいるはずだ。
「おっと、邪魔者ってお前のことかよ」
いきなり男が目の前に現れて、剣を振り下ろされる。ジンは剣を弾き、バックステップを踏んで距離を取った。目の前に立ちふさがった男の顔は見たことのある顔だった。
いや、忘れたくても忘れられない、この男たち。
「お前ら……」
「よう、死神」
俺を蔑み、死神扱いしていた、元隊のチームメンバーのヘンリーとイアンだ。
「どうしてこんなところにいるんだよ」
「雇われ兵だよ。見て分からねえのかよ?」
「魔法騎士の仕事の合間に闇市の警備してんだよ。このバイトは給料がいいんでな!」
「……魔法騎士団は無許可で他の仕事を請けたらいけないだろうが」
「うるせえな。バレなきゃいいんだよ」
「本当にな。弱いくせによ、口は達者なんだからよ」
あははは、と笑うヘンリーとイアン。ジンはぐっと拳を握った。
「じゃあ、ちゃっちゃと終わらそうぜ。なあ、死神さんよ」
「この前の借りは返してもらうぜ!!」
真正面から斬りかかってきたヘンリーとイアンに、ニッとジンは笑った。
「いいぜ、かかって来い。お前らなんか、返り討ちにしてやる!!」
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